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相続レストラン 城山真一
元芸妓のオーナー、行政書士のシェフ、税理士のウェイター、元刑事の片付け係という「相続のお悩み無料相談」を売り物にする風変わりなレストランに持ち込まれたある男性の相続問題を、レストランの面々がそれぞれの知識と特技を発揮して円満解決をもたらすというお話だ。最初は、男性の死因がかなり特殊だったことを除くと比較的単純な案件と思われたが、隠れ借金や隠し子の存在の発覚など次々と不測の事態が発生し、どんどん混迷度を増していく。更に各相続人にもそれぞれの金銭的状況や秘めた想いがあり、主人公のウェイター達はそうした関係者全員の思いを満たしかつ合理的という解決方法を模索する。ものすごく強欲な人、悪意のある人、感情的になってしまう人をあえて登場させないという設定のおかげで、焦点がどういう選択が合理的かというあくまで相続関連の手続きや法規の知識が中心になるというのが本書の良いところだと感じた。(「相続レストラン」 城山真一、角川文庫)
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宙ごはん 町田その子
叔母に育てられた主人公が実母と暮らすことになったことをきっかけとして、新しい家族や学校の友人達の個々の思いと現実との軋轢を様々な形で見聞きしながら、自分を見つめ成長していく物語。「男だから」「女だから」「長女だから」という考え方に縛られてきた前世代の苦しみや秘めた思いを知るにつれて、新しい形の「家族だから」を模索する主人公は、様々な個々人の属性から解き放たれたとしても、時間や空間を共有した「家族」という属性は残るという考えに至る。その空間と時間を共有したという記憶をつなぎとめるのが、食べた料理でありそれを作った人の思いだ。最後の章で明かされる主人公の決断がそれを如実に語っている。(「宙ごはん」 町田その子、小学館)
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