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「火村英生に捧げる犯罪」 有栖川有栖

2009年01月09日 | 本(ミステリ)
火村英生に捧げる犯罪
有栖川 有栖
文藝春秋

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火村准教授シリーズの短編集です。
本の帯に曰く、
「洒脱(エレガンス)。諧謔(ユーモア)。情熱(パッション)。驚き(サプライズ)。」
・・・と、まさに4拍子そろったバラエティ豊かな短編集で、大変楽しく読みました。
ショート・ショートも混じっていますが、これもまた楽しい。


表題作「火村英生に捧げる犯罪」では、
なぜか、警察と火村あての犯行予告状が届く。
一方、有栖の方には、ある作品は盗作であるとのいわれのない中傷の電話が・・・。
さらには、学校の校庭に机を並べて字を記すという謎の事件・・・。
これらは何か関連があるのか・・・?
答えは意外とあっけないのですが、物語はとても興味深く読めて
・・・というよりは「読まされて」しまいます。
しかし、この中で、うまいなあと思ったのは
伏線として、こんな話があったのですね。
有栖が、小説の中で、人物AとBが街中で偶然ばったりと会った
というシーンを書きたいのだけれど、どうしてもわざとらしくなってしまう。
いかにもご都合主義、そう簡単に偶然を持ってきていいのか・・・。
しかし自分も、
つい2・3日前に以前の職場の知人とばったり会って一杯やったのだから、
ありえないことではないだろう・・・。
などと悩むシーン。
まさに、答えが出た後に、ここを思い出して、そうか!と、はたと手を打つ。
こういうところが小説の面白みなんですよねー。

他に・・・
珍しく火村が語り手となっている一編。
大胆なトリックを惜しげもなく「作中作」として使った一編。
火村抜きで事件解決しようと有栖が奮闘する一編。
こういうのもいいです。

また、このシリーズに登場する刑事たちも、それぞれ個性的で、味がある。

★いつもアルマーニのスーツに身を包むハリキリ若手刑事、森下。

★禿頭、太鼓腹にサスペンダー。あだ名は海坊主。船曳警部。

★見るからに屈強そうな捜査一課きっての猛者、南波警部補。

★娘さんが受験生。柳井警部。

★部外者が捜査に加わるのを快く思っていない、野上巡査部長。
 有栖はこの人が苦手。

などなど・・・、また今度どこかで出会うのが楽しみになってしまう、面々です。

満足度★★★★★