タイムは満足できないが、まっ、完走できたしなぁ、そこそこ満足感ありで、会場のお祭り騒ぎを楽しんだ。いつもなら、さっさと帰るところだが、今回はランニングチーム菜の花座?のNも一緒だったから、ちょっとあちこちぶらついて見た。
おおそうだ、70歳以上のハーフ完走者には特別のご褒美あるんだった。去年は赤いタオル、って還暦祝いじゃねえってぇの。今年はサクランボだって、こりゃもらって来なくっちゃ。広い会場を、固まる足を引きずりながら、本部へ。
名前とゼッケン番号を伝え、サクランボおくれ!って言ったら、もうすでに上げてます、って!ええーっ、えええーっ!もらてないけど!今、初めて来たんだけど。でも、ほら、チェック名簿に赤線が。ど、ど、どういうことよ???誰か別の人と間違えたんじゃないの?ゼッケン番号確認しましたから。受付担当の女子中学生二人、このジジイ2度ももらいに来たよ、ってあきらかに胡散臭げ、不快感満載の疑りの表情。名簿を見れば、たしかに俺の名前と番号は赤々と消されている。これでもかって、ってくらいにぶっとく。
ほら、きっと同じような名前の人と間違えたんだよ、って言っても、そんなの有り得っこねぇし、って彼女たちの表情はさらに険しさを増して行く。いや、まぁ、貰わなくたっていいんたげど、・・・なんか、これ以上、中学生をやり込めるって大人げないしなぁ、って諦めかけたが、二人の中に、図々しいいんちきジジイの印象残るのも癪だし、明らかに手落ちはあったわけなのに、こちらが引くってのも、いくら子ども相手でも筋違いだと思って。だって、ほら、完走証だってあるし、ここは初めて来たんだから。いえ、すでに上げてます。いや、初めてだから。ここチェックされてます。だから、その名前は私でも私じゃないから。押し問答続くこと3度、4度、5度。
寄って来て事情を聴いた総括担当の女性、差し上げてください。でもすでに、と中学生、頑張る。そうか、彼女たちは心底信じてるるんだな、2度もらいだって。まいったなぁ、薄汚い強欲ジジイにされちまったぜ。
結局、サクランボはもらえた。でも、チェック欄、赤線の横に赤丸が記載された。なんか、これもまた嫌な気分。この人要注意!ってチェックされたみたいで。もしかして、来年の70歳以上者名簿に申し送りの印ついてたりして、な、わけないか。
それにしても、不思議だ。サクランボ欲しさで、誰か、俺に成りすまして並んだか?あるかぁぁぁ?そんなこと。あったとしても、ゼッケン番号確認して渡すんだから、その可能性はほとんどゼロだよな。ってことは、受付ボランティアの二人のミスなんだろう。ずらーっと並ばれて、名前を聞き間違い、ゼッケン番号を見間違えたんだろう。ただ、彼女たちは一生懸命仕事してたから、自分たちの落ち度ってことに考えが向かわなかったってことなんだろう。そんな単純ミス、するわけないじゃん、うちら。中高生のこういう思い込み、よくあるんだよなぁ。メディアじゃ先生の思い込みばっか攻めてるけど。
町あげて、高校生や中学生も参加して大会盛り上げてくれるのは喜ばしいし、感謝だけど、金品にかかわる部門に当てるってのは考えないとね。責任発生しちまうから。どうしても手伝ってもらいたいなら、絶対に間違いないような仕組み、システムを作って任せることだ。例えば、ゼッケン番号は、聞くだけでなく、手元でメモをして相手に示し照合する、とか。
いずれにしても、彼女たちの心には傷が残ったろうな。自分たちがミスした屈辱で傷つくか、とんでもない強欲ジジイにいちゃもん付けられた腹立ちとか、どっちにしてもいい思い出は残らないだろう。彼女たちの不満げな眼差しに、ことらもちょっぴり傷ついたしなぁ。なんか、言い張ったこちらが、とっても悪いことしちまったような、複雑な気持ちだぜ。
中学生二人に、なぁに、間違いなんて誰だってあんだから、って優しく教え諭してあげてくれてればいいけどなぁ、担当のお姉さん。
でも、もしかして、俺の荷りすましは幻術使いで、中学生女子二人を巧みに目くらましして、サクランボを詐取して行きおったか?
苦い思いをまとったサクランボはNに押し付けた。あっ、でもそれ見た中学生、やっぱ、あのジジイ、連れの人にも上げたくて2度もらいしたんだよ、なんて勘ぐったりしちゃいないか。相互不信ってやつは、生まれれば勝手に独り歩きするもんだからなぁ。