映画と本の『たんぽぽ館』

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パパにさよならできるまで

2009年01月12日 | 映画(は行)
パパにさよならできるまで [DVD]

ジェネオン エンタテインメント

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月面着陸の日にパパはきっと帰って来る

               * * * * * * * *

ギリシャ作品です。
ちょうど、アポロ11号の月面着陸があった1969年が舞台。
10歳少年イリアスが主人公。
行商が仕事のパパは、普段留守勝ち。
でも、いつもチョコレートをお土産に持って帰っててくれるパパが大好き。
しかし、そのパパが交通事故で亡くなってしまう。
「今度、月面着陸の日には帰ってくるから、一緒にテレビを見よう」、
そう約束したパパでしたが、
突然のその死をイリアスは受け入れることができない。
深い哀しみに直面した子どもの内面世界を、瑞々しく描いています。

誰もがいつかは直面する「死」というものですが、
確かに10歳の少年にとってはまだ、早すぎる、受け入れがたいことですね。
イリアスを見守るお母さん、お兄ちゃん、叔父さん。
彼らもどうすればいいのかとほうにくれる。
ちょっとぼけていて、自分の息子も良くわからないおばあちゃんがいるのですが、
イリアスは、その息子即ち自分のパパに成りすまして、手紙を描きます。
海辺の町に引っ越しました。
皆元気です・・・。
そこには彼自身の願いがそのまま記されている。
切ないですね。

お父さんがいつも読んでくれたお気に入りの本が、ヴェルヌの「月世界旅行」。
それだから、アポロの月面着陸はイリアスとパパの夢でもあったのです。
パパと約束したんだから、絶対この日にパパは帰ってくる。
そう信じてその日を待つイリアス。
心の底では多分解っているのです。でも、それを認めるのが怖い。
それを認めたときに、少年は大人に一歩近づくのでしょう。

こういうドラマは大抵子どもは10歳前後に設定されています。
大人と子ども・・・意識の一番微妙な年頃なんですね。
私たちの中の、もう忘れている子どもの心をちょっぴり呼び起こす。
心に残る一編です。

2003年/ギリシャ/114分
監督:ペニー・パナヨトプル
出演:ヨルゴス・カラヤニス、イオアンナ・ツィリグーリ、ステリオス・マイナス、クリストス・ブヨタス