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夕萩心中 連城三紀彦
昨年読んだ文庫本のベスト1「戻り川心中」には、著者の代表作「花葬シリーズ」8編のうちの5編が収録されていた。本書は残りの3編が収録されている。もっと「花葬シリーズ」が読めるというそれだけでも大変嬉しい。また、本書には、著者の異色作「陽だまり課事件簿」という短編3作も収録されている。まず、「花葬シリーズ」3編の方は、読み終えて、やはり本シリーズがミステリーの傑作であることを再確認した。表面的な事件の表層、いろいろな周辺事情等から浮かび上がってくる思いがけない事実という重層構造が、まず読者を楽しませる。それだけでも面白いのだが、本シリーズの場合は、さらにその先に、思いもしなかった意外な別の真相が用意されている。いわば3層構造が本当に見事である。こうしたミステリーの中のミステリーという要素が、叙情的な文章で綴られている。一方、「陽だまり課事件簿」の方は著者の全く違う一面を見せられてややとまどうが、こちらはどことなくおかしくて気軽に楽しめる。しかし、そこで使われているトリックの質の高さには驚かされる。これらの作品を1冊の本にまとめた出版社の企画力に感謝したい。(「夕萩心中」連城三紀彦、光文社文庫)
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