素人が座付作家に駄目出しするなんて生意気だよなーー
そうは思う・・・悔しかったら書いてみろ、上演してみろってんだ と、言われたら
一言も言い返せませんし でもね、素人だからこそ「プロとしてチケット売って上演
しているのにこういう作品でいいわけ?」という考えもあるのです
素人とはいっても・・・一応・・勉強中だし?
他人の脚本を読む事によって自分を振り返る事も出来る。
「こんな風にはならないぞ」みたいな?
という事で始めましょう。
舞台の脚本、とりわけ宝塚の脚本とは
小説には台詞の他に場面を表現する文章があり、読み手は想像を膨らませてその場面
を理解します。でも脚本は台詞とト書きしかないので、観客に「想像」させられない。
目に見せなくてはなりません
しかも舞台という制約があり、表現方法には「限り」があります
宝塚の劇場は幅も奥行きもあり、尚且つセリが5個くらい?銀橋もあります。
他の舞台と違って「銀橋」をいつどういう形で有効に使うか・・という事も求められます。
また、舞台装置も他の舞台と違って宝塚の場合はゴージャス感、リアル感が求め
られます。
そういう意味で、今回の「バラの国の王子」は簡易的なセットを雑に使用したと
言えるのではないでしょうか?
よい舞台というのは場割りを最低限に抑えて、台詞をしっかり聞かせる舞台と
言われますが、そういう意味でも今回は21場もあって多すぎ。これを場をまとめる事で
半分くらいに抑えられたのではないかと思います。
やたら観客に想像させる
例1 国民達 「妹君は お酒や 賭け事や さまざまな楽しみを
教え込みました」 (実際にそんな場面はなく銀橋を渡るだけ)
例2)家臣たち 私達もまた鳥やけものに変えられてしまいました
(衣装が変わらず城の上にいる人たちが被り物を持つだけ)
例3) 商人 「そうだ・・嵐の中をさまよい、私はこの屋敷にたどりついた。扉は
開いており、人を呼びながら入ると、居間のテーブルにはご馳走が
並べられていた。呼んでも答える人はいない。
我慢できず食べてしまった。
食べたいだけ食べると、今度はベッドをみつけた。たまらず倒れこみ、
朝になると・・・」
(ここは台詞と言うより小説のよう。小さな舞台ならともかく宝塚でこの場面が
丸々台詞だけというのは手抜きに他なりません)
他にも長女や次女が財宝に驚くシーンなども台詞だけで表現されています。物足りない
というか、目に見せてくれてもいいのにと思いました。
台詞は登場人物の立場・性格を表すもの
タイトル通り、台詞は登場人物の立場や性格を表現し、尚且つ個性を見せるもの。
この物語には王・王妃・国民・臣下・庶民・・・が登場するのですがきちんと台詞で
地位の使い分けをしていたでしょうか?
野獣の台詞がやたら丁寧でベルに対して尊敬語を使っている。最も身分が高い
という感じがしない。
例) 野獣 「私を愛して下さいますか」
→ 身分的に最も高い野獣がベルに対して尊敬語を使うのはおかしい。
この場合は「私を愛してくれるか」
尊敬語と謙譲語の使い分けが出来ていない
例) 国民達 「お二人にはみめうるわしい王子さまがおりました」
→ 「おりました」は目下に使う表現。国民から見ると王様達は目上。
この場合、「いらっしゃいました」または「いました」
例) ベル 「ここにおられるお父様のお世話がまだまだしとうございます」
→ 王様に対して自分の父親に尊敬語を使うのはおかしい。
「ここにおります父の」が正しい。
言葉の間違いに気をつけよう。
一番やってはいけないこと。それは語句の使い方を間違える事です。
キムシンの芝居にはこれが多すぎます。
また重複も多くしつこい。
仙女 → 西洋の話ですから「魔女」
王様 「持参金は後ほど届ける」 → 「持参金」とは嫁入りする側が用意する物。
「支度金」でしょうね。
ベル 「私は浅はかなだけ 野獣に食べられてもっともなほど」
→ ベルは人が言う程自分が親孝行でもけなげな娘ではないと思っているのです。
「浅はか」は軽はずみという意味ですね。この場合は「偽善者なだけ」が
妥当でしょう。
ベル 「家臣の人たちもいい人ばかり」 → 「家臣」を持つのは王様か城主。
ベルは野獣が王様か城主である事を知らないのでこの場合は「召使」が
適当かと。
台詞と台詞の間に整合性がない
キムシンの台詞の特徴の一つに「問い」に対する「答え」になっていないというのが
あります。
例 ) 野獣 「私はあなたを飢えと寒さから救った。それなのにあなたは、美しく
咲いたバラを折ってしまった」
商人 「大切なバラだったのですか」
野獣 「どんなバラも、分け隔てなく貴い。折ってしまえば、枯れるしかなくなる」
→ ね?問いに対する答えになってない。
商人 「大切なバラだったのですか」
野獣 「そうだ」あるいは「命と同じくらいに」が妥当。
舞台の大きさと人数に合った作品を作ろう
脚本家が脚本を書く時、真っ先に考えるのは「箱の大きさ」「人数はどれだけ可能か」
「予算に見合っているか」です。
今回は「箱の大きさ」に見合った人数を動かしているとは思えません。
アンサンブルが多すぎて個性がない → 半分の人数にする
簡易的なセットなので舞台が広すぎて見える → 屋敷内をもっと見せる
では、次回から具体的に脚本を書き直して見ましょう。