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メコン・黄金水道をゆく 椎名誠
少し前に著者の「ミャンマー」本を読んだばかりだが、本書はそのミャンマー本が書かれた2年後に刊行された東南アジア本だ。2年後といっても刊行されたのは10年近く前だし、書かれた題材になった旅行はさらにそれよりも5年くらい前のことらしい。従ってここに書かれているのは今から15年程前のアジアだ。訪問地はラオス、カンボジア、ベトナムというメコン川流域の3か国。アジアのなかでも経済発展著しく変化の激しい地域なので、そんな前の本だと随分陳腐化してしまっているのではないかと心配したが、それは全くの杞憂だった。おそらくその3か国でも、都市部の記述であれば数年で陳腐化してしまうのだろうが、この本に書かれているのはそうした都市の発展などとはかけ離れた地方、日本から行くだけで3日もかかるといったような地域の旅行記だ。そうした地域の様子が数年で変わってしまうはずはないという安心感もあって、全く古臭さを感じることなく読むことができた。でも、よく考えるとそうした地域には経済の発展とかがあまり及んでいないだろいうというのはこちらの勝手な思い込みで、実際にはそうした地域の方が本当の意味で色々急速な変化をとげているのかもしれな。そうだとすればまた逆にこうした昔のその地域の状況を綴った文章はそれはそれで貴重なものとなる。リスクを冒して書いた本というのは、どっちにころんでもその希少価値ゆえに価値を失わないということなのだろう。(「メコン・黄金水道をゆく」 椎名誠、集英社文庫)
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