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ゴジラとエヴァンゲリオン 長山靖生

本書は、大変ユニークな本だ。ゴジラとエヴァンゲリオンという戦後日本のサブカルチャーの両横綱ともいうべきキャラクターと作品の来歴やあらすじについて考察しながら、当時の日本の文化的傾向や文化史を論じている。いずれの作品も最終決戦の舞台が日本であることについて、歴史的になかった太平洋戦争の「本土決戦」の擬似体験であるという指摘は、やや唐突ながら、もしかしたらそうかもしれないというそれなりの説得力を持っているように思われる。そうした考察の是非を抜きにしても、ゴジラがどんどん子ども向けに変質していった経緯、エヴァンゲリオンの最終話のドタバタに隠された製作者サイドの事情などは、普通の薀蓄としても十分楽しい。(「ゴジラとエヴァンゲリオン」 長山靖生、新潮新書)

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万能鑑定士Qの最終巻 松岡圭祐

著者の本が角川文庫ではなく講談社文庫から刊行されるようになってしばらく経つが、「万能鑑定士Q」シリーズの最新刊が講談社文庫から出ていたのでびっくりした。シリーズによって出版社を変えているのかと思ったらそうではないらしい。出版社と著者の間に何があったのかはうかがいしれないが、刊行すれば大きな部数が確実に期待できる超人気作家だけに、何があったのか少し心配になる。読者にとってはどこの出版社から刊行されようと通常は大きな問題はないが、著者の場合は、出版社が変わったのとほぼ時期を同じくして、少し作風が変わってきている感じがする。本書もそうだし、講談社文庫から刊行が開始された「探偵の探偵」「水鏡推理」シリーズなどもそうだが、文章がこれまでの軽い感じのものから少し重厚なものになっている気がする。作者自身の変化なのか、担当者が変わったことによる変化なのか、題材の違いから作者があえてそうしている変化なのか、真相はよく判らないが、個人的には以前のような軽い文章の方がいかにも作者の本を読んでいる感じがして懐かしく思える。いずれにしても、ずっと読み続けてきたシリーズの最終話ということだが、話の内容は予定調和的でまあそんなところだろうなという感じで、それよりも本書が前の出版社へのお別れの一冊という要素もあるような気がして、読んでいてそちらの方が気になってしまった。(「万能鑑定士Qの最終巻」 松岡圭祐、講談社文庫)

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家裁調査官は見た 村尾泰弘

題名をみると、家裁調査官という職業についての解説書のようだが、実際に読んでみると、体系的な知識を得るための解説書というよりは、著者がその職業を通じて出会った人達の抱える問題点に焦点を当てながら、現代の社会の歪みや現代人の精神病理を綴ったエッセイ集に近い内容の一冊だった。あまり表舞台に登場しない地味な印象の職業だが、その人達が現代社会に必要不可欠な重要な役割を担っていること、世の中にはそうした重要な仕事が色々あるんだろうなぁと気がつかされる。(「家裁調査官は見た」 村尾泰弘、新潮新書)

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資金ゼロ経験ゼロからの自販機ビジネス 松岡祥一

激安自販機ビジネスという聞き慣れないビジネスを一人で立ち上げ、大きく成長させたという著者による、自らのビジネスの遍歴と自販機ビジネスに関する諸事情が書かれた本書。一般的な起業ストーリーとしても面白いし、自販機ビジネスに関する解説書、起業のための指南書としても面白く読める内容だ。読んでいて驚かされるのは、起業ストーリーの中の自己分析の確かさで、明快な文章そのものから著者自身の頭脳の明晰さが強く感じられた。一方、自販機ビジネスの解説書の部分も、同ビジネスの特殊性と業界のしきたりを逆手に取るような発想の記述がとても面白い。一見ニッチのように思えるビジネスでも、その市場が大きければニッチ市場の可能性も大きいということが良く分かる。これは他の分野についても言えることだろう。本書を読んでいると、競争相手を増やすようなことまで書いてしまってこれで良いのかと思う部分も多いのだが、著者のビジネスモデルは、競争相手が増えて損をする要素をある一方、別のところでしっかり利益をあげることができるようになっており、その点にも感心させられてしまった。ある意味で、そういうビジネスモデルを確立している著者にしか書けない稀有なすごい一冊だと感じた。(「資金ゼロ経験ゼロからの自販機ビジネス」  松岡祥一、ポプラ新書)

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