黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス―建築探偵桜井京介の事件簿 (シI-20)) 篠田 真由美 講談社 このアイテムの詳細を見る |
待ちに待った桜井京介シリーズの最新刊。
一巻めから引っ張ること15年、ようやく語られる京介の過去。
・・・読むのにも気合が入りました!
しかし、なんとこれはその全貌の前半にしか過ぎないと・・・。
すべてを知るためには次の一巻を待たねばなりません。
・・・いえいえ、待ちますとも。ここまで待ったのですから!!
渋る神代教授を説き伏せて、ついに口を割らせた蒼と深春。
時は京介10歳の時点までさかのぼります。
神代宗35歳。
怪しい実業家門野氏にだまされ(?)はるばる北の地の寂れた村までやってきた。
しかし、そこは日本で言う「村」のイメージとは全く異なっていて、
メインストリートに洋館が立ち並ぶ、まるでヨーロッパの町のよう。
(ただしものすごく小規模なんですが)
その家並みを見下ろすように、さらに高台になんとも壮大なお屋敷。
そこの当主の長男が久遠叡(アレクセイ)、後の桜井京介であります。
透き通った白い肌、眉目秀麗、絶世の美少年・・・。
しかし、性格は想像がつくとおり、お世辞にもかわいいとはいえません。
とても10歳とは思えない冷めた目で人を見る。
取り付く島がないとはこのこと。
でも、そこは気取らない神代さん、
あっという間に、彼の心の真ん中に飛び込んでいく。
物語はこのアレクセイの母親の死の真相、
そしてこの久遠家にまつわる謎を追っていきます。
問題なのはこのアレクセイとは腹違いの妹モイラと、当主グレゴリなのですが、
当主はついに最後まで実際に姿を現しません。
それはまた別の話・・・ということで。
それにしても、神代さん、
殺人犯にされるは、殴られるは、撃たれるは、首を閉められるは・・・、
良くぞご無事でいられたものです。
すごいハードボイルドです。
この本は「神代宗の冒険」という題名でも良かったのではと思えるくらい。
しかし、「どーにでもなりゃーがれ!」と開き直る。
さすが江戸っ子、こういうところは大好きですね。
ロシア貴族の血を引くというこの一族、この屋敷、
とても日本の物語とは思えないのですが、
真っ暗な地下通路をたどる終盤のシーンなどは
本当にドキドキさせられて、ロマン、ミステリ、サスペンスたっぷり。
うれしい一冊でした。
ただし、この本はこれまでの桜井京介シリーズを読んでいなければ、
良く解らないと思います。
まずは、桜井京介の魅力を知ってから読むのがおすすめ。
男性には無理にはお勧めしません・・・。
満足度★★★★★