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センター18 ウイリアム・ピーター・ブラッティ

最初に物語が展開する場所と登場人物の大よその人となりが説明されたかと思うと、その後は延々と登場人物同士の不思議なやり取りが進む。「精神疾患を装っているかもしれない集団」という設定なので、それが本当に「装っている」のかそれとも本当に「病んでいる」のか、どちらであるという決定的な証拠を見いだせないまま話は終わってしまう。結局どっちだったんだろうとか、この話の終わり方にはどういう意味があるんだろうなど、自分にとっては様々な謎が完全に未解決のままになってしまった。巻末の解説に、「ミステリーとは極北にある作品」とあるが、まさにその通りだ。ミステリーとは、物語の全体像を自分で構築してそれを把握すること、何がどうしたのかを補ったり推理することなど、本来読み手が行うことを全て作者なり登場人物にやらせてしまっているという意味で、非常に怠惰な読書習慣をつけてしまうものだという。この論理で行くと、何だかミステリーばかり読んでいると読書力が低下してしまうというようなことになるが、ある意味本当にその通りだなあと思ってしまった。(「センター18」 ウイリアム・ピーター・ブラッティ、東京創元社)

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