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生きる意味って何だろう? 旭山動物園園長が語る命のメッセージ (角川文庫) 小菅 正夫 角川グループパブリッシング このアイテムの詳細を見る |
今人気の旭川市旭山動物園、園長さんの書かれた本です。
旭山動物園は私も何度か行っています。
一度だけでなく、何度も行ってみたくなる楽しい動物園。
コンセプトは動物の「行動展示」。
動物を狭い檻に閉じ込めてただその姿を見せるのではなく、
その動物の持っている特質のすばらしさを見てもらおう、ということで、
様々な工夫を凝らし、一躍入園者数日本一となったんですね。
泳ぐホッキョクグマやアザラシの姿をガラス越しに間近に見ることができる、
そんな風景を皆さんもTVや雑誌で見たことがあるのでは?
ただし、最近は人気がありすぎて、黒山の人だかり。
ちょっと、遠くなっちゃったな・・・と、地元としては少し寂しくも思えます。
・・・さてと、この本は、こんな風な動物園の紹介の本ではないのです。
長年付き合った動物たちの生きる姿から、
私たち「ヒト」も学ぶべきことがたくさんある、そのようなことを語っています。
園長さんは1948年札幌の生まれなんですね。
まだまだ自然やそこに住む動物たちと生活が交じり合っていた。
生き物たちの不思議なことやすばらしさは、
TVや本でなくすべて実体験で学ぶことができたわけです。
けれど今は、身の回りに自然の動物がいない。
虫は触れない、カエルは汚い・・・と、毛嫌い。
身近にいるのはせいぜい犬か猫。
こんなことがあるそうです。
ウサギを見せて子どもに絵を描かせる。
・・・まあ、それなりに描きます。
けれども、実際にウサギを抱っこさせて
そのフカフカさや、温もり、重み、心臓の鼓動、
そういうものを体験した後で描く絵は、
もっとリアルで活き活きと迫力のあるものになるそうですよ。
こんな風に、ただ見るだけでなく、生き物のすごさを体験してもらいたい、
そういうビジョンがしっかりしているからこそ、この動物園の成功なんですね。
私が書店でぱらぱらと見て、購入を決断したくだりのエピソードをご紹介しましょう。
以前、あるホッキョクグマが双子を出産。
ホッキョクグマは泳ぎ方を母が子へきちんと教えるのだそうです。
それで一匹の方はまもなく水に入って泳ぎを教わり、
楽しそうに母親とすいすい泳ぐようになった。
ところがもう一匹の方が水を怖がって全く入ろうとしない。
母グマと小グマが仲良く泳いでいるのを寂しそうに見ている。
また、母親の方も知らんぷり。
そこで園長さんは、もしかするとこれは何か遺伝的な欠陥かも知れない、
一度検査した方がいいかも・・・と思い始めたそうです。
ところが、そんなある日、二匹の子グマがじゃれあっているうちに、
一緒に水の中へ落ちてしまった!
しかし、間髪を入れず、母親が水に飛び込み子グマを支え、
そこで泳ぎを教え始めた。
そのあと、その子グマは平気で水に飛び込むようになったそうです。
子育てをしていると、つい育児書や他の子どもと引き比べて、
立つのが遅い、まだ歩かない、まだ言葉が出ない
・・・と、いちいちやきもきしてしまうんですね。
でも、その子にはその子なりの成長の時期があるのだから、何もあせることはない。悠然と構えていて、いざという時にフォローをすればいいだけ。
そういうことを教えてくれます。
この本には、動物たちのカラー写真もたくさん入っていて、素敵な一冊です。
満足度★★★★☆