土曜日の貸し切りを見て来ました。
久しぶりの日比谷で、真昼間からお食事して、キャトルでお買い物は相変わらず。
でも今回は宝塚のOGさん達が出しているお店でお洋服を試着。
前週に姫ちゃんが「これがママンに似合いそう」とか言ってて、え~~買わないよ。って言ってたのに。またも散財。一年に一度の事とはいえ。
姫ちゃんは「爽快感がある」って言ってたけど、主婦はね、そうはいかないんだよ。
でも皆さま、本当に営業上手っ!確かに今年は服買ってないしなあ。
ものすごくシャンテが混んで来たので、飲み物買って外に出たらクリスマスツリーに大道芸人。あらら、ここはもしかしてパリの街?という雰囲気になっていました。
フリューゲル 君がくれた翼
パンフレットをさらさら見てた姫ちゃんに「どんな話?」って聞いたら「わかんない」というので、私が引き取り熟読。で、姫に「どんな話?」と聞かれたので
「斎藤吉正版国境のない地図」と答えました。
そしたら本当にそうだった
いや、作った人、そこまで意識があったかはわかりません。
なんせ彼がインスパイアされたのは別な漫画だったし。
でもね。
「国境のない地図」
・ベルリンの壁の出現で母と生き別れて西ドイツに残って、世界的なピアニスト、作曲家になったヘルマンが東ドイツの女性と恋に落ち、やがてベルリンの壁崩壊。母と再会
「フリューゲル君がくれた翼」
・母がナチスドイツに関わっていてナチス狩りに捕まり、ヨナスは東ドイツの叔父夫婦に引き取られ、東ドイツの軍人に。そこに西ドイツから世界的なシンガーがやってきて、二人は何となく近寄り、やがてベルリンの壁崩壊。母と再会。
あらら・・・「国境のない地図」はこれが平成の話かと驚くほど古かったけど、今回はこれが平成の話かと驚くほど軽かったって感じです。
二つの話に共通して出てくるのは「菩提樹」「ベルリンの壁」「第九」です。
比較すべきではないけど、演出力は植田先生にはかなわないよなと思いました。
特に第九から先っていうのは、もう圧巻です。見た事ない人はぜひスカステで見て欲しいです。
さて、話を「フリューゲル」に戻し、主人公ヨナスと母が好きだった曲。
これを聞いた時、なぜか「ジャガービート」が浮かんできて、「似てる。旋律が似てるっ!」って感じたのは私だけだったでしょうか。
ナチス狩り・・・というのは、戦後、方々に逃げたナチスに関わった人を捕まえて回る人達の事で、実は2023年にも100歳を超えた元ナチスが捕まっています。
個人的には「何もそこまでしなくても」って思ったけど、ドイツにとって「ナチス狩り」というのは、国家存続に関わらるくらい大事な事なんだろうと思いました。
また、平成生まれには絶対にわからない「東西冷戦」の怖さ。
何度も書きますが、私達が小さかった頃は、ソ連に関わっている国々の情報はほとんど入って来なかったし、たまに入って来るのはスパイの事、それから物資不足、パン屋に並ぶ行列。コマネチの複雑な背景等々。
当時はまだ中国が弱い立場でソ連の影響が大きく、言論弾圧、暗殺などが多く、お花畑の日本人でさえ「共産主義は怖い」し、それが日本各地の左翼運動にさらに影響を与えてテロが起きたりしていたから、軽々に語るもんじゃないと思っていました。
友人は「共産主義は平等」とよく言ってました。
資本主義は悪しきもので、格差を生んでいる。確かにそうなのかもしれないけど、でもいつも監視されて生活するなんて嫌だよね~~的な。
所が、この物語では若い人達への理解を促すつもりなのか、「東ドイツ」の恐ろしさを感じさせない体になっていたんです。
盗聴器を面白がったり、西のビールが出てきたり、こっそり東の人達が西のテレビを見ていたり。まして上層部まで西に毒されていて、シタージだけが怖い存在。
対立の構図があるようでない話になっていたんですね。
だから、どこか緩くて、どこか甘くて、「国境」で感じたような恐ろしさはなかったです。
風間柚乃が演じていたNATOは現在、ゼレンスキー大統領が入りたがっているところで、冷戦の頃はNATO VS KGBだったけど、壁崩壊で存在感なくなった?と思っていたら、やっぱりロシアの台頭で必要な組織である事がわかりました。
