萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚173

2014-08-05 22:40:08 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚173

正月休みの明けた4日、職場はナントナクゆるい空気で定時に上がれて、
で、昼間にメールした通りいつものコーヒー屋に行った。

Re :18時半にあがれるなら30分@コーヒー屋

って自分から誘ったけど、

コレで直帰したらさぞ御曹司クン凹むんだろな?

なんてSなこと考えながらも約束の店に行って、
そしたら御曹司クン先に来てコーヒーカップと座っていた、

「マジで来てくれたんだー…よかった、」

って座ったら言われたんだけど、いつもなら笑顔になるトコなのに泣きそうな顔だった。
こっちが怒ってるってのは解かっている、でも理由は何なのか解って無いだろう?
そんな予想といつもの隅っこ席に座って、のっけから遠慮なしで言ってやった、

「おまえが言わなきゃ自分が花サンに言うよ?バイだってこと、」

これは最初に御曹司クンと約束している、
だからそのまま言った前で御曹司クンの貌が固まった、

「…だってつきあってないなら言わなくても良いだろ?」
「しょっちゅう好きだって言ってたんだろ?」

すぐ畳みかけたら可愛い顔が凍り始めた、
職場では営業スマイルorここでは幸せ笑顔+拗ね笑顔が通常モード、
だけど固まっていく顔は哀しそうで悔しそうで、それでも容赦なく続けた、

「誰かとサシで会えばデートだってオマエ言ってたよね、男も女も関係なくなんだろ?自分には偶にしか会わない友達まで恋人疑惑してたよね、
そういう発想のオマエがしょっちゅう好きだ言って休日も逢ってたなら恋人モードってコトだろが、そのくせ付合ってないとか言い訳するんだ?」

責めたい訳でもない、だって仕方ないんだろう。
こいつにソウイウコトは求められない、それくらいもうイイカゲン解らないとなって思った、
やっぱり無理なのかな?そんな諦めにちょっと笑って言ってやった、

「本気で恋愛したい相手ならカミングアウトしな、ソウイウとこからフェアに成れなかったら誰とも幸せに成れないよって最初に言ったよね?
バイでゲイ寄りで本気で男と体の関係シてたって正直にカミングアウトしないと無理だよってさ、で、お遊びだから花サンに言わなかったワケ?」

どれも最初に自分は御曹司クンに言ってある、
だから言えば思い出してくれるだろうか?そんな意図に御曹司クンは口開いた。

「…俺が誰に本気かなんて解ってるだろ?だったら答え解かってるじゃん、」

やっぱりソウイウコト言っちゃうんだ?
こんなこと言われるならもう本当に無理だろう、仕方ないなって笑った、

「花サンがなんで自分のコト信頼して好きなのかって前にオマエ聴いたよね?お互い本気で好きな人を亡くしてるからだよ、もうオマエも予想してたろうけどさ、」

それが花サンと自分が親しくなるキッカケだった、
このこと前に聴かれた時あえて話していない、でも御曹司クン予想はしてたろう?
だから言ってやったコトに御曹司クンが口開いた、

「…それも事故?」
「だよ?」

もう言わなくても解かるだろなって思った、
もうソコは割愛して話そうって続けた、

「花サンと彼はね、また明日って別れた直後だったんだ。オマエも花サンの腕時計を外したとこ見てるだろ、アレもそれから始まったんだよ、」

手首の傷に御曹司クンが気づいていない筈が無い、だって「つきあってる」って花サンは思ったくらいだから。
そんな推定にコーヒーカップの向こうは固まって、それでも口開いてくれた。

「…なんで俺が腕時計はずしたとこ見てるとか解かるワケ?」
「お泊りしてなくてもヤれるだろ?笑」

もう聴いてるよ、言い逃れさせるツモリないよ?
そう笑ってやったら御曹司クン泣きそうになった、でも言ってやった、

「一度でもヤってるなら傷痕ぐらい見てるだろ?どうしたのかってオマエ聴いてやろうともしなかったよね、ソレがなにしたか解かってんの?
今でも墓参り行ってるんだよ、そういう花サンがどんな想いでオマエの『好き』を受けとめたか解かんないんだろ、年越でアンナコト言うなんてさ、」

もう花サンに何言ってるのか聴いている、
それに送られたメール開いて携帯電話を向けてやった、

「彼女がおまえと年越に一緒したのってさ、生きてる人間との幸せを選ぼうって決心だったんだよ?なのにこのメール見ちゃったみたいだね、」

From:御曹司クン
本文:いま年越カウントダウンで山下公園に来てる、隣にいるのオマエだったらいいのに。
   いつも素っ気ないし意地悪だしメールも短いのしか返してくれないし、
   電話も圏外なこと多いし寝てて出てくれないし今も遠くに行ってるし、
   いま隣にいる大学の友達のことマジ羨ましいし嫉妬してる、
   <中略>
   もうじき今年も終わるけどオマエのコト考えてる時間がいちばん長い一年だったよ。
   こんだけ長い片想いって俺初めてなんだからな?

「デート中にこんなメール隣で書かれて他のヤツに送られたら誰でも哀しいだろ?それも亡くなった恋人のこと超えようとしてる人が見たらドウ?
だから前にも言ったんだよ、花サンと付合う気なら全部ちゃんとカミングアウトしてから真面目に付合えってさ?でないと後悔するぞって言ったよね?」

メール見せながら淡々と話しているコーヒー屋@19時前は冬の窓まっ暗で、
いつもより人少なくてBGMで声は席ごとお互い聴こえない、そんな空間で御曹司クンが口開いた、

「…でも俺だって寂しかったし田中さんのこと好きなのホントだし、」
「だから何?」

畳みかけてコーヒー口付けた前で御曹司クンの目は潤んでた、
もう泣きだすかな?そんな予想と笑って言ってやった、

「ホントに好きなら傷痕を見て無視しないよ、アレがどんな傷かオマエ気づいたんだろ?ちゃんと自分がヒントあげたんだからオマエ解ってたよね、
なのにコンナこと確信犯だろ、花サン利用して気を惹くツモリだったワケ?だとしたら逆効果だよ、これでオマエと距離おこうって想ったから、笑」

もう選ばないといけないな?
そう笑って立った席の向こう見あげる目は潤んでた、
こんなこと言ったら御曹司クンは泣くんだろう、でも笑って言った、

「ごめん、おまえより花サンの方が大事なんだ、どっちも恋愛じゃないけどね?笑」

これはたぶん自分の本音、だけど痛かった。

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Aesculapius「Chiron3」草稿UPしてあります、雅樹@小料理屋奥座敷にて蒔田との面会です。
週間連載Savant「夏嶺の色7」も草稿UP、どっちもまた加筆校正します。
第78話「冬暁1」+Favonius「少年時譚32」校了しています。

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