萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第78話 冬暁 act.10-side story「陽はまた昇る」

2014-08-26 23:00:00 | 陽はまた昇るside story
dimness それでも希望は



第78話 冬暁 act.10-side story「陽はまた昇る」

シャツ透す湯に濡れてゆく、肩からシャワーの飛沫降りかかる。

抱きしめた腕も胸もシャツと湯を透かす体温ひとつ、震えるごと沁みてゆく。
水の音、かすかな嗚咽、石鹸やわらかな香、顎ふれる髪の水滴、ふるえる素肌。
抱きしめたまま濡れてゆくシャツに鼓動ひとつ響きあう、その温もりと震えに英二は微笑んだ。

「周太、泣いていいよ?」

泣いていい、今夜の君は。

誰だって普通は泣く、きっと君の父親だって泣いた。
その父親も泣いただろう、そのまた父親も、その親も、連綿と泣き続けてきた。
だから今ここで泣いたらいい、そのために今夜いちばん傍にいたかった背中を抱きしめた。

「周太、今夜は周太を思いきり泣かせたくて俺は来たんだ、独りで泣くより俺の傍で泣くほうがマシだろ?あのときの俺みたいに、」

あのときの自分、そう言ったら君はどの夜を思い出してくれるだろう?
こんなふう抱きしめてもらって泣いた夜は自分こそ多すぎる、そんな記憶に腕のなか濡れた黒髪がみじろいだ。

「えいじ…僕が何を泣いてるとおもうの?」
「俺との約束の時間に来れなかった理由だろ、周太?」

答えて笑いかけながら腕ほどき、棚のバスタオル一枚とる。
シャワー停めて、ふわり濡れた裸くるみこみ笑いかけた。

「周太が出たら俺がシャワーするからさ、部屋でゆっくり着替えなよ?それとも俺が周太のこと、着替えさせていい?」

こんなこと言ったら叱られるんだろうな?
その予想に笑いかけた真中で濡れた黒髪ふりむいて睨まれた。

「けっこうです自分でします、さっさとおふろのしたくしたら?あっちいってて、」

すこし棒読みな言い方は恥ずかしがっている。
そのトーン通り紅い顔そっぽ向いてタオル包まってしまう、この変わらないツンデレに笑って浴室を出た。



ばさり、タオル被って息吐いて鏡から自分が見つめる。
雫まだこぼれる髪に眉から頬ぬれる、泣いているみたいだ?
そんな感想と見つめるまま本音が可笑しくて英二はそっと笑った。

「は…泣いてるかな、俺、」

換気扇の音まじり笑った声がどこか泣く。
いま見つめる鏡は湯気かすんで曇る、その白い影に自分の目は泣いていない。
それでもシャワー浴びる間ずっと泣いていたかもしれない?その臆病が軋む。

『英二こそ僕を信じてる?』

ほら、髪拭きながら声また聴こえてしまう。
もう四日前の言葉、けれどタオル髪ぬぐう狭間に大好きな声は続いて裸の肩ふれる。

『僕は14年ずっと父を探してきたよ、良いことも悪いことも僕は知りたいんだよ?庇われたくない、英二こそ僕を信じてる?』

先週末に言われた言葉また響く、あの電話ごしの声と同じ意味だった。
ほんの15分前に言われた言葉、あれは信頼を問いかける。

『僕が何を泣いてるとおもうの?』

なぜ周太はひとり浴室で泣いたのか?

その解答ふたつ本当は迷っている、周太は今日どちらを選んだろう?
選択肢ふたつは唯一瞬で分かれていく、この分岐点あの人には大きすぎる。
午後遅い公園のベンチに見つめた電子文字の記事、あの事件で君が選んだのは?

