700年、ずっと誰かと手をつなぎたかった
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いやあ、新年第一弾として見るには、まことにふさわしい作品でした。
今回は、日本語版で見たんですね。
そう。だって、札幌では字幕版をやっているのは一館だけ。
しかも、夕方からしかない。
主婦は、晩御飯つくりに帰らなきゃないのよっ!ちょくちょく飲み会とかで、夜も留守にするのに、何でそこでこだわるんだか・・・。
でも、この映画は特別問題なかったでしょ。そうなんだよね~。
ほとんどウォーリーとイヴは、声を発してもお互いの名前を呼び合うくらいなので、
英語でも日本語でも、あんまり差し支えなかったです。
けど、おや?とおもったのは、アニメ自体、日本向け版を上映していたみたいですね・・・看板とかの文字が日本語だったもんね・・・。
まあ、その部分だけ、各国語のものを作るくらい、考えてみたら簡単・・・。
・・・でも、逆にそこだけ違和感があったりして・・・。サービス満点ではあるけどね。
さてさて、中身に入りましょう。
まず、ゴミだらけの地球で、せっせとゴミを固めて運ぶたった1人(この際、1人と言ってしまいましょう)のロボット、ウォーリーの情景が延々と描写されます。
ゴミだらけの地球を人間たちが見捨てて宇宙へ行ってしまって、
その後始末をロボットが託されたんだね。
なんとそれから700年。こんな広いところをたった1人でってひどいじゃない、と思ったら・・・。
元は同じロボットがたくさんいたんだね。
でもさすがに、年月のうちにダメになっていって今はウォーリー1人きり。
でも彼は、その壊れたロボットたちの部品を取っておいて、
時々自分の部品と交換している。ちゃんと彼の家もあって夜はそこでくつろぐんだよね。
そこに人間たちの温もりを感じるような様々なものがコレクションしてある。「ハロー・ドーリー!」のVHSビデオがお気に入り。
なぜか、このあたりのグッズが、現在の私たちから見ても、ちょっと懐かしいものなんだよね。ルービック・キューブパズルとか、ごく初期のTVゲームとかね。
彼がソーラーパネルを広げて充電すると、「ジャーン♪」とパソコンの起動する電子音。イヤー、いちいち揚げていたらキリがないんだけれど、
ほんとに、このウォーリーの生活見てるだけで楽しくて退屈しない。
もっと、長く見ていたかったくらい。ある日そこへ真っ白で滑らかな肌のロボット、イヴがやってきた。
彼女は、はるか彼方の人類のいる宇宙船から、ある指令を受けて偵察に来ていたんだね。その彼女にウォーリーは一目ぼれ。
なんというかねえ、700年も経つとロボットも感情をもつようになるんだねえ。
ほら、古い人形とか、樹齢数百年の古木とか・・・。心が宿るというじゃないの。
ロボットにそういうことが起っても不思議じゃナイと思う。・・・そういう話だったんですかね?
まあ、とにかく、キレイだけれど凶暴な女。勤勉で心優しい男。
・・・これも現代の縮図ですなあ・・・。
さてさて、驚きはそこから、一気に人類のいる巨大宇宙船へ行ってから。
なんと、すべてパソコンやロボットたちにおまかせし続けてきた人類は、700年のうちに変わり果てた姿になっている。
人間が機械を使っているのではなく、機械に人間が操られているような状況になってしまっているんですね。
なんとも、痛切な文明批判。
とにかくこの作品は、子どもだけをターゲットにしているのではなくて、完全に大人をもターゲットにしているわけです。
だから、大人が見ても、全然遜色ない。そして、ウォーリーとイヴのほのかなラヴ・ストーリーもなかなかなんですよね~。
実際、ほとんどセリフなしなのに、あの動きとかわずかな表情だけでどうしてあんな詩情豊かな表現ができるのか・・・。偉大としか言いようがない。ロボットなのに、下手な人間より表情豊かだもんねえ。
ウォーリーは、ずっと、イヴの手を意識していて、手をつなぎたいと思っているでしょ。そうなんです。700年間、ミュージカルのビデオをみながら、ずっとあんなふうに、誰かと手をつないで見たいと思っていたんですよ。・・・泣けますね。
思うに、あの宇宙船はノアの方舟なんだよね。人類が一時非難するための。
で、ノアは陸があるかあるかどうか調べるために、鳩を放したのではなかったっけ?
鳩が何かの芽をくわえて帰ってきて、
それで陸があって、植物が芽生えていることが解るんだよね。多分そのことが下敷きなんだと思う。
イヴが鳩の役割ということか・・・。あ、その芽って、オリーブじゃなかったっけ?うーん、でもここではマメかなんかの芽じゃないかなあって、気がする。
冷蔵庫のところにあったんだから、きっと何か食用のものだよ・・・。
・・・ところで、あの宇宙船の人間たち見て思うのですが・・・。
はい、はい。
あれって、私たちの目指す、一つのユートピアではあるよね。
みな豊かで、平等という意味では・・・。う~ん、そうかもしれないね。でも、結局そういう生活は無気力や怠惰を生み出すだけということなのか・・・。
確かに、格差はなかったなあ・・・。
あ、ちょっと待って!!
あそこにいたのは全部白人だよ!そ・・・そうなんですか?
違う、違う、ちゃんと黒人もいたそうです!
(注)この部分、初めの記事に過ちがありましたので、修正しています。
あ、そうなんだ・・・。ごめん。でもね、それは別としても、やっぱり、700年前に選民は、あったのではないでしょうか。裕福な連中だけが宇宙船に乗り込んで、地球を脱出したけれども、残された貧乏な人たちは、地球の環境破壊に巻き込まれて、絶滅した。・・・実はそういう隠された壮絶なストーリーがあるんだよ。
深読み、しすぎだってば。
でも、ひそかに生き延びたのが一部のゾンビ化した人間たちで、実は、日が落ちて夜になると、地下から、うじゃうじゃとわきでてくる・・・。
それは、アイ・アム・レジェンド!
全くもう、話が逸れすぎだよ。・・・すんません。でもまあ、こんないろいろな空想をしてみるのも、楽しいじゃありませんか。
無気力化した人間たちの中にも、まだ多少のチャレンジ精神は残っていた、ということで、めでたしと、しておきましょうよ。
はい、ではそういうことで・・・。
本当にこれは、ぜひ見ておくべきアニメの一つです。特マルでお勧め!。
2008/アメリカ/103分 ピクサーアニメ
監督:アンドリュー・スタントン