局の道楽日記

食道楽、着道楽、読書道楽  etc
生活色々を楽しんで暮らしている日々の記録です

たまには映画の感想を書いてみる

2021-09-17 20:42:35 | 見る(映画 劇場 美術館など)
最初はモノトーンかと見まがう静かな始まりだった。
NHKのBSを録画したのを次の日に鑑賞



デンマークの寒村
敬虔な牧師と二人の美しい娘
牧師は自分のために二人の娘を周りの青年たちの求愛から遠ざける
姉にプロポーズして断られた士官
妹の歌の才能を見出しレッスンをしたのに拒絶されたフランス人のオペラ歌手

牧師が死んでからも二人の娘は村の人々のために祈り、貧しい人々のために食事を届ける

そこに現れたのはパリコミューンの渦から逃れてきた女性バベット
彼女は生きるためにこの姉妹の元に身を寄せてタダで家政婦を務める

姉妹たちが普段食べているドロドロのシロモノは
塩漬けのタラを水で戻したもの
パンを水に浸しビールで煮たもの
見るからにまずそうである

それらはバベットが来てからは質素ながらも色のついたまともなスープになっている模様だった

月日はたち 15年後

姉妹たちも村の人々も着実に老いていた

ワタシは思う この狭い世界、他からの介入はほとんどなく明るい材料も見当たらない世界で何を楽しみに生きているんだろうか?
それを補うのが宗教なんだろうか?
牧師の影響を受けての姉妹の生き方を見ても「楽しむ」ことや「この世の快楽」を悪として態々遠ざけているように思える
そういった自己犠牲を神は喜ぶのでしょうかね?

ある日バベットにパリから便りが届く 宝くじが当たり1万フランという大金が彼女のものになったのである
姉妹はこれがきっかけで自分たちのもとから彼女が出て行ってしまうのではないかと心配する

しかしバベットの願いは そのお金を使って牧師の生誕祭時に 姉妹と村の人々に自分の料理を供することだった

そしてそのために甥に頼んで食材集めをする

海から船で届けられた食材たち
生きているうずらやウミガメ 野菜 果物 氷柱 たくさんのワイン

姉は彼女が晩餐の準備をしているのを見て恐れ、晩餐の間は食事についての感想を言わないことを人々に約束させる

これも「快楽」から身を慎む神の教えの解釈なのだろうか?

そしてその晩餐会にかつて姉を愛した士官が伯母さんと共に参加することになった
彼は姉の方にふられた後は出世して将軍になっていた
そして晩餐会の幕は切って落とされる

画面は急に華やかになる

海亀のスープにアモンティリヤード
そう来たか! 熟成されたシェリーはこの熟成メンバーの晩餐の幕開けにふさわしいと思う

キャビアにはヴーヴ・クリコ
これもいいねぇ

将軍が料理と酒の見事さに目を見張る
他の人々も美味しさはわかるはずだが事前のうちあわせで料理と酒の美味しさについて話さないことになっている

将軍は一人だけ、経験と知識をもってしてこの料理とワインたちの価値もわかっている

ウズラのパイとクロヴージョ

ここで将軍はパリの高級レストランを思い出す 今ここで食べている料理が彼のレストランの味そのままのことを そしてそこに女性シェフがいたことを・・・

オットに「あの酒はなに?」と聞かれたからブルゴーニュの赤、ボトルの形でわかるでしょ、あとウズラは白肉だからマリアージュはピノなんじゃないの?と得意げに講釈するワタシ
この手の地味な映画は嫌いかと思ったら案外食いついて見てるオット

チーズ、そしてフルーツ
またシャンパーニュ

映画を見ながら何か食べたくなったので画面を止めて冷蔵庫のピオーネを洗う
ブドウを食べながら続きをみる
んー、ワイン飲みたい
それもフランスワイン

映画に戻る


バベットの指示によって人より多くワインを供され料理に素直に感心する将軍以外の年寄りは事前のうちあわせ通りに料理についての言及はしない
しかし料理を口に含んだ時の目の輝きと赤ワインを飲んだあとの老女の頬の染まりで彼らがどんなにこの晩餐に快楽を感じてるかが知られる

将軍は去り村の人々も去る

大仕事を終えたバベットが赤ワインを一人で飲む図

この村に来て15年以来の高級ワインだった

どんなにか美味しく感じるだろう

宗教
仕事
芸術
何を求めて生きるのか? 何を幸せと感じるのか?

考えさせられた映画だった
表にでる熱狂もない 激しい感情の発露もない しかし細かい動作や目線で抑えられた熱情が時に感じられる
ワタシはこういう表現が好き 

そして私の経験した晩餐会


















































コロナ禍以前 ワイン友達と一人の都心のマンションの一室で季節毎くらいの間隔で開いていた酒と食の持ち寄り会をしていた
テーマを決めてワインを選びそれに合う料理をみんなで考えた
世の中にこんなに美味しいワインがあるんだ~ グラスによって味わいって変わるんだ~ とビックリさせられたこと
酒は酔うためのモノじゃなくて料理を美味しくするためにあるんだと自分の中で固まった時期(まあたまには酔っぱらって沈没もするけどね)
ワタシも家庭料理にすぎない自分の料理だけど美味しいといって食べてくれるみんなのためにかなり気合を入れて家で仕込んだものだった
自分の作ったものが大切な人たちに受け入れられて喜んでもらえるって素敵なことだった

部屋を提供してくれるMちゃんはホントに料理上手で和洋中なんでも作るし さすがに生きてるウズラじゃないけどナショナルマーケットで買ってきた冷凍ウズラを首チョンパしてさばいてローストを作ってくれたこともあった 寿司も握ってくれた

そして何年か後に彼女はなんと仕事を早期退職して経営も学び満を期して東京の激戦区に自分のお店を出した
第二の人生として決して簡単でない仕事に転じるってすごいことだと思う

そしてこのコロナ禍の中でも規制を守りつつも潰されずにファンを増やしている私たちのバベット


心置きなく彼女の料理と厳選された酒を堪能できる日が来ますように
あの黄金の時間を彼女と仲間たちとまた過ごせますように



コメント (8)
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