goo

約束の森 沢木冬吾

本書も色々話題になっている作品だ。単行本で刊行された時はさほど話題になったようでもないが、おそらく文庫化をきっかけに話題になっているということなのだろう。内容的には完全なハードボイルド作品で、警察特殊部隊と闇の組織の手に汗握る攻防に終始しているのだが、終盤になるまで、誰が味方で誰が的なのか、どちらが善でどちらが悪なのか、さっぱり判らない。見方によっては最後までどちらが善でどちらが悪なのか判然としないまま終わる。そうした全篇を貫く緊張感のあるサスペンスのなかで、主人公の1人と1匹の犬、もう1人の主人公とオウム、3人の主人公、主人公達と老人2人など、様々な心の温まる交流がちりばめられていて、それがまた面白い。硬軟がうまく融合した記憶に残る1冊だ。(「約束の森」 沢木冬吾、角川文庫)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )