言い換え力(2)
評論文の筆者は、自分の主張を伝えるために、様々な言葉を用いて説明する。
同じ言葉をそのまま繰り返すのではなく、様々な次元の言葉で説明し、読者の理解を得ようとする。つまり「言い換え」によって説明していくのである。
「言い換え」られた内容と、もとの内容とは「相似」の関係になる。「相似」表現を発見できれば、繰り返し述べられている内容が明らかになる。キーワードの発見にもつながる。
「相似」表現は、次のような「言い換え」で成り立っている。
1 語句レベルの「相似」表現
a 語種、語感による「言い換え」
① 文字数を換える
(例) 個=個人 礎=基礎
② 和語、漢語、外来語を言い換える
(例) 考える=考慮する
ほのめかす=示唆する
思い・考え=思念・観念
十分とはいえない=不十分だ
伝え合い=コミュニケーション
なかだち=媒体=メディア
つくりごと=虚構=フィクション
わざ=技術=テクニック
③ 文語・雅語的な語、口語・俗語的な語の言い換え
(例) 最近=今日(こんにち)
~で=~において
うそでない=いつわらざる
簡潔性や表現の重々しさが好まれる評論文では、漢語、外来語が多様される。
説明がすすむにしたがって、より凝縮した語句に言い換えられていくことが多い。
b 意味・イメージによる「言い換え」
① 意味の近い語に言い換える
(例) 規格=同質=画一
② イメージの近い語で言い換える
(例) 跳躍=はばたき
希薄化=解体=没落
③ 比喩で言い換える
(例) 編集能力=料理の腕
学者や批評家=知的料理人
本来の意味はまったく異なる語であっても、同じ内容の言い換えである場合がある。
とくに名詞の使われ方は、筆者によって相当に恣意的である。
だから、言葉そのものの意味よりも、「+(プラス)」イメージの言葉か、「-(マイナス)」イメージの言葉かを意識し、「言い換え」であると判断していくとよい。
c 内容説明的な「言い換え」
① 指示表現
(例) これは、それらが、…
人間中心の見方は=この観点は
② 内容を詳細化したもの
(例) 感性=独特の好み
真面目な聴き方=集中的・精神的な聴取行為
個性的でありたいという欲望=平均性を嫌い個性的であろうとする意志