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ポール・コムリー サイン NHL

NHLエドモントンオイラーズの元選手、ポール・コムリーのサイン。彼は、ほとんど知られていない無名の選手で、オイラーズで15試合NHLの試合に出た後、ラフプレーを原因とする脳しんとうで引退を余儀なくされた「悲劇」の選手である。現在NYアイランダースにマイク・コムリーというスター選手がいるが、彼はそのマイクのお兄さんである。NHLには、兄弟選手が多いということは以前書いた。兄弟選手の場合、兄が優秀なスター選手で、弟は鳴かず飛ばずというケースが圧倒的に多いが、コムリー兄弟の場合は、兄が早々に引退してしまったこともあり、弟の方がアスリートとしては成功している。もし、兄の方が引退せずに活躍していたらどんな選手になっていたかと考えると、少し残念な気もする。
 ところで、話のでた弟のマイク・コムリー選手は、毎年30ゴール、60ポイントくらいの成績をコンスタントにあげるスター選手であるが、彼がNHLデビューした当時を覚えているファンには今でも「ああ、あの選手ね」とピンと来る面白い事件があった。彼がNHLデビューして、RC、サイン、コレクティブルが製造されるようになった時、彼のそうしたグッズが、何故か非常に手に入りにくなったのである。通常、そうしたグッズの手に入りやすさは、その選手の成績に左右される。新人選手が大活躍すれば、関連グッズの値段が急騰し、手に入りにくくなる。逆に成績が落ちると、とたんに値段が下がり手に入りやすくなる。ところが彼の場合、デビュー後、まだ大して活躍もしていないのに、グッズの人気が急騰したのだ。2000~01年シーズンのことである。そのころの話では、彼の家が大変なお金持ちで、父親が息子のグッズを買い占めたために供給不足となって、値段が高騰したということだった。真偽のほどは明かでないが、彼の実家がカナダでも有数のお金持ちというのは事実らしい。彼の経歴を見ると必ず、家具メーカー「ブリックス」の創業者一族と紹介されている。「ブリックス」は、家具ばかりではなく電化製品なども扱うカナダ最大規模の小売店である。ちなみに、現在、彼のグッズは、彼の活躍にふさわしい程度の値段に落ち着いている。こうしたことを考えると、兄のポールの引退の悲劇は、悲劇ではなく、財閥の御曹司が趣味でホッケーをやっていたのだが、体をこわさないうちに大事をとって引退したという話に過ぎなかったのかもしれないと思う。
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青年のための読書クラブ 桜庭一樹

名作「赤朽葉家の伝説」と直木賞作品「私の男」の間に刊行された本書、系譜としては「赤朽葉家」に近いような作品だが、その2冊とはまた違った味を出しており、私としては、もしかしたら上記3冊の中で一番面白いようにも感じた。作風がライトノベルから急速にシリアスな方向に向かっているなかで、この辺りの位置づけの小説が、最も作者に合っているのかもしれない。内容は、不謹慎なくらいあけすけな内容や表現がさらりと明るく語られる不思議な雰囲気が本当に面白い。私小説を書く作家に対して「身を削って小説を書く」という表現があるが、この作者は、私小説とは無縁でありながら、ある意味全く別の意味でかなりのリスクを背負って作品を書いているという気がする。その覚悟と潔さが、本書では際だっており、それが読者を引きつける大きな要素になっていると思う。また、本書を読むと、何故、作者が小説という自己表現を選択して、そのリスクをとっているのかも良く判るような気がする。そして、これまで読んだ作者の作品すべてに言えるのだが、最後の締めくくりが実に良い。本書の最後の1ページも、少し照れくさい表現だが、読書礼賛、人間礼賛として、これまで読んだことのない万感迫る名文だと思う。(「青年のための読書クラブ」桜庭一樹、新潮社)
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