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フェルメール 静けさの謎を解く 藤田令伊

世界中で人気の高いフェルメールが「静謐の画家」と言われる理由を、感覚的・情緒的な面からではなく、理知的・分析的に迫る本書。著者自身が語るように、かなりニッチなテーマ設定でありながら、色・構図・素材などフェルメールに対する非常に多面的な画家論になっているのは、テーマ設定が適切だったことと著者の努力の成果ということになるだろう。特に、フェルメールにとって「静謐さの追求」と「物語性の排除」が同じ芸術家としての動機から意図的になされたという指摘は、これからのフェルメールを見る目に大きな影響を与える指摘ではないかと感じる。また、フェルメールが生きた時代が「マウンダー極小期」と呼ばれる地球寒冷期だったことが、フェルメールの大きな特徴である「淡い光と霞がかった表現」を生み出したのではないかという仮説も、本書の多面的な分析の真骨頂をを見るようで大変面白かった。(「フェルメール 静けさの謎を解く」 藤田令伊、集英社新書)

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