押入れのちよ (新潮文庫) 荻原 浩 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
次から次へと読みたくなって、一気読みしてしまう短編集です。
表題の「押入れのちよ」。
これは、以前に読んだ「愛しの座敷わらし」の原型となったものと見てよさそうです。
失業中のサラリーマン恵太が引っ越してきた格安物件のアパート。
なんと、そこには夜な夜な、自称明治39年生まれの14歳の女の子、ちよが出現。
一見怪談ではあるのですが、
この子が、ビーフジャーキーをほおばり、カルピスウォーターを飲む。
初めは怖くて布団の中で震えていた恵一が、だんだん親しみを抱いてくるのですね。
ちよは、テレビも大好きで、クイズ番組を見て「ハイナルアンサー」などという言葉を覚えたりする。
いつしか、恵一の話し相手。
そんな彼女がある日、テレビに映し出された東南アジアの風景を見て、
ここに行ったことがあるという。
そんなことから導き出されたのは、
ちよの魂が、いつまでもこんなところにさまよっている原因となる、
悲しい過去の現実なのでした・・・。
ちょっぴり怖くて、おかしくて、悲しい物語。
同じ着想を膨らませたのが、「愛しの座敷わらし」なんですね。
それから、「コール」という作品も、幽霊関係なんですが、
まるでカジシンのストーリーように、切なくも愛しい一編。
しかし、こういうほのぼの路線かと思いきや、
ブラックユーモアたっぷりのものもあります。
離婚寸前の夫婦が繰り広げる死闘(?)「殺意のレシピ」。
介護を装い、執拗な虐待を繰り返す嫁に迫る不気味な影「介護の鬼」。
その他いろいろな趣向満載で、お得な一冊だと思います。
満足度★★★★☆