書評、その他
Future Watch 書評、その他
玄鳥 藤沢周平
細切れの時間を利用して読んだもう1冊。こちらは、下級武士物で、少し違う意味で楽しめた。下級武士の矜持、倫理観といったものに裏打ちされた「しっかりしたストーリーで、しかもドラマがあるという、最も藤沢周平らしい作品群である。自然描写や人物の作り方も、本当に職人芸の素晴らしさを感じることができた。(「玄鳥」藤沢周平、文春文庫)
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龍を見た男 藤沢周平
細切れの電車による移動時間がありそうな時は、読み慣れた信頼の置ける作者の短編集を持って行くのが良いと考え、藤沢周平の本を2冊選んだ。思惑通り、どちらの本もとても楽しく読むことができた。本書は、市井の人々の暮らしの中での出来事を扱っているのだが、いずれの作品も、その出来事=事件が解決する前にやや唐突に話が終わってしまうという特徴を持っている。余韻を残して終わるとういうことかもしれないが、最初の1、2編は読後に「あれ?ここで終わり?」という訝しさが残った。しかし、読み進めていくうち、要するに、これらの作品は事件解決の第一歩を踏み出したところで終わっているが、解決の方向は既に見えている、ここまでくればあとは想像の通りということもあるし、当事者の気持ちがここまで固まれば、紆余曲折はあってもおそらく最後まで行き着くだろうということもある。その辺りの微妙なバランスが作者の力量なのだとつくづく思う。(「龍を見た男」藤沢周平、新潮文庫)
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