映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

きつねと私の12か月

2009年01月24日 | 映画(か行)
好きなことと、自分のものにすることは違う

           * * * * * * * *

フランスの山深い村。
1人の少女ときつねの交流の物語です。
少女リラは学校の帰り道、山で一匹のきつねを見かけます。
その美しい姿にすっかり魅了され、
何とかこのきつねと仲良くなりたい、その一心で山に通うのです。
しかし、そう簡単なことではありません。
何日も姿さえ見つけられないことが続いたり・・・。

この映画は、人間はほとんどこの少女1人しか登場しません。
一人で山を歩く。
描写される美しく豊かな自然、動物たち・・・。
すっかり魅了されてしまいます。
また、虫の羽音、木々が風にそよぐ音、
小鳥のさえずり、キツツキが幹をたたく音・・・。
耳を澄ませば、様々な音にあふれている。
こんな中に少女1人だけを配置することで、
この広大な自然をいっそう際立たせているように思います。
そしてまた、自然の中は様々な危険に満ちていて、
きつねであっても、ヤマネコやオオカミなど、
天敵から身を守らなければならない。
そして、人間も、きつねにとっては最も恐るべき敵なのです。
単に美しさだけではなく、こうした厳しさも、きちんと描写していきます。

さて、少女の強い思いと努力が実って、
いつしか、きつねとリラの距離が狭まって行きます。
初めの出会いは秋だったのが、もう次の年の夏・・・。
リラはきつねにテトゥと名づけました。
ある日の、この一人と一匹の冒険は見ものです。
テトゥはリラがついてくるのを確かめながら、まるで山の中を案内するよう。
いつしか、子どもは立ち入り禁止とされているところにまで入り込んで・・・。
しかしそこにあるのは、見たこともない美しい滝。鍾乳洞・・・。
こんな無鉄砲な娘がいたら、さぞかしご両親は心痛が絶えないでしょうね・・・。そんなことまで想像されて、クスリと笑ってしまう。
さて、こんなふうに仲良しになれたのですが、
ある秋の日、リラは過ちを犯してしまうのです。

野生の動物には、それなりの生き方があって、
どんなに好きでも自分のものにすることはできない。
こうしたことを少女は自分で学ぶのです。

この物語は、モンブランを望む山岳地帯で育った監督の実体験をベースにしているそうです。
撮影はフランス南東部アン県ルトール高原と、
イタリアのアブルッツォ地方で行われたとのこと。
それにしても、一体どうやってあんな映像を撮ったものやらと、
その根気と努力を尊敬してしまいますね。

余談ではありますが、我が家付近の山すその公園でも、
以前はよくキツネを見ました。
(それほど田舎ではないのですが・・・。)
ちょこんと座ってじっとこっちを見ていたりして、
実際人通りも多いので、すっかりヒトなれしていたようです。
時にはうちのそばのゴミ捨て場まで遠征してきていました。
でもそういえば最近はあまり見ていないですね。
このあたりを縄張りとしていたきつねがいなくなってしまったのでしょう。
・・・また、会いたいものです。

2007年/フランス/96分
監督:リュック・ジャケ
出演:ベルティーユ・ノエル・=ブリュノー、イザベル・カレ、トマ・ラリベルテ


映画「きつねと私の12か月」予告