見えないアメリカ 渡辺将人

最初の章で、アメリカの「保守」と「リベラル」との違いは、政治信条や政策の違いだけでなく、「ライフスタイル」の違いでもあるのだということが書かれており、まずは「目からうろこ」だ。さらに、そうした「保守」と「リベラル」という区分けをした場合、ある意味でアメリカの深層が「見えなくなる」という見方が述べられており、本書ではその「見えなくなってしまったアメリカ」の断片が詳しく書かれている。アメリカでスタッフとして選挙運動を実際に経験した著者ならではの話ばかりで面白い。なんとなく理解していた「ポリティカル・インコレクト」「ポピュリズム」といった用語に対する理解も格段に深まった気がする。随所に映画やＴＶドラマから垣間見られるアメリカの断片が解説されており、それもこの映画にはこんな背景があったのかと驚くことが多かった。（「見えないアメリカ」渡辺将人、講談社新書）

喫茶店タレーランの事件簿４ 岡崎琢磨

シリーズ4作目。前作の感想で、「扱われた事件・出来事が小さすぎてやや残念、次作はもう少しドラマティックな内容・展開を期待したい」と書いた記憶があるが、本書はそのような残念な感じは全くしなかった。前作は長編だったが今回はまた短編集に戻っていた。前作と今回の作品で扱っている事件の大きさが違うということではないので、要は事件の大きさどうこうというよりも、単に前の作品が長編としてドラマチックさが足りなかったということだけのことだったようだ。本書は、主人公２人以外の色々な登場人物の視点で書かれた作品が並んでおり、そうした工夫もかなり新鮮で面白かった。シリーズ物において、読者を飽きさせない工夫が色々なされるなか、前作の「長編」というのもそうした工夫の１つだったのだろう。自分としては、元のように短編集に戻ってくれて嬉しいし、また次も読もうという気にさせられた。（「喫茶店タレーランの事件簿４」　岡崎琢磨、宝島文庫）