水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

2009年11月21日 | 日々のあれこれ
 陛下にオバマ大統領が深々とお辞儀したことをアメリカ国民が批判しているというニュースは、うまいぐあいに現代文のネタになった。
 「日本は欧米社会においつこうと努力してきた。しかし欧米とひとまとめにしたが、ヨーロッパとアメリカはずいぶん異なる。とくに20世紀以降は。ヨーロッパがアメリカのような能率優先社会になったら大変なことになる」という評論を読んでいたから。
 何よりも効率を優先し、時間の浪費を認めないアメリカ型の社会は、豊かな文化や精神を生み出すことはできないという主旨の文である。
 チェコの作家チャペックの言葉が引用されている。 

 ~人間の精神の最大の活動も、時間の気づかれぬ浪費の後でのみ発展してきたのです。ヨーロッパは何千年も時間を無駄にしました。そこにヨーロッパの無限の豊かさと生産性があります。わたしはヨーロッパでたくさん仕事をしたアメリカのある大物のことを聞きました。その人は列車の中で自分の秘書に手紙の口述筆記をさせました。自動車の中で大きな会議を準備したり、昼食をとりながら小さな会議をしました。われわれ原始的なヨーロッパ人は、昼食の時には普通に食事をし、音楽の時には普通に耳を傾けます。どちらもおそらく時間の浪費になるでしょうが、実際に自分の人生を浪費してはいません。大いなる精神の怠慢について、それがヨーロッパにその最高の価値のいくつかを達成させたということができるでしょう。~

「われわれ原始的なヨーロッパ人」という表現は、アメリカ人への皮肉なんだよと教えた。
 効率化が近代化の重要な側面であることは間違いがない。
 でも、効率という観点では測れないものがたくさんあることは、ヨーロッパ人はわかっている。
 何千年もの歴史をすごしてきたから。
 でも建国何百年の国に、それを理解せよというのは無理なのかもしれない。
 まして宇宙に行ってさえ英語が通じると信じて疑わない国民たちなのだ。
 異国の礼を理解せよと望む方が無理なのかもしれない。
 誰に対してもフレンドリーに「ハーイ」と手を差し出す風習が、世界中で、おそらく宇宙中で通用すると思っているはずだ。
 以前、新宿の紀伊国屋書店で、店員に英語で話しかけ、店員さんは一生懸命きいて理解しようとしているのだが、通じてなくて、しまいに外人さんの方が怒ってでていくという光景を見た。
 日本人が外国で、なんで日本語通じないんだ! と怒る場面はまず想像できない。

 皇室におかれては、異国からの客人に対しては、そちらの文化風習を意識しながら柔軟に対応されているのであろう。  
 陛下は、握手という異国の礼にあえてしたがってくださったのである。
 手の中に武器はないということを表すことから生まれたいわば蛮国の礼である。
 もし万が一自分が拝謁の栄誉に与ることができたとし、陛下から手をさしのべられなどしようものなら、畏まって、その場にひれ伏して、失禁してしまい、無礼な奴めと退出させられてしまうこと必定である。
 そこはさすが一国の長である。
 オバマ氏は、深々とお辞儀しながら握手をすることができた。りっぱなものだ。
 頭をさげるという我が国の礼を知っていたこともえらい。
 まあ、今回の件は、原始的な日本人としてあたたかく見守ってあげたい。
 万が一オバマ氏への迫害がおこり本国に居づらくなったなら、亡命して福井県小浜市に住んでもらえればいいではないか。
 若狭かれい、おいしいよ。もちろん鯖も。 
コメント
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