映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マルタのやさしい刺繍

2009年01月13日 | 映画(ま行)

お茶目なおばあちゃんたちの奮闘

                  * * * * * * * *

舞台はスイスの小さな村。
撮影は穴あきチーズの里として有名なエメンタール地方で行われたとのことです。
私たちが、スイスと聞いて思い浮かべるイメージそのままの、
山間の牧草地の斜面が広がる小さな村に、一握りのかわいらしい家並み。
そいういう風景だけであこがれてしまいます。

さて、80歳マルタは9ヶ月前に夫を亡くして以来、無気力な日々を送っています。
あるとき、村の合唱団の旗の修理を頼まれたことから、
昔作っていたランジェリーの創作意欲がわいてくる。
華やかなレースに精密な刺繍。
・・・まさに女性のあこがれです。
「ランジェリーのお店を持つのが夢だったのよ・・・」、
そう語るマルタを親友のリジーが後押し。

しかし、田舎の村の人たちの意識と来たら、100年前と同じくらいに古くて頑固。
素敵にディスプレイされたその小さなお店を、
いやらしい、恥ずかしいとののしり、気でも狂ったかと笑いものにする。
年をとってから、夢を持つことが何で悪いのよ! 
反発を感じたマルタと友人3人の奮闘が始まります。
インターネットを習ってみたり、車の免許を取ったり・・・。

ここで、先頭に立ってこの店をつぶそうとしたのは、
なんと彼女らの息子たちなんですね。
村では中心的人物の。
なるほどと思うのは、男性にとって母親というのはいつまでも、
「母親」以外の何者でもないのではないでしょうか。
母親も、1人の独立した人格の持ち主ということを、
思ったこともないし、理解しようともしない。
だから、突然母親が自己を主張し始めた時に混乱するんです。

多分この村も過疎化で残されたのは老人ばかり・・・。
どこの国も、似たような事情ですね。
そんな時、年に係らず、前向きに何か夢を持って行動すること、
そうして、生きがいを持つこと、それが大事になるわけです。
そうでなければ、この高齢化の進んだ日本も悲惨な未来になってしまいます・・・。

「世界最速のインディアン」、「ヤング@ハート」、
そしてこの「マルタのやさしい刺繍」。
どれも、年をとる事も悪くない、と希望を与えてくれますね。
私もだんだんそういう年に近づいてきますが、なんだか勇気が出てきます。

お茶目なおばあちゃんたちの奮闘を、どなたにも楽しんでいただけると思います。

2006年/スイス/89分
監督:デティナ・オベルリ
出演:シュテファニー・グラーザー、アンネマリー・デューリンガー、ハイジ=アリア・グレスナー、モニカ・グプサー