“ いま向かいのビルが窓割れた、なんか機動隊っぽいの突入したけど全員マスクしてる怖い何? ”

機動隊は普通そんなマスクはしない、だからどこの部隊なのかもう解かる。
自分も実際に見たことは未だ無くて、それでも知識として知っている画像が記憶から映す。

警視庁特殊急襲部隊 Special Assault Team 通称SAT

入隊条件は身長170cm前後、独身、男性限定。
独身なのは「万が一」において家族も妨げとなるため、または「審査」を要するから独身の方が都合良い。
男性限定は体力から精神力の安定が求められるため、女性特有のホルモンバランス変化や不安定性は事故につながる危険が高い。
それは特に狙撃班員には要求される、二十四時間体勢で遠距離からの監視、警戒を行い状況次第では犯人射殺も辞さない、そんな任務は過酷だ。

―本当に狙撃したなら精神的な負担も大きい、どんなに平静に見えても初弾は、

自分も発砲経験がある、けれど威嚇射撃と狙撃は違う。
威嚇目的の発砲は「警告」そこに生殺与奪の意志は無い、でも狙撃の目的は「死」だ。

「…俺だって震える、きっと、」

独りごと零れて鏡のなか湯気そっと消えてゆく。
こんな自分ですら目的「死」なら震えるだろう、あの優しい人なら何を想う?
そんな想像に選択と答えは見えてくる、その確信に微笑んで扉を開き部屋に出た。

「周太、起きてる?」

タオル拭いながら呼びかけて小柄な背中を探す。
スラックス履いた脚は裸足のまま絨毯を踏む、タオル被っただけの肩に乾いた空気が涼む。
エアコン温まるオレンジ色のランプ下ソファへ振り向いて、その真中、座るナイフ持つ姿に叫んだ。

「っ、周太っ!」

なぜ、そんなもの持っているの?

すこし小さな手に銀色きらめく、あれはナイフだ。
あれは馨の遺品だと前に話してくれた、この記憶ごと腕伸ばし手首つかんだ。

「周太っ、なにしてるんだやめろ!」

叫びながら掴んだ手首に掌から軋む、だって細くなった。
日々の訓練に太くなるはず、それなのに少し細くなった手首からナイフひとつ零れ落ちる。

「なんで周太、なんで俺が離れた隙にするんだよ?やるんなら俺も一緒にやるから独りでやるなっ、」

きらり落ちた刃ランプ光らせテーブル転がる。
銀色の残像ただ視界の端に見ながらカーディガンの肩ひきよせ抱きしめた。

「お願いだ周太、俺の知らないところで死のうとかしないでよ?逝くなら俺も一緒に逝くから、だから独りでやるな周太お願いだから、」

抱きしめて黒髪やわらかに頬ふれる。
まだ濡れている髪さわやかに深い香が優しい、この香いつも傍に見つめていた。
いつも毎夜一緒に過ごした時は確かで、あの幸せだった記憶ごと抱きしめ頬よせた。

「周太、なにがあっても俺は周太の傍にいくよ?俺には周太しかいない、もう解ってよ…光一だって代りにならないの認めて、もう諦めて周太?
もう俺から離れられないって諦めてよ、こんな勝手な俺だけど全部で護るから離れないで…勝手にどこかいかないで周太、なんでもするから傍にいて」

頬よせて抱きしめたニットが素肌ふれる、被ったタオル素肌すべって肩から墜ちる。
ぱさり、かすかな音にスラックスの足許コットン墜ちて、その懐みじろいで黒目がちの瞳が見あげた。

「あの…えいじ?ぼく、りんごむこうってしただけなんだけど…ね?」

りんご、って今言った?

