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公安は誰をマークしているのか 大島真生

テーマも内容も新書らしい新書で、大変面白かった。様々な「公安」という名前のついた公的機関・部署のそれぞれの名前の由来が解説されており、そこには大きな2つの流れがあることなどがよく判った。また、記述の大半を占める各部署毎の仕事・役割・マークする対象なども、過去の事件の豊富な事例をベースに良く整理されているのが有難い。この本を読むと、警察組織にもいろいろ問題点があるのだろうが、やはりすごい専門集団というか職能組織であることが実感される。漠然と「公共の安寧を妨げる組織・個人から社会を守る」と言っても、実際にどのように人員を整備してそれをどのように機能的に動かすのか、その背景にはものすごい量の経験に基づくノウハウがあるのだろう。本書は「公安」というものについて中立的に記述されており、書かれた意図はそこにはないのかもしれないが、過去の事実の記載の積み重ねを読んでいくうちに、そうしたノウハウがあってこその「安寧」なのだとつくづく思わされる。事実の解説に関しては非常に親切な本だが、かといってそれをどう受け止めるかという点については押し付けがましくなく、親切すぎることもない。これがこうしたワンテーマの啓蒙的な新書の「新書らしい新書」の条件の1つだと思う。(「公安は誰をマークしているのか」 大島真生、新潮新書)

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