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億男 川村元気

今年の本屋大賞にノミネートされた1冊で、話題になった処女作「世界から猫が消えたなら」の後の第2作目。作者は、もともとは小説家ではなく、映画のプロデューサーとしては新人どころかすでに有名な大物プロデューサーらしい。手がけた映画のタイトルをみると、小説やマンガを映画化した作品がずらりと並んでいて、知っているタイトルばかりなので驚いてしまった。放送作家の小説など、ジャンルを超えた作り手による小説が流行っているように思うが、そうした作家で好きになれる作家はそんなには多くない。実際、作者の「世界から…」も、世間で話題になるほどには心に響かなかった気がする。そういうことでややハードルの高い心理で本書を読み始めた。読み終えた感想としては、こうした本は小説としてではなくノウハウ本として読んだ方がよいのではないかということだ。確かに小説仕立てにはなっているが、内容はいろいろ書かれているノウハウ本のようなものを、1つの寓話のように小説仕立てにしているように思える。しかもそのノウハウもかなり直接的で、判りやすいと言えば判りやすいのだが、どうも普通の小説を読んでいるという感じではない。良い悪いの話ではないし、話自体も面白く、読んで良かったという気分にしてくれるのだが、こうした本を小説と呼ぶのはやはり抵抗を感じる。作者にとっても読者にとってもジャンルなどどうでもよい話なのかもしれないが、ある意味これこそ新しいジャンルの本なのかと思う。(「億男」 川村元気、マガジンハウス)

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