書評、その他
Future Watch 書評、その他
ジャニス・ジョプリン セーター アメリカン・パイ②

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
エルビス・プレスリー アーミー・シャツ アメリカン・パイ①

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
硝子のハンマー 貴志祐介
片道3時間半の出張の車中往復7時間のために、できるだけ厚い文庫本と思い、本書を選んで電車に乗り込んだ。読み進めていくうちに、本書の柱が「密室トリック」の解明にあることが判り、しかも5分の1もしないうちに、主人公によってそのトリックも解明寸前までいってしまう。これからどう話が進んでいくのか、なぜ本書はこんなに分厚いのか、もしかしたらいくつかの違う事件が入っているのではないか、などと思って読んでいくと、ほぼ解明と思われた主人公の推理に惜しいところで無理があることが判り、結局振り出しに戻ってしまう。ここまでが前半で、後半は、がらりと記述の視点が変わり、別の話が進行し始める。ややとまどう構成だが、後半を読み進めていくと、そこには作者の明確な意図があることがわかる。後半部分では、「名探偵でも推理ができないほどアクロバティックな犯罪が何故行なわれたのか」という蓋然性が明らかにされていくのである。ミステリーでは、巧妙なトリックほど面白いことは面白いのだが、どこか嘘くさくなってしまう。トリックが巧妙であればあるほど、何故犯人はそんなに複雑な犯行をしたのか、ということがなおざりにされてしまうからである。そんな犯行を思いつくほど頭がよいのならば、その知恵を別の道に使えばいいのに、という感想を持つことも多い。要するに、本書は、そうしたトリック主体のミステリーの不自然さを感じさせないことに大半の努力を費やしているのだと納得、非常に面白い試みだと思われた。その作者の苦労を思うと、ありがとうと言いたくなる。休憩を入れながら、往路で前半、復路で後半をちょうど読み終わり、満足感のいく車中の読書であった。(硝子のハンマー」貴志祐介、角川文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )