水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

「如」の用法

2010年01月08日 | 国語のお勉強(漢文)
 「如」には、「ごとし」「しく」「もし」などいろいろな読み方があり、つまりいろいろな意味があるとされるが、根本の意味は一つである(と断言しようとし、念のため『字統』も繙いて確認した)。
 「~にしたがう」、「~にみちびかれる」という原義から「~のようだ」となった語だ。
 英語の第二文型「S・V・C」の「V」と考えればいいと思う。

 「不動・如・山」(動かざること山のごとし)は、「不動」=「山」になる。

 「~に如かず」の「不如」は、この否定文。
 「百聞・不如・一見」は「百聞」と「一見」は「=ではない」ということを表している。
 イコールではなく一見の方がいいよね、という気持ちなので、「如(し)かず」と訓読したもので、本質はSVCのVだ。

 「如(も)し~」も実は同じだ。
 たとえば、「不入虎穴、不得虎子(虎穴に入らずんば、虎子を得ず)」という複文は、前後の関係から「~ならば」とつなげて解釈する。
 条件→結論の構造である。
 英語の「no~、no~」と同じで、「no music no life」を「音楽がなければ人生はない」と訳すようなもの。
 「音楽のない人生なんて考えられない」くらいには訳したいけど。
 文頭に「如」がある場合、省略されているAがBと同じである「ならば」、結果としてこう言えるとつながっていく文なので、「如(も)し~ば、」とよんでいくことにしたのだ。

 昔の人はえらいので、いかに訓読すれば伝わりやすいかをひたすら考えてくだすった。
 その結果ひとつの文字に複数の訓読みができることにもなった。
 それを、「なんで読み方がいくつもあるんだよ、おぼえられねえよ」と文句を言うのはあまりに頭が悪すぎる。
 本質は何だろう、それはどういうこと? という頭の使い方をしてみるのが大事ではないかな。
コメント
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