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キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る 木村晋介
本書は、弁護士である著者が、ミステリー等の名作について、間違っているところ、不自然なところ、理解できないところを、その名声に臆することなく書き連ねた本である。ミステリーのファンならばたいていは読んでいる名作ばかりだが、それらを「法律的にみてここが変」とずばり指摘してくれるところがとにかく痛快だ。弁護士ということで「調書を読むようにミステリーを読むと…」と言う割にはとても素人っぽい指摘があったりするのも面白いし、「ケンカを売る」と言っておきながら全然ケンカを売らず「この作品のファンです」と言っているような項目があるのもご愛嬌という感じだ。ケンカの戦績を勝手に判定すると、ミステリー部門の作品に対しては14勝1敗3分、恋愛・家族小説部門の作品には3勝6敗、ロングセラー・ベストセラー部門の作品には6勝3敗1分といったところ。ミステリーに対する成績は、法律知識を駆使して圧勝という感じだが、恋愛・家族小説に対しては全く分が悪く、ロングセラー・ベストセラーに対してはそこそこ善戦している。特に痛快な勝ち方をしているのが、姉小路祐の「司法改革」、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」、山田風太郎の「甲賀忍法帖」に対する「ケンカ」で、「司法改革」に対しては法律家としての義憤から完膚無きまでに粉砕、「ライ麦」に対しても本当にもっともな指摘で完全否定、「甲賀」に対する指摘はとにかく面白い。(「キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る」木村晋介、筑摩書房)
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