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ジェネラル・ルージュの凱旋(上) [宝島社文庫] (宝島社文庫) 海堂尊 宝島社 このアイテムの詳細を見る |
思いのほか、トントンと文庫化されるこのシリーズ、うれしいです。
これがもう、映画化となり、この3月に公開とのことですので、
それとタイミングを合わせたわけですね。
この本はあまりにも面白くて一晩一冊2日で読んでしまいまして、
おかげで寝不足でした。
この本は前作「ナイチンゲールの沈黙」の続きではなく、
なんと同時進行で起きた出来事なんです。
当然登場人物は同じで、同じセリフも出てくる。
もちろん前作を読んでいなくても十分面白いと思いますが、
前作を読んでいればさらに楽しめる。
例えば男性と女性のそれぞれの視点から同じ物語を語る、というストーリーは以前にもありますが、
こんな風に、テーマの視点を変えて語られるストーリーというのは珍しい。
おまけに番外編「螺鈿迷宮」の伏線までがここにある。
・・・イやあ、恐れ入ります!
また、こんな出来事を同時処理していた医師たちの忙しさ、
病院のめまぐるしさも伺われます。
さて、ここでメインとなっているのは救命救急センター速水部長。
その判断力、統率力、そして医療技術は誰から見ても確かなもので、
常に鮮血にまみれ、率先して救急救命に当たるその姿から、
血まみれ将軍、即ちジェネラル・ルージュと呼ばれる。
(しかし、「ルージュ」の真の意味はまたあとで明かされます)
ところが、その速水が業者と癒着しているという内部告発が。
それをめぐり院内の沼田教授率いるエシックスと、
リスクマネジメント委員会の田口の丁々発止・・・ではなく、
ねちねちと泥沼化したやり取りが続くのであります。
しかし、このあたりのいやったらしいやり取りがまた、なぜか面白い。
さて、一体速水部長の去就はどうなるのやら・・・、
などと思っているうちに、近所で未曾有の大事故が発生し、
大量の負傷者が運び込まれてくる。
さあ、どうなる!!
さて、読み終えてからふと思う。
あれ、このシリーズって、ミステリではなかったっけ?
これのどこがミステリなんだ・・・?
とりあえず殺人事件はなかった。
で、ああ!と思ったのはつまり、
この速水部長の告発文を書いたのは誰なのか、という謎ですね。
これがちょっとだけ内容の違うものが二通、別々のところに届けられていたのです。その意図は?
そもそも、こんなに信頼の厚い速見部長を一体誰が・・・?
と、ここが謎といえばいえる部分なんですね。
・・・でも、これは前作の、無理にとって付けたようなバラバラ殺人よりずっといいです。
・・・というか、前作で私が感じたとおり、
この海堂氏はミステリよりむしろ医療サスペンスというかエンタテイメント方向へ行ったほうがいい。
まことに、正しい方向性に進んでいるように思いました。
それから、今回白鳥氏がかなり控えめでしたね。
・・・これも成功の秘訣。
彼の立場と現実離れした優秀性は、物語の興味の方向を曲げてしまうんです。
彼はまあ、奥の手くらいにしておいて、あまりでしゃばらない方がいい。
それにしても、速水部長はかっこよかった!
快刀乱麻、群がる敵をばったばったと切り倒し・・・、
じゃなかった、医者なので、群がる患者を片端から処置。
そして、スタッフに指示。
その腕を振るう様はまさに神がかり。
目の前にこんな人がいればそりゃ惚れますよ・・・。
ぜひまた、今後も登場して欲しいのですが・・・。
どうなんでしょう・・・。
満足度★★★★★