「え、?」
「あの、りんご、」

見あげ告げながら身じろいで左手さしだしてくれる。
すこし小さな手、けれど赤い林檎ひとつ確かに載せて微笑んだ。

「家からひとつ持ってきたんだ、コートのポケットに入れて…英二、寮生活だとりんご食べるとき無いでしょ?りんごは医者いらずだから、」

すこし小さな掌に赤い丸い林檎ひとつ、ルームライト艶めかす。
かすかな甘い香まだ傷ひとつない、その艶やかな果実に笑いかけた。

「ありがとう周太、周太のポケットに入ってたリンゴならすごく甘いだろな、」

林檎でよかった、

本音ほっと笑って背中の力抜けてしまう。
それでも離せないまま掴んだ手首に穏かな声が羞んだ。

「ふつうにあまいと思います…りんごむくから手、放して?」

放して、なんて今は聴きたくない。
そんな想いにさし出された林檎の手に掌そえて赤い実に口つけた。

かしり、さくっ

果実くだけて甘い香ひろがらす。
皮ほろ苦く軋んで実が甘い、さくり、甘さ呑みこみ笑いかけた。

「甘いよ周太、ありがとな、」

笑いかけ白い噛みあとまた口つける。
かしり歯に砕けて芳香あまい、さわやかな甘さに穏かな声すこし笑った。

「丸ごとかじっちゃうなんて英二、ちゃんと剥いてあげるのに?」
「このままで美味いよ、周太もほら、」

あまい香呑みこみ笑いかけて、添えた掌ごと赤い実しめす。
重ねたままの手すこし途惑っている、そんな眼差しへ綺麗に笑った。

「それとも周太、口移しで食べさせてほしい?俺がかじってあげるから、」

かしり、

ひとくち齧って笑いかけて黒目がちの瞳また途惑いだす。
いま困りだす眼差しの首すじ紅く昇りゆく、この恥じらい嬉しくなる。
だって何ひとつ変わっていない、その純粋な瞳ゆっくり瞬いて、そして告げた。

「英二、僕は誰も死なせていないから」

ことん、

あまい塊ひとつ喉から肚へ落ちてゆく。その軌跡やわらかに甘くて、けれど皮ほろ苦い。



(to be continued)

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

心象風景写真ランキング

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

閑話書覧:同居する癒し×内田百

2014-08-26 22:45:00 | 文学閑話散文系
猫、寝子、ねこ



閑話書覧:同居する癒し×内田百

内田百という作家をご存知ですか?

夏目漱石門下の文学者で東京帝国大学独文科を卒業後、
陸軍士官学校や海軍機関学校でドイツ語学教授を務め法政大学の教授になっています。
なんて経歴を書くとドイツ留学+軍医を務めた森鴎外と同系なカンジしますけど、百さんの作風はまた違います。

『ノラや』『クルやお前か』

飼い猫2匹をめぐる随想小説な作品です、
1代目ノラと2代目クルツに対する愛情をひたすら連綿と綴っているんですけど、
とにかく百の人柄がカワイイと思わされる作品で、近代文学で笑っちゃう×微笑ましいといえばコレかなと思います、笑

コレをベースに黒澤明監督『まあだだよ』という映画もあります、
これ自分的には好きな映画ベスト10に入る作品なんですけど、百の人柄と愛情+周囲の人間の温かみがイイです。
静かで穏やかな時間と映像の淡々とした空気×人の感情や願いみたいなものが温度になっている、人間っていいなーと思わせる映画です。

ちなみに内田百の「ケン」は「モンガマエ」+「月」なんですけど、
元はモンガマエに「日」で「内田百間」でした、で、この「」は環境依存文字なので文字化けします。



なんていう作品を描いているかと思えば、
夏目漱石の『夢十夜』を思わせるような幻想小説×ドイツ哲学みたいな作品もあります、

『件』

確か『冥途』に入っている短篇なんですけど、
人面牛身の「件=クダン」という妖怪というか珍獣になってしまった男の独白です。
大学の講義でとりあげられて読んだんですが、漱石の幻想系に連なりながら理知的な空気が独特。
なんとなく不思議空気で非日常感を味わいたいなっていうならおススメかもしれません、

が、個人的には『ノラや』の方が好きです、笑

にゃんにゃん 第55回ブログトーナメント



なんてかんじに気分転換に文学紹介してみました、笑

第78話「冬暁10」冒頭UPしました、加筆校正またしていきます。
Aesculapius「Chiron10」加筆ほぼ終わりました、当初の倍になっています。
第78話「冬暁9」校了しています、Favonius「少年時譚37」あと少しで校了します。

取り急ぎ、



にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ


PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

正午雑談:殉職の定義×学者

2014-08-26 12:45:10 | 思考雑談
正午雑談:殉職の定義×学者

理化学研究所の笹井芳樹博士が亡くなって3週間、
3週間前は色んな人がいろんなコト言っていましたけど、そのころ気になった言い回しを見たんでちょっと書きます、

「笹井氏の自殺は殉職だ」

ってカンジの文章ですけど、コレ書いた方は意味を理解して言葉を使ったのでしょうか?
言葉「自殺」「殉職」の意味+笹井博士が優れた科学者であることへ敬意ある発言なのかなと。

「殉職」=職業・仕事の職分・信念を護り全うするために死ぬこと、または一生を懸けること

殉ずる、とは信念や仕事を「全うするために」死ぬこと一生を懸けることです。
全うするって言うのは「成し遂げる」って意味になります、
で、気づかなくちゃいけない問題は、

自殺することは「全うする」といえるのか?

