第四段落〈 28~33段落 〉 顔・面子
28 先に述べたように、とくに若い世代で変化は見られるものの、多くの日本人の「顔」はソト、とくに世間に向けられている。
29 内弁慶で家族には威張っているが、家(これも「ウチ」の領域)から一歩出たとたんに腰が低くなる、いわゆる「外面がよい」というのも、いかに日本人が世間の評価や視線を気にしながら生活をしているかを物語るものだろう。
30 日本人の顔や面子は、〈 それだけで独立して存在するものではない 〉。自分の顔と相手の顔が相互に依存しているし、連動している。さまざまな状況で配慮しなければならない、あるいは守らなければならないのは、自分の顔や面子だけではない。
31 基本的には、相手の顔をつぶさずに、上手に自分の顔を立てるようにしないといけないし、場合によっては、自分の顔より相手の顔を立てないといけないケースもある。
32 とくに自分よりも目上の人間に公衆の面前で恥をかかせたり、面目丸つぶれの状態に陥れたりするのは、絶対に避けなければならない。いかに不条理であっても「和」「調和」「協調性」といったことに価値を置き、集団の一員としての人間関係を重視する日本人にとって、〈 これ 〉は〈 絶対に守らなければならない 〉基本的なルールである。
33 個人主義の欧米の社会では、自分の面子だけを心配していればよいが、日本人はそうはいかないのがつらいところだ。「私の顔」と「あなたの顔」の両方に配慮してコミュニケーションをしないと、いろいろ問題が起きてしまうだろう。
日本人の「顔」 … ソト・世間 に向けられる
↓
内弁慶・「外面がよい」
世間の評価・視線を気にして生きる
自分の顔
↓↑ 依存・連動
相手の顔
↓
相手の顔をつぶさない・相手の顔を立てる
目上の人間への配慮
∥
「和」「調和」「協調性」に価値をおく
集団の一員としての人間関係を重視
∥
日本人の絶対的・基本ルール
Q24「これ」とは何か。(15字以内)
A24 目上の人間の面目を保つこと
Q25「絶対に守られなければならない」のはなぜか。(60字以内)
A25 日本人のコミュニケーションにおいては、他の何よりも、集団の「和」「調和」「協調性」などに価値がおかれるから。
☆ 「和」「調和」「協調性」のように、カギ括弧がついていることに注意する。
「 」の働き … 本来に意味とはずれていることを表す。
「不条理」な「和」、つまり理屈を越えてまで求められる「協調性」は、いびつなものと言うことができる。
欧米 … 個人主義の社会
↓
自分の面子を考える
↑
↓
日本 … 「私の顔」と「あなたの顔」の両方に配慮
Q26「個人主義の欧米の社会では、自分の面子だけを心配していればよい」とあるが、欧米人の面子とはどのような性質のものか。15字で抜き出せ。
A26 それだけで独立して存在するもの
Q27 このことから考えて「face」はどういう意味と考えればよいか。第一段落から13字で抜き出せ。
A27 個人のイメージとかプライド
欧米 face … 自分の面子 それだけで独立し存在するもの
個人のイメージやプライド
↑
↓
日本 「顔」 … 集団の一員としての面子
Q28「日本人の顔や面子は、それだけで独立して存在するものではない」とはどういうことか。(70字以内)
A28 日本人の顔や面子は、集団の一員としての人間関係に依存して成立し、
コミュニケーションのさまざまな状況に応じて使い分けられているということ。