ステージおきたま

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なんてったって、装置!『異聞・巷説「安寿と厨子王」』報告その三

2019-06-19 09:20:07 | 菜の花座

 今回寄せられたアンケートで断トツ高評価だったのは、装置。そりゃそうだよ、あれだけ大掛かりでそれらしい舞台組みってそうは見られないもの。まっ、アマチュアの域、完全に越えてたと思うぜ。なんたって驚きは、中央の門上に舞台を設えたことだ。それも、1間そこらのありきたりの門じゃない。間口2間近い立派なものだ。普通、これだけの幅に梁を渡してその上に人が乗るとすりゃあ、真ん中に強度保持の柱を立てなきゃならんところだ。が、それもない。だいたい、門の上で演技するなんて思い浮かぶか?石川五右衛門じゃあるまいし。でも、その非常識をやった。それも、前には紗幕を下ろし、照明を工夫して、奥の門上に立つ役者が中空に浮いて見えるような演出をしたかったからだ。オープニングの説経節語りもラストの三郎の自決も、驚きの効果を発揮した。成功!よしよし。

 柱のない広い間口にこだわる理由。それは、なんと!門から舞舞台を出したかったからなんだ。あり得んよなぁ!どこに門の後ろに舞台が待機してる家があるって言うんだよ。しかも、その舞台に白拍子が乗って出て来る。これ、もうほとんどシュールだぜ。その移動型舞台の作りが凝っている。パンチを白布で覆った舞台面、横は飾り布が引き回してある。豪華なものだ。でも、この飾り、畳の縁材さ。そう、団員に畳屋さんの女房がいるんでね。特別無料提供。

 上手の座敷は、上手側のみ襖で仕切り、下手側の2本の柱も、観客の視線を邪魔せぬように途中でぶった切ってある。もちろん、屋根なんかない。ただし、周囲は縁側が巡っている。畳み敷なら面倒ないのだが、これも中世の家屋に倣い、板敷き、薄いベニヤ板に板目を書き込んで敷き詰めた。しかも、縁側と座敷は別の色合い、なっ、手が込んでるだろ。さらに、御簾とかで変化も付けてある。

 下手には岩組が3段、これがまた、見事なできなんだ。緩衝材として売られてる波ボール紙で形作って、彩色したものだ。この色付け、もう、本物としか思えない。役者の演技が見えるよう足元で低く連なるものと、隠れたりできるように背の高いものと、組み合わせのバランスもとてもよかった。高い段に上る階段を隠すこともできたし、スモークマシーンも陰に仕込むことができた。終演後、高校生がわざわざ見学に来たほどだったもの。

 上手に座敷、中央奥に門、その前は庭だったり前舞台に早変わりしたり、そして、下手の岩組。この3つのエリアを行きつ戻りつしながら、芝居は進行する仕掛けだ。だからなおのこと、三つの建て組みは見栄えのするものでなくちゃならんのさ。でないと、すべてが嘘っぽく、ちゃちになってしまう。こういう外連味たっぷり舞台は、「なんか、安っぽい!」って思われたら、お終いだからね。だから、この見事な装置の果たした役割は実に大きかったってことなんだぜ。お客さんもよく見てくれた。ありがとう。

コメント
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