男装の麗人 川島芳子
清朝王族、シュク親王の娘に生まれたケンキは6歳の時に
日本人・川島浪速の養女になり日本に渡る。
16歳の時、養父に暴行されたのが原因で髪を切って男装
清朝復璧の為に関東軍とつるむが、いつしか邪魔な存在に。
戦後、漢奸として処刑される。
大変よく出来た脚本
とにかく時間を忘れて一気に見てしまったわけです
今までこの手のドラマは嫌という程みてきたのですが、どれもこれも
「?」が多くて・・・・
(皇弟なんて散々でした。沢口靖子の「李香蘭」はかなり
いい作品ででしたが川島芳子が山田邦子だったっ)
今回は「男装の麗人」という実在の小説を書いた作家をストーリーテラー
にして原作を重要視し、そこに多少のフィクションを加えて出来たもの。
(村松友規作)
小説はあくまで小説なので事実とは程遠い部分があり、そう言う部分も
含めてドラマとしては多分今年一番の出来だと思います
こういう歴史を扱ったドラマ、特に日中戦争を扱う場合、脚本家の思想に
よって右寄りだったり左よりだったりします。
テレビ朝日だから当然「悪いのは日本」って事になるわけですが、そこらへんが
あまり悪意を持って描かれなかった事が幸いでした。
また、日中戦争に向かっていく日本の姿が非常にわかりやすく
描かれており、初心者にも何故に川島芳子という人が失脚に向って
生きて行ったのかわかります
そもそも「川島芳子」という人物はとってもわかりにくい人物で、まっとうに
描こうと思うとかなり難しいのですが、
「親に捨てられ養父に裏切られ、トラウマを持ちつつアイデンティティを
探し続けた女性」という事1本で通した為、よかったのだと思います
「僕は誰だ?」何度も自分に問う芳子の姿がとても可哀想でした
前半から中盤に至るまでの芳子があまりにも颯爽としているので
ラストの「生」にしがみつく芳子を理解できない向きもあると思います。
確かにここは違和感があるなーーと
(かっこいい芳子には最後まで誇り高く死んで欲しい・・・というのは
多くの視聴者の願望ですが)
しかしながら「死にたくない」とベッドの上で震える芳子こそが人間らしい
姿で、だからこそ親しみが持てるとも言えます
どんなに颯爽と強がってはいても、本当はかよわい「女性」でしかなかった
と・・・歴史に翻弄された彼女の運命の悲しさが感じられました。
ベストキャスティング
とにかく近年まれに見るベストキャスティングでした
黒木メイサ・・・元々中世的な容姿を持っているし細いし、男装が
めちゃくちゃ似合う。それでいてチャイナドレスを着ると色っぽい女性に
変身していく 男言葉も全然違和感なし。本当に大した女優です
多分、将来大女優になっていくのかも
今まで何人もの女優が川島を演じてきましたが、軍服や背広が似合わない
言葉が合わない等でペケばかり
今回、肩パッドの入り方等は宝塚的でかなり体型が補正され、よりかっこよく
見えたのかなと思いました。
真矢みき・・・もうね・・こんなかっこいいみきちゃんは久しぶりっ
彼女が「僕」って言う度「かっこいい」
出来れば最後だけじゃなく、関東軍に入るあたりからチェンジして欲しかった。
作家に語る芳子が真矢さんじゃ何でダメだったの?
宝塚時代を知らないファンでも、この真矢さんをみたら絶対「素敵」って
言う筈。
彼女が演じたラストの芳子は正直かっこよくはないです。
死にたくないってうろたえ、泣き、喚いて、おまけに幻想まで見ちゃう・・・
それなのにどうしてこんなに素敵なんだろう と、思ってしまいました。
特に日本からの戸籍謄本が全然変更されていない事に絶望する姿は
見てて悲しかったし、死刑場に引っ張られていく姿も痛々しくて。
平幹二郎・・・川島浪速。昔からこういう役は平さんしかいないっ
というくらいハマっておりましたーーー
中村雅俊・・・作家の役。男性としてのフェロモンは感じなかったけど、いかにも
「作家」という感じでこれまた素敵でした。
仲村トオルは勿体ない使い方。堀北真希は吹き替えで歌ってたの?
星野真理の婉容は論外。団次朗のシュク親王は中国人に見えない。
(あれじゃ絶対ロシア人だってば)
史実は・・・・
かなり「川島芳子」という人物を美化して描いているので 、本当の彼女は
どうだったのか・・・・という部分に興味があると思います。
実際、あんなに清廉潔白な女性だったら関東軍に邪魔にもされなかったと
思うしね
私は上坂冬子の「男装の麗人・川島芳子伝」や川島の妹が書いた手記などを
読みました。
ドラマには描かれていませんが、川島芳子は性格破綻者であったらしいです。
後年は妹さんも彼女に苦労させられたと
しかもアヘン中毒で。そうそう川島芳子といえば必ず肩に猿が乗ってる筈
人間不信だった彼女は猿を可愛がっていたんですね
なぜ彼女が川島浪速の養女になったのか・・・・母親が日本人だったという
説もありますが、実の父親が「玩具を提供する」ってそれはないよね。
あの当時の男尊女卑ぶりがよくわかるというものです
入籍しなかったのは「義兄弟の契り」を結んだに違いなかったからでしょうが
廉子は入籍されたという事を考えると・・・あまり可哀想です。
ドラマ後半、一生懸命金策に追われる芳子が出てきますが、あれは説明が
ないとわかりませんよね。
関東軍に命を狙われ、後ろ盾を失った芳子はお金に不自由していたんです
親族も無心されて困っていたし。
そんな彼女が「生きている」という説が朝日新聞に出てましたし、テレビでも
見ました。
芳子は身代わりを立てられて、逃亡後、元関東軍の兵士と結婚し
娘を産んだと。その娘さん・・・やっぱり似ているような気がしますし。
そうであったらいいなーーと思いますが、あの当時、アヘン中毒で回りに
迷惑ばかりかけていた彼女を本気で救おうという人がいたのでしょうか。
考えてみれば愛新覚羅家の人はみんな生き残ったのに、芳子
だけが処刑されたというのは不思議な話です。
漢奸罪とはいっても王女様なわけだし、溥儀も溥傑も生きてるし。
裁判も小説を証拠として提出するなんて普通じゃありえないし。
だからやっぱり、どこかで生きていた・・・と思いたいですね。
清朝の王女として生まれながら物心ついたら日本人にされて、
誰も本当に芳子の事を考えてくれる人がいなかった不幸。
「僕は誰だ?」と思いながらアヘンの夢に酔っていたのかと思うと
本当に可哀想。
もう一人の山口淑子の場合は、両親や友人が必死になって救ってくれた
わけですけどね。対比すると本当に・・・・
史実に興味のある方は
劇団四季「李香蘭」などを見るのもいいでしょうねーー