映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「黒影(かげ)の館」 篠田真由美

2009年01月15日 | 本(ミステリ)
黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス―建築探偵桜井京介の事件簿 (シI-20))
篠田 真由美
講談社

このアイテムの詳細を見る

待ちに待った桜井京介シリーズの最新刊。
一巻めから引っ張ること15年、ようやく語られる京介の過去。
・・・読むのにも気合が入りました!
しかし、なんとこれはその全貌の前半にしか過ぎないと・・・。
すべてを知るためには次の一巻を待たねばなりません。
・・・いえいえ、待ちますとも。ここまで待ったのですから!!


渋る神代教授を説き伏せて、ついに口を割らせた蒼と深春。
時は京介10歳の時点までさかのぼります。

神代宗35歳。
怪しい実業家門野氏にだまされ(?)はるばる北の地の寂れた村までやってきた。
しかし、そこは日本で言う「村」のイメージとは全く異なっていて、
メインストリートに洋館が立ち並ぶ、まるでヨーロッパの町のよう。
(ただしものすごく小規模なんですが)
その家並みを見下ろすように、さらに高台になんとも壮大なお屋敷。
そこの当主の長男が久遠叡(アレクセイ)、後の桜井京介であります。
透き通った白い肌、眉目秀麗、絶世の美少年・・・。
しかし、性格は想像がつくとおり、お世辞にもかわいいとはいえません。
とても10歳とは思えない冷めた目で人を見る。
取り付く島がないとはこのこと。
でも、そこは気取らない神代さん、
あっという間に、彼の心の真ん中に飛び込んでいく。

物語はこのアレクセイの母親の死の真相、
そしてこの久遠家にまつわる謎を追っていきます。
問題なのはこのアレクセイとは腹違いの妹モイラと、当主グレゴリなのですが、
当主はついに最後まで実際に姿を現しません。
それはまた別の話・・・ということで。

それにしても、神代さん、
殺人犯にされるは、殴られるは、撃たれるは、首を閉められるは・・・、
良くぞご無事でいられたものです。
すごいハードボイルドです。
この本は「神代宗の冒険」という題名でも良かったのではと思えるくらい。
しかし、「どーにでもなりゃーがれ!」と開き直る。
さすが江戸っ子、こういうところは大好きですね。

ロシア貴族の血を引くというこの一族、この屋敷、
とても日本の物語とは思えないのですが、
真っ暗な地下通路をたどる終盤のシーンなどは
本当にドキドキさせられて、ロマン、ミステリ、サスペンスたっぷり。
うれしい一冊でした。
ただし、この本はこれまでの桜井京介シリーズを読んでいなければ、
良く解らないと思います。
まずは、桜井京介の魅力を知ってから読むのがおすすめ。

男性には無理にはお勧めしません・・・。

満足度★★★★★