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21世紀ミャンマー作品集 南田みどり編訳

なかなか読めないアジアの小説集。以前同じ出版社のシリーズで「ミャンマー」の短編小説はいくつか読んだことがあるが、今回は題名に「21世紀」という形容詞がついていて、本書に収録された作品群が、非常に新しい小説であることを示している。これまでに読んだいくつかの作品が、軍事政権下、アメリカなどの経済制裁で経済が停滞していた頃の作品だったのに比べて、最近の作品ということは、近年のミャンマーにおける民主化や経済自由化が何らかの形で小説に投影されているのではないか、実社会の大きな変化が小説というものにどのように投影されているのか、読むにあたっては、そのあたりに非常に興味があった。読んでみて感じたことは、新し時代の到来を強く意識して書かれたような作品やそれを読者に感じさせるような特別の作品には出会えなかったということだ。21世紀と言っても、民政への移行はつい最近のことなので、こちらが期待し過ぎたということかもしれないが、別の意味で感心してしまった。それは、どちらかというとおとなしく静かな作品が並んでいるところに、文学シーンの成熟のようなものを感じることができたし、文学としての若さのようなものも感じることができたということだ。前に読んだ短編集に比べて、バラエテイが格段に高まっている気がするし、ここに収められた社会問題の告発とか政治的な意図のようなものを含まない、市井の人々の生活を切り取ったような作品には清々しさを感じる。本書の中の一編だげ、SF仕立ての環境問題をベースにしたような不思議な作品があり、これが唯一社会派の萌芽を感じさせて興味深かった。(「21世紀ミャンマー作品集」 南田みどり編訳、大同生命国際文化基金)

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