たとえば150年前の日本では「切腹」という死刑がありました、
切腹は「自刃」とも言いますが、イコール「自裁」自ら裁きを下すという意味です。
そこには自身の生命を今そのとき終わらせることでプライドや誇り、家族、家名、国家など何か「護る」対象がある。

自裁=「護る」対象がある自殺

ってことになるんですけど「自裁」と「殉ずる」は意味が近くて異なる言葉です。

「殉ずる」=信念や仕事を全うするために懸けた人生を終えて死ぬこと、本来は他殺による死や病死・老衰など自然死も含まれる

自裁は自殺だけど、より広範囲の死のありかたが「殉ずる」です。
だから「殉職」も本来の意味は自殺や他殺・早逝だけではなく「全うするため懸けた人生を終える」なので自然死なども含みます。
そんなワケで「学問に殉じた生涯でした」なんて言い方も学者への弔辞には使われるし「技術の発展に殉じられた」なんても言います。

対して自殺は「自分で自分を殺して命を終えること」であり「全うする」「護る」という意味は含みません。
同義語は「自死」自ら死ぬこと、ただ目的の有無を問わずに自分から生命を放棄することが「自殺・自死」です。
ようするに「生きることが嫌になった辛い、だから死ぬ」という理由なら自殺であっても「殉ずる」にならない。

で、笹井博士の自殺は「職分を全うした死」殉職だったのか?

彼は「科学者」であり立場的には「学術指導者」です、
そして当時の職務は「STAP細胞の有無を確認する」ことによる「日本の科学に対する信頼回復」でした、
また「指導した後輩科学者のサポートと教導」であり「日本の学位および学術にある不信感を是正」することです。
このどれか一つでも全うした自殺だと言えるでしょうか?

笹井博士が優れた科学者といわれる代表的研究はES細胞です、
このES細胞は受精卵をベースに作ります、そのため生命倫理に抵触するという現実があります。
正確にいえばES細胞=受精卵または受精卵より発生が進んだ胚盤胞段階の初期胚を用いて作るんですけど、
この受精卵・胚細胞について、ずっと法律上もされている議論「胎児に生存権を認めるのか」に関わる問題があります。

「妊婦を殺害し胎児も死んだ場合、殺人されたのは2名か1名か?」

これが胎児の生存権の問題ですけど、感情論で言えば胎児=おなかの赤ちゃんにも命を認めたいですよね?
けれど胎児については医療からの問題点「堕胎」と「不妊治療」があるため、現行法は胎児の生存権を認めていません。
堕胎は母体の生命維持に必要とされる場合があります、また犯罪被害による望まない妊娠への救済措置として堕胎が行われる事もあります。
不妊治療は子供を望む=生命の誕生を叶えるためにありますが、そこには「試験管児」=受精卵を人工的に生み出す処置が行われています。
堕胎も不妊治療も「受精卵・胎児」が関わるわけです、これに生存権を法律上でも認めれば産科医療の現場で殺人罪が起きてしまうわけです。

こんなふうに受精卵は生命倫理の問題が大きな存在で、そのため受精卵由来のES細胞は倫理上の問題が大きいワケです。
実験段階ではマウスで試作していればいい、けれど医療現場の実用段階で人間の受精卵を使えば「他者の命を犠牲にする」ことに繋がる。
ようするに、