でもまあ、全体的にコメディで面白くて、泣かせるところも十分あって、秀作でした。ただ「第九」の所では御免、笑ったけど。だって~~~ついつい真織さんが浮かんで来ちゃったじゃん。
恋愛物でもなく、仲がすごく悪かった二人がほんの少し近づいてお友達になった・・ぐらいの距離感が月城かなどと海乃美月にはよく似合うんだな。
ただ鳳月杏が演じたシタージが中途半端で悪役になりきれてなかったなと。
もうちょっと善悪の対立がはっきりしてると緊張感があったてよかったかもしれませんね。
万華鏡百景色
新人演出家の粟田優香氏の大劇場デビュー作品。
新人にしては予算の付け方が膨大で、特に衣装のすごさが目立ちました。
平成生まれの姫には、江戸時代から令和までの時代の変遷に心を打たれたようで、「面白かった」といい「でも令和って夢も希望もない、モノクロの世界なんだって事が共感出来た」そうです。
評判の上々、デビュー作品としては大成功だと思う。
思うけれど、私は正直・・・・です。
頑張ったのは衣装の加藤さんと音楽の斉藤恒芳で、演出家の彼女がどんなこだわりをもって作ったか不明で、よくわからない作品になりました。
確かに、1場の鳳月杏演じる付喪神集団と、少女が持つ万華鏡。これをあえて「ばんかきょう」と読み、これには強い思いが宿っていて、持つ人を選ぶと言われる。
そこから花火師と花魁の道ならぬ恋が描かれて、万華鏡の意味がわかる。
ここまではいいのです。
しかし、ここからいきなり明治、大正、昭和、平成、令和となっていく中で、花火師と花魁の思いや、万華鏡と少女がどのように関わっていくのかが中々見えないんですね。
明治と言えば鹿鳴館
大正と言えばエログロナンセンスに芥川龍之介
昭和と言えば闇市
なんてあまりにも定番すぎないかと思うんですよ。
吉原は江戸時代から昭和にかけてどんな風に変化していったか。
そして花火師の思いは時代を越えてどのように変わっていったのか。
そして万華鏡はどういう世代に受け継がれていったのか。
そういう事をきちんと描いてこそ「ストーリー性のあるショー」なんですよ。
あまりにもステレオタイプに描いてもつまんないでしょ。
大事な要素に「恋」があります。
「恋」と言えば何なんだ?ってまず考えないと。
昭和も空襲警報が鳴っていきなり「りんごの唄」で闇市なんて・・・ちょっとちょっとさあ。闇市でパンパンの彼女とヤクザな彼氏が出会ったようには見えたけど、そこに恋はないわけで。
もし私だったら万華鏡をもう少し大きくして、明治・大正と子孫が受け継いでいって最終的に転生した二人が結ばれて万華鏡が本物の花火になるというような感じにするけどな。
特に満員電車なんていらなかったんじゃないのかと。
花火師と花魁という身分違い、立場の違いで結ばれなかった二人。
これは身分の違い、生まれの違い、財産のあるなし・・・色々あると思うんですね。
そこらへんを丁寧に拘って音楽なり、振付に生かして貰えたらよかったです。
一言でいうと、あまり知識がない人かな。粟田さん。可愛いけど。
でも今回の月組は今までで一番力が入っていたんじゃないかな。
休演があったりトラブルがあったりで、むしろ組の力が一つになったというか。
2階席にいたんですけど、中詰めに来た下級生の可愛いというか、一生懸命さに心は震えて、思わず手を振ってしまったくらいです。
下級生にとっては辛い日々だったかもしれませんが、乗り越えているなと思いました。っていうか、一生懸命に演じている人達の裏なんか見たくないわけ。
みてりゃわかる。仲のよさとか悪さとか。
だけどプロ意識で乗り越えているわけだしね。
出演者について
月城かなと・・・常に冷静沈着。これは何を演じても変わらない。そこをあえて東ドイツの軍人にしたのが成功。ゆえにちょっとはみ出すと「すごい」って思えるのね。
今回は役柄がよく似合って成功。ショーでも衣装に随分助けられたかなと。
