定石+ほんのり、心憎い短篇集
* * * * * * * * *
著者と同姓同名、売れないホラー作家道尾秀介の登場する本作は、
「背の眼」から始まるシリーズの一つなのでした。
ですから本当はそちらから読むべきだったと思うのですが、
そちらを読んでいなくても、十分に楽しめましたよ。
ここに登場する"道尾秀介"は、
いわばシャーロック・ホームズにおけるワトソン、
御手洗シリーズにおける石岡くん、
火村准教授シリーズに於ける有栖川有栖、
そんな役割を果たします。
となれば当然出てくる名探偵役は、死んだ妻に会いたくて「霊現象探求所」を構えている真備(まきび)。
その助手を務めているのが凛という女性で、
道尾は、彼女にほのかな想いを寄せているのです。
定石プラスほんのり(あくまでも"ほんのり")。
こういう人物関係を見るだけで、もうなんだかワクワクしてしまいます。
さて本作は、彼らが登場する短篇集。
冒頭「流れ星のつくり方」は、
3人が温泉旅行に来ているというのどかな情景から。
凛が飲み物を買いに出ると、近所の家の窓から一人の少年が声をかけます。
少年が語る恐ろしい"友人"の体験談。
両親が殺されるという恐ろしい事件。
でも犯人がどうやって逃げたのかわからない。
凛はその話を電話で真備に伝え解答を得ます。
道尾秀介さんらしく、悲惨なその事件ですが、
少年の切ない思いにうまく縁取られて、やわらかな印象を残します。
ゾッとさせられるのは「モルグ街の奇術」
何やらレトロな探偵小説の趣があります。
ある夜、とある小さなバーで真備と道尾が飲んでいると、見知らぬ男が声をかけます。
その片腕の男は、自らを奇術師であるといい、
この腕は奇術の失敗によって失ったというのです。
この片腕喪失の謎を解いてみないか、
もし解けなければ二人の右腕を頂戴する、と。
道尾はこんな怪しげな話には乗りたくなかったのですが、
真備が気軽に応じてしまいます。
さて、この二人はみごとに謎が解けるのでしょうか・・・?
もちろんそんな悲惨な結末にはならないと予想はつくものの、
ちょっとドキドキしてしまいます。
そしてまた、その真相は、かなり怖いです・・・。
一風変わった謎解きでした。
その他に3篇。
人が抱えこんている大きな心の傷。
謎を解くことでそれらがほんの少し癒されていくようです。
どれも満足の行く読み応えでした。
「花と流れ星」道尾秀介 幻冬舎文庫
満足度 ★★★★☆
花と流れ星 (幻冬舎文庫) | |
道尾 秀介 | |
幻冬舎 |
* * * * * * * * *
著者と同姓同名、売れないホラー作家道尾秀介の登場する本作は、
「背の眼」から始まるシリーズの一つなのでした。
ですから本当はそちらから読むべきだったと思うのですが、
そちらを読んでいなくても、十分に楽しめましたよ。
ここに登場する"道尾秀介"は、
いわばシャーロック・ホームズにおけるワトソン、
御手洗シリーズにおける石岡くん、
火村准教授シリーズに於ける有栖川有栖、
そんな役割を果たします。
となれば当然出てくる名探偵役は、死んだ妻に会いたくて「霊現象探求所」を構えている真備(まきび)。
その助手を務めているのが凛という女性で、
道尾は、彼女にほのかな想いを寄せているのです。
定石プラスほんのり(あくまでも"ほんのり")。
こういう人物関係を見るだけで、もうなんだかワクワクしてしまいます。
さて本作は、彼らが登場する短篇集。
冒頭「流れ星のつくり方」は、
3人が温泉旅行に来ているというのどかな情景から。
凛が飲み物を買いに出ると、近所の家の窓から一人の少年が声をかけます。
少年が語る恐ろしい"友人"の体験談。
両親が殺されるという恐ろしい事件。
でも犯人がどうやって逃げたのかわからない。
凛はその話を電話で真備に伝え解答を得ます。
道尾秀介さんらしく、悲惨なその事件ですが、
少年の切ない思いにうまく縁取られて、やわらかな印象を残します。
ゾッとさせられるのは「モルグ街の奇術」
何やらレトロな探偵小説の趣があります。
ある夜、とある小さなバーで真備と道尾が飲んでいると、見知らぬ男が声をかけます。
その片腕の男は、自らを奇術師であるといい、
この腕は奇術の失敗によって失ったというのです。
この片腕喪失の謎を解いてみないか、
もし解けなければ二人の右腕を頂戴する、と。
道尾はこんな怪しげな話には乗りたくなかったのですが、
真備が気軽に応じてしまいます。
さて、この二人はみごとに謎が解けるのでしょうか・・・?
もちろんそんな悲惨な結末にはならないと予想はつくものの、
ちょっとドキドキしてしまいます。
そしてまた、その真相は、かなり怖いです・・・。
一風変わった謎解きでした。
その他に3篇。
人が抱えこんている大きな心の傷。
謎を解くことでそれらがほんの少し癒されていくようです。
どれも満足の行く読み応えでした。
「花と流れ星」道尾秀介 幻冬舎文庫
満足度 ★★★★☆