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人質の朗読会 小川洋子

結末がどうなるかといったこととは関係なく、ひたすらこういう話を読んでいたいと思わせる小説だ。某国でのテロ事件に巻き込まれ、人質となった8人の日本人が、政府の強硬な突入により全員死亡。事件後に、人質になっている間にそれぞれが自分のことを語って聞かせたテープが発見された、というシチュエーションなのだが、実際、どうしてこのようなシチュエーションなのか、私には良く判らない。それでもそんなこととは関係なく、心にずしりと残る話ばかりだ。最後に突入した政府側の兵士の語りが収録されていて、書評あたりではその話が「愁眉」とされているのだが、私としては、それがそれほど他の話に比べて傑出しているとは思われなかった。人それぞれによって感じ方が違うと言ってしまえばそれまでだが、1つ1つの話の重さに圧倒されてしまい、順位をつけることなど出来なかったというのが正直な感想だ。(「人質の朗読会」 小川洋子、中央公論社)

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