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世界最強の女帝メルケルの謎 佐藤伸行
最近、ドイツに関する書籍が一種のブームになっているようだ。EU加盟国の財政危機、ロシアとの新たな冷戦状態の現出、中東からEUになだれ込む多くの難民の問題など、EUが抱える問題を考えるにあたって、ドイツがそのカギを握っているということなのだろう。また、最近、日本に対するドイツ人のイメージが変わってきているというが、逆にドイツに対する日本人のイメージも少しずつ変わってきているようだ。そうしたなかで、そのドイツの首相であるメルケル女史について、どういう人物なのか、私自身ほとんど何も知らない。東ドイツ出身、風貌が特に目立つわけでもなく、政治家になる前は物理学者だったという彼女、何故彼女のような人物がEUの頂点に立って、一挙手一投足が注目される存在にのし上がったのか、考えてみれば大変不思議なことだ。本書は、そのあたりを判りやすく解説してくれている。一言でいえば、頭脳明晰、語学堪能ということなのだが、特に危機察知能力が優れていることや、語学の中でもロシア語が特に堪能だというところにその秘密があるようだ。そうした彼女がのし上がっていくなかで、彼女を引き立ててくれた恩人が次々と失脚するというめぐり合わせ、それ自体は彼女に責任はないようなのだが、別の不思議さも見えてくる。本書の後半は、メルケル首相の中国・アメリカ・ロシアに対する外交スタンスが語られているが、プーチンの嫌がらせなど何とも大人げない話ばかりであきれてしまう。著者には、次に、本書と同様の視点でメルケルと日本の関係に焦点を当てた1冊を書いてほしいと思った。(「世界最強の女帝メルケルの謎」 佐藤伸行、文春新書)
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