海乃美月・・・やっぱり彼女は高ピーで気が強い役がぴったりなんだなと思いました。歌って踊っている時は相手役いらないもんね。花魁も美しかったな。
鳳月杏・・・芝居でのシタージはやりようがありましたか?何となく中途半端で怖さを見せつけられなかったんじゃないかと。出番もあまりないし。一方ショーでは付喪神の美しさに本当に圧倒されました。地獄変もよかったですよ。
風間柚乃・・・芝居では明るくNATOの軍人を演じ、ショーでは歌唱力を生かしていたけなと。ただ、優等生すぎる所は相変わらずかな。
蓮つかさ・・・芝居でもショーでも実力で見せて聞かせてくれました。特に収容所から助けて貰った件は本当に感動的で、滑舌の良さ、演技力の確かさが改めて感じられました。
私が宝塚のいやだなと思う所は、こういう実力派をあっさりと退団させてしまう所で、宮城県出身で菓匠三全がついてもいい程の実力なのに、そういう事に恵まれず、何で何でと思っていたけど、それでもめげずに、セリフと感情をしっかりと客席に届けてくれた事に感謝します。
「1789」新人公演のロベスピエールは最高でした。本役より存在感がありました。また「ALL FOR ONE」の新人公演も同じで、こんな風にセリフを言っていたのかと、ストーリーに納得したり、面白かった。
そして暁千星の「A-EN」で見せた二枚目と上級生ぶりが本当に微笑ましすぎて、二人の仲のよさが本当にわかったし、下級生を支える上級生としてなくてはならない存在なんだって確信いたしました。
東北出身者には音楽学校や関西のしきたりはどれ程馴染まなかった事か。それは数々の東北出身者を見て来たのでわかります。
だけど、ここまで成長してくれてあなたは宮城の誇りです。
ありがとう。今後、どのような活躍をされるかわからないけどそのセリフの確実さを生かして未来に向かって下さい。
他には存在感のました彩海せら、そして彩音星凪。この人は本当に見た目麗しくダンス上手で演技もしっかりしているので、月でいらないなら星に下さい。
気になったのはパレードの銀橋で海乃美月の隣りが組長だった事で。
え?風間柚乃じゃないの?って。
月のプロデューサーって生え抜きの王子様をあっさりよそに放出する癖があるからな。
相変わらずマスコミで誹謗中傷されている宝塚です。
しかし、第三者が劇団の経営に関わるのは反対です。
元々コバケンも宝塚には興味がなく、そのせいで今日に至った部分は大きい。
帝劇のトップなども演劇に興味がない人だったりして、作品がマンネリ化したり、主演者が報われない部分が大きいです。
やっぱり一番大事なのは「宝塚歌劇団」のピラミッド様式をきちんと理解した上で経営が出来る人が入るべきです。
そして、悪しき伝統はなくすべき。
音楽学校の先生達が声を揃えて「今の生徒達は何だかゆとりがないし、肩ひじはってる」と言ってます。その通りなんでしょう。
背景には本科生になると人が変わってしまう人が大勢いるから?
とにかく、女の園にはいじめ、嫉妬、妬みはつきもの。
そういう事を早く拾い上げて、組替えなどの措置を早く取る事が必要だし、入団しても組織になじめない人はいるので、そういう人は早めに見切りをつける、つけさせることが重要。
その一方で少子化によるジェンヌの確保も難しい。
今回の蓮つかさのような、しっかりとした滑舌と技術の持ち主は大切にすべきで、スポンサーがつくつかないに関わらず出世させる事も必要ではないかと思います。
千秋楽で月城が言ったらしいけど
「毎日続けることがとても大変な公演ではあったんですが、月組のみんなが気丈に振舞ってくれて…。いや、つらいこともたくさんあったと思うんですけど、それでも前を向いて、お客様が待っていてくださる限り、舞台を届けたいという思いで、いろんなことに耐えてくれました」
この言葉、本当に重要です。
月城かなとはわりとスムーズに上がって来た人で、今回の事は彼女にとっても大きな成長のカギになったかと思います。
103期の7人も頑張ったよね。
お客様は絶対に見捨てないので、とにかくこれからも夢を見せて下さい。