受精卵・胚細胞=人間になる存在

だから受精卵による治療方法は他人の命を犠牲にすることへの肯定になります。
これに対して山中教授のips細胞は「患者本人の体細胞由来」です、そのため上述の生命倫理の問題がクリアできている。
そしてSTAP細胞も実現可能ならips細胞と同じく生命倫理の抵触も無く、かつips細胞より簡単に作製できるという利点もあったワケです。
これが実現化すれば再生医療の現場、たとえば脳の神経細胞の劣化によるアルツハイマー病など細胞異常による難病治療の期待がされました。
これらの治療についてips細胞が臨床段階へ進み始めていますが、より作製が簡単なSTAP細胞には期待も大きく実験が世界中でされたわけです。
けれど現実にはips細胞の成功例は他に無く、論文もコピペ・剽窃だけではなく証拠として重要な画像までips細胞ではない映像だった。
こうした論文を「提出許可した」ことは学者として指導者として犯したらアウト、そして今回は個人の問題に留まりません。

剽窃とは「他者の文章・論を引用したのに引用元を明らかにせず自論のよう見せかける」ことです、
人が何か文章を書くとき、考えたり資料を調べたりと時間も能力も費やした結果として文章などが生まれるワケですが、
こうした頭脳から生まれた成果物を「知的財産」と言います、その一つとして「著作権」があり全ての著作=作りだしたものにある権利です。
こういう頭脳・思考から出来た産物はいわゆる「物体」としては無い、だから財産として見えなくて簡単に盗用する人も多いのが現状です。
だから今回も「コピペが悪いことと思わなかった」という発言もあったワケですが文章も財産です、無断使用すれば権利侵害として罪に問われます。
作者に私用許可を得るor「引用文献」「参考資料」として書名・作者名を明記する、そうすれば剽窃ではなく抵触することもありません。
それは創作物、文章や画像などに対する尊重であり作り手への敬意です、こうした謙虚な姿勢が無いものは「唯一本物」とはいえません。

こうした剽窃などは学者なら一番最初、大学入学の時や論文指導で教えられる作法で当然の義務でもあります。
これは指導する側は必ずチェックすべき点でもある、その論文が所属組織の外に提出するものなら組織自体のプライドに関わるコトです。
そして国外に発表するなら自国の学術界を代表する責任を負うことになります、それはプライドだけの問題ではなく信頼性がポイントです。
もし誤った論文を提出したなら国全体の学術レベルから技術力・国家の信頼度まで壊しかねない現状があります。

こういうの大袈裟って考える方も多いかもしれませんけど、知的財産は「物体」じゃない無形だからこそ信頼性は重要です。
まして科学的研究は検証実験にも経費と時間が掛かります、金も時間も費やす元ネタが正解ではなかったら信頼性はどうなりますか?
それが国を代表する機関に所属する研究者が発信したものであり、その研究者を指導したのは優秀だと信頼されていた科学者だったなら?

笹井博士は理化学研究所の代表的指導者の一人であり、優秀な科学者でした。
だからこそ周囲も彼を信頼してSTAP細胞の研究を推し、科学雑誌も掲載して世界中が新しい医療方法の希望に懸けたんですけど、
そういう彼だからこそ失った信頼も大きかったワケですが、でも信頼を取戻せる可能性も大きかったはずです。

彼に課されていたのは「日本の科学への信頼回復」と「日本の学位および学術にある不信感を是正」でした、
どちらも一個人には大きすぎる課題です、プレッシャーも罪悪感も大きすぎて当たり前のことだろなと。
でも彼だったら成し得る可能性があるからこそ課された現実だと思います、

彼がなぜこんな事件の渦中に踏みこんだのか?

嫉妬、虚栄心、自尊心、組織内または学術上の立場、いろんな要因の結果だろうなって推定しか出来ません、
それでも優れた科学者として生きていた現実は彼本人が積みあげた時間の成果です、
そして貶めてしまったことも彼の時間たちの結果で、彼自身が選んだ道です。

けれど彼は全うしないまま自殺しました、誰がその代りを出来るのか?

