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グルメの嘘 友里征耶

誰もが日頃から感じているグルメ番組やグルメジャーナリズムの胡散臭さを明快に糾弾している本書は、読んでいて納得することばかりである。カード手数料の5%を顧客に転嫁するレストランの悪辣さ、予約受付時間を一方的に制限して飢餓感を煽る巧妙な手口等、まさに飲食業界の裏事情が満載で面白い。「普通の料理人ならばある程度の材料があればそこそこおいしい料理はできるはず」という著者の基本的な考えには大賛成だ。でも、著者のスノビッシュな人間に対する批判精神で貫かれているのは良いが、私のような「食べることは好きだがそれほどあまり味には拘らない」という程度の人間には、著者自身も結構スノビッシュな感じがする。それにしても、サービス業の原点を忘れ、客を叱りつける店主のいる店などは、本書の通り、やがては淘汰されてしまうのだろうが、それでも後から後からそうした店が再生産されてしまうのはなぜなのだろう。それをグルメジャーナリズムだけのせいにしてしまうのも酷なような気がする。(「グルメの嘘」友里征耶、新潮新書)
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