書評、その他
Future Watch 書評、その他
魚舟・獣舟 上田早夕里
短編5つと中編1つが収められている本書。ジャンルとしてはSF、しかも「異世界もの」ということになる。本書を強く推していた書評でも「SF」として括られていた。
収録作品のなかでは、何と言っても最初の短編(表題作)が頭抜けて素晴らしい。短い作品だが、何故このような独特の世界をイメージできるのか、作者の頭のなかを調べてみたくなるほど、奇妙な世界が構築されている。ただ、読み終わってから振り返ってみると、本書の世界は、ものすごく突飛な世界のようでいて、意外と現実の世界に近いところにあるように思えてくる。それは、本書の世界が教訓的なメタファだからということではなく、そのイメージがやけに生々しいからだと思う。ここまで読者のイメージの形成を助けてくれる文章は珍しい気がする。解説を読んだら、この「世界」をえがいた長編小説が企画されているらしい。この「世界」をこれだけで終わらせるのは、誰が考えても勿体ない。
もう1つ、最後の中編も大変良い。こちらは「魚舟…」とは逆に、あまり現実とかけ離れた世界ではなく、よくある「管理社会という現実に警鐘をを鳴らす」ような作品だが、その文体から、やはり作者独特の感性のようなものが伝わってきて読み応えがある。ただ、最後の方は、何か別の作品とのつながりを意識したせいらしいのだが、本書だけでは、どこに話が言ってしまったのか判りにくくなってしまっている。(「魚舟・獣舟」上田早夕里、光文社文庫)
収録作品のなかでは、何と言っても最初の短編(表題作)が頭抜けて素晴らしい。短い作品だが、何故このような独特の世界をイメージできるのか、作者の頭のなかを調べてみたくなるほど、奇妙な世界が構築されている。ただ、読み終わってから振り返ってみると、本書の世界は、ものすごく突飛な世界のようでいて、意外と現実の世界に近いところにあるように思えてくる。それは、本書の世界が教訓的なメタファだからということではなく、そのイメージがやけに生々しいからだと思う。ここまで読者のイメージの形成を助けてくれる文章は珍しい気がする。解説を読んだら、この「世界」をえがいた長編小説が企画されているらしい。この「世界」をこれだけで終わらせるのは、誰が考えても勿体ない。
もう1つ、最後の中編も大変良い。こちらは「魚舟…」とは逆に、あまり現実とかけ離れた世界ではなく、よくある「管理社会という現実に警鐘をを鳴らす」ような作品だが、その文体から、やはり作者独特の感性のようなものが伝わってきて読み応えがある。ただ、最後の方は、何か別の作品とのつながりを意識したせいらしいのだが、本書だけでは、どこに話が言ってしまったのか判りにくくなってしまっている。(「魚舟・獣舟」上田早夕里、光文社文庫)
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