なんて問いに答えられる人間は今まだいません、
彼なら取り戻せかもしれない、けれど取戻す前に放棄してしまったのが現実です。
一個人としての問題がたとえあったとしても優れた科学者だったと賞賛されるのが彼の現実です、
その「優れた」才能に立場に彼が全うすべきことは大きくて、けれど途中で放りだしたことは彼の才能と尊厳のため同情すべきじゃない。

彼の死を「殉職」と言って同情する方は多いと思います、それは偽善者の詭弁です。
心から彼という人間と才能に敬意を払うなら、彼の全うできなかった死に「殉職」と名づけるのは残酷で傲慢な嫌味です。
名声や立場を得た人間が堕ちて死んだ事を同情で美化して飾りつける言葉を贈ることは相手に対する蔑みでしかない、憐憫という快楽です。
そうした安易な同情を彼が望んで自殺を選んだのだとしても、彼という唯一の可能性と才能と尊厳のために「殉職」なんて言うべきじゃない。

学問は「世界の尖塔」だから学者は世界の舳立っている、その可能性と希望は自身の才能と人格に負う責任で義務で権利だ。

そんな言葉があります、なにかの本にあった文章で恩師の台詞としても聴かされた言葉です。
そんなふうに自分は教わりましたけど、これは学者に限らず生きてる誰にも全ての立場で言えることかなって思います。
学問なんて言うとカタクルシイとかムズカシイとか言う人もいるけれど、

マンガ=文学(ストーリー)+美術学(イラスト)
ゲーム=文学(ストーリー)+美術学(イラスト)+工学(コンピューター)
ファッション=美術学(デザイン)+家政学(縫製・織工)+工学(織機・紡績)+数学(流行の確率など)

ってカンジに学問は身近から世界全体アレコレ作っているものです、
いわゆる「生きるにおいて」ある世界の有形無形を謎解きしてヨリ豊かに楽しくするためにあるのが学問、
世界の謎解き+構築するための存在が学問ってことです、だから「学問は世界の尖塔」だとも言われています、

笹井博士も「世界の尖塔」科学という学問の舳に立った一人です、
彼の可能性と希望は彼の才能と人格に負う責任で義務で権利、だからこそ今このとき自殺すべきじゃなかった。
才能と功績にプライドがあるからこそ挫折感も大きかったと思います、けれど挫折も才能で超えられる可能性もあったはず。
彼の才能と人格が踏みこんでしまった事件と課された現実を全うして、その先にあるはずの可能性を見つけるため生きたら良かった。

大きな可能性を全うできる科学者で人間だった、だから殉職じゃない挫けた卑怯者の死だ、

そう言ってあげるほうが才能と生きた時間と、彼の科学と命に対する敬意だと思います、


なんてコト想ったので休憩ナガラにだらっと書いてみました、笑
この一連の事件については色んなトコで色んな人が言ってますけど、哀しいなって思う意見も多いなと。
なにが?っていうと剽窃論文のNGが解ってない人多すぎる=大卒者の低レベルにびっくりしたのと、安易な同情論が多すぎるアタリ。
ここで小説を書き始めて他のWEB小説を読む機会も増えたけど、残酷エログロR18違反や盗作剽窃が「当たり前」な現状が事件の根底なんだろなと。
そういう系のヒトは「知らなかった」で赦される無罪とか思ってるみたいだけど、こんな↑結末もあるのが現実です。

思索するブログトーナメント

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ


PVアクセスランキング にほんブログ村

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚193

2014-08-26 00:35:01 | 雑談寓話
雑談寓話:或るフィクション&ノンフィクション@御曹司譚193

1月上旬の月曜日、御曹司クンと呑みながらアレコレ話した夜、
放りだし気味に帰宅してからメール友達とやりとりして花サンとも往還した、

From:花サン
Re :こんばんわ、今日もお疲れさまー、
   メールありがとう、詳細とか気になるけど電話したら長くなりそうだよね?笑
   明日のお昼とか一緒出来たら嬉しいけど、帰りにコーヒーも私的にはアリです、

