水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ゲシュタルト(2)

2016年09月05日 | 学年だよりなど

 

   学年だより「ゲシュタルト(2)」


 人間は、いくつかの要素やパーツの集合体によって成り立っている文字、物体、音楽などを、1つの「概念」として認識する。
 このような認識のことを心理学用語で「ゲシュタルト」という。ドイツ語だ。
 ひとつの「塊(かたまり)」として認識していたものが、なんらかの事情で認識できなくってしまうことを「ゲシュタルト崩壊」という。
 ものごとが一つの「まとまり」になったとき、人間はそれを認識しやすい。
 音楽の認識は、「メロディー」という形で入ってくる。ドが二つ、ミ、ソが続いて長めのラがプラスされる … という部分的な認識はしない。
 ある人を見たときに、胴体、手足、首、頭という要素の足し算として認識することは普通なくて、「その人」という塊で認識する。つまりゲシュタルト的な認識を通常行っている。
 単純な例をあげるなら、ランダムに描かれた9つの点は、一瞬見ただけではいくつあるのか把握しにくいが、3×3に並んでいると、一瞬で9つと把握できる。
 重要な項目が四つあるときは、一列に並べるよりも、ボックスにしたり、縦横の座標にしてみるとわかりやすくなる。
 1、2、3、4と番号をふって、全部で四つかと意識するだけでも、理解度はまったく異なる。
 勉強の第一段階とは、情報のゲシュタルト化にあると言っていいだろう。


 ~ コピーした白地図をベースにした資料ノートには、地形・産業・気候などあらゆる要素を書き込んでいきます。そしてそれらを、「風が吹けば桶屋が儲かる」のように関連づけて丸ごと覚えるように心がけました。 …  例えば、次のページの資料ノートを見てください。
 華北地方をトリミングしたものですが、俯瞰して繰り返し見ているうちに、次のようなつながりをすぐに引き出せるようになります。
「中国の華北地方には北京があり、肥沃なレス(黄土)と呼ばれる土が多いことから近郊農業(都市の周辺で行われる農業。都市に鮮度の高い野菜などを供給できます)が行われています。では、なぜ華北地方にレスがあるかというと、近くにロシアの氷河地形があるから。氷河が栄養分のある土を削り、それが風に乗って堆積して華北地方のレスになったのです」 (桜雪『地下アイドルが1年で東大生になれた! 合格する技術』辰巳出版) ~


 桜雪さんが行っていたのは、白地図に様々な情報を書き込むことによって、紙の上に書かれた線にすぎなかったものが、中国華北地方という一つのゲシュタルトとなって認識できたのだ。
 数式を展開し、整理して一つの「定理・公理」にするのも、いくつかの単語の集合を「フレーズ」にするのも同じだ。逆に言うとゲシュタルト化できないと、なかなか覚えられない。
 「丸暗記の勉強はよくない」というときの「丸暗記」は、ゲシュタルト化しないまま、情報をただインプットしていることを言う。

コメント
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