Re2:こんばんわ、帰りにコーヒー大丈夫だよ、

ってカンジに明日の約束して、
明日は今夜のこと話すんだろな考えながらパソコンやることやって、
部屋の電気を落して文庫本とベッドに転がったら携帯また着信した、

From:御曹司クン
本文:いろいろ話してくれてありがと、俺たぶん明日は目が腫れてると思う。
   なんて言っても振り向いてくれるワケじゃないの解かってるけど今も泣いてる、、
   こんなに泣かされても大好きだ、おまえに嘘吐かれてない分だけ信頼されてるって嬉しい。
   田中さんのこと俺ほんとは解らない、でも彼女に意地悪したかったんじゃないのは解かってよ?
   もう俺の事なんか信じてくれないだろうけど、おまえへの気持ちは本物だって自分で思う。
   やっぱり愛してる、

なんてカンジのメールが着て、
それボンヤリ眺めながらもう眠くって、で、寝落ちした。

それで翌朝はパン屋に寄ってフツーに出勤して、
いつもどおり買ってきたパンとコーヒーで朝ごはん@自分の机して、仕事して、
いつも通りな一日に仕事しながら忘れていたこと思い出した、

そういえば御曹司クンのメールに返信してなかったな?

って気づいたのは着信から12時間以上経過していて、
仕事合間の休憩した自販機前、携帯電話チェックしたら特定Noサイレントモード設定になっていた、
もちろん特定No=御曹司クンなワケで、そういえば帰りの電車でモード設定したままになっていたの思い出した、

コレだと御曹司クン着信も受信も気づかないな?笑

なんて我ながら呆れて笑って、
缶コーヒー啜りながらチェックしたら朝と昼に各1件ずつ受信していた、

From:御曹司クン
本文:おはよ、もし今日廊下ですれ違っても無視しないで?

From:御曹司クン
本文:いま昼、何度もメールしてごめん。
   昨夜から返信何も無いけど、これってもう終わりってこと?
   廊下でも今日は会えてないけど顔見たいけど、おまえの席に行くのも怖くて行けない。
   こんなとき別室なのは辛いけど、顔見るたび無視されたら泣きそうだしこれでいいのかなとか考える。

なんてカンジのメールを読んだのは午後16時とっくに過ぎていた、
いつもながら忙しくて昼ゴハン遅め且つ新チーム同僚と一緒だったから携帯チェックもしていなくて、
でも、

もし読んでいてもそのとき返信はしてなかったろな?

なんてこと考えながら文面を眺めてコーヒー飲んで、
とりあえず今は返信するの止めよう、って決めて携帯電話ポケットにしまい席に戻って、
また忙しい時間がすぎていくまま終業時間+1時間後、花サンが席に顔出してくれた、

「おつかれさまです、忙しそうですね?」

忙しそうだけど行ける?って訊いてくれてる、
で、今夜の約束を思い出して時計見ながら答えた、

「忙しいよ、あと1時間くらいで上がれる程度にね?笑」
「あ、私と同じペースです、じゃあまた、笑」

ってカンジに会話&約束かわして、で、1時間後に仕事あがって、
いつものコーヒー屋のいつもの席で一杯飲みはじめたら花サンが来た、

「おつかれさまです、トモさんの方が早かったね?笑」

思ったより元気そうな笑顔に嬉しいなって思った、
もっと笑わせてあげたいな思って、で、言ってみた、

「オツカレサン、このままゴハン行く?もう8時過ぎるし火曜ならあの店、予約なしで平気だろうし、笑」
「行きたい、今日も遅くなりそうってお母さんに言ってきちゃったし、笑」

なんて笑ってくれた言葉は最初から話しこむツモリだったんだろう、
その気持ちナンカ解かるなって思いながらコーヒー飲み干して外に出て、で、思い出した、

そういえば御曹司クンのメールまだ返していない+特定Noサイレントモードのままだ?




第78話「冬暁9」+Favonius「少年時譚37」読み直し校了は明朝になるかなと、
Aesculapius「Chiron 智者の杜 act.10」加筆校正まだ倍くらいする予定です、
ってカンジにとっ散らかってますが眠いんで仕方ないです、笑

で、昨日はバナー押してもらえたので今夜も短めですがコレもUPしました、
この雑談or小説ほか面白かったらバナーorコメントお願いします、続けるバロメーターにもしてるので。

取り急ぎ、



にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ


PVアクセスランキング にほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする