美智子皇后と雅子妃 (福田和也著・文春新書) 
作者にひかれて買いました。
確かこの人、週刊文春で「戦う時評」とかいうのを
書いている人ですよねーー
何でも皇太子殿下と同い年なんだそうです。
単なる皇后と皇太子妃の比較なのかと思いきや、どうしてどうして
互いの実家の過去まで調べ上げ、「家風」の違いを述べることまで
至っています。
この本に答えはありません。ただ・・今の皇太子夫妻の思想や
行動がやがて皇室に終焉をもたらすかもしれないと・・危惧しています。
現天皇と皇后はいわゆる「戦争の時子供だった」時代の人達。
親の偉大さと終戦に伴う苦労を見てきた世代なんです。
当時皇太子だった殿下と美智子さんの結婚は「ニューファミリー」の
象徴でした。大家族主義が崩れ、「核家族」の中で母親が負う
育児の責任の重さは倍増。美智子様はその先駆者として
「ナルちゃん憲法」まで作って「子育てに邁進しました。
皇太子は小さい頃から母・美智子様の苦労を見てきた世代。
母を悲しませないように、周りから何事も言われないように気を
使い、「いい子」を演じてきたような節がある。
雅子妃は下の双子の妹達にかかりきりになる両親の苦労を
見てきた世代。負担にならないように「いい子」を演じてきた節が
ある。
皇太子殿下と雅子妃はいわゆる
「団塊でもそのジュニアでもないくびれ世代」です。
親に反抗する事無く、親の理想に従って生きて来た世代。
皇太子は母・美智子様の理想の「公平で穏やかな太子」に。
そして雅子妃は父・小和田恒氏の理想とする
「成績優秀で上昇志向の強い娘」に。
正田家は元々が商人でブルジョアの家柄。
「質素・倹約」を旨とし「投機などの不安定なことは行わず、
ひたすら誠実に事業を推し進め還元する」思想。
小和田家は、とにかく「勉強」だけでのし上がってきた家柄。
何事も「努力と勤勉」で表現。
そしてその「努力の結果」の特権を得る為に頑張るお家柄。
要するに上からゆとりをもって見下ろしている正田家と、
何とか上昇して名を上げたい小和田家の家風の違いといいますか。
それが2人の妃に横たわっている溝でしょう。
皇太子は自分とよく似た女性「雅子妃」と結婚することによって
「個人の幸せなくして国家の幸せ、国民の幸せはない」
事に気づいた。
まず、自分が自由に振舞うこと。自分が楽しんで生活すること。
そこから「新しい公務」が見えるのではないかと試行錯誤。
今上夫妻は、徹底的に宮中祭祀を重んじ、「お出まし」以外にも
「お茶」や「進講」を増やして直に国民との触れ合いを求める。
そのあまりにもストイックに「無私」を貫く精神は
息子夫婦には理解出来ない。
今上夫妻にしてみれば「そこまでしないと象徴天皇制」への
国民の支持は得られないと思っている。不安がある。
でも皇太子夫妻は「それは時代遅れではないか」と
見ている・・らしい。
今上は「無私」と「慈悲」を持って国民に対する。
皇太子は「愛」でまず家族単位の「幸せ」を追求する。
その事は本人的にはいいのだが、結局の
ところ皇室の存続を危うくしかねない。
まあ・・皇室はある種「皇族」のものですから、
皇太子夫妻が「皇室が存続しなくてもいいから、
自分達の自己実現を優先したい」という
お考えであればそれでいいと思うんです
有識者会議がどのような決断を下そうとも、
雅子妃の「憂鬱」は解消されないでしょうし、
皇后になっても「幸せ」を感じることはないと思います。
でも、それも「自分で選んだ人生」である事に間違いはなく、
過去の自分に囚われずに生きる姿勢も必要だったでしょう。
歴代の妃達が同じように感じた「孤独」を癒すものは、まさに
「他者へ尽くす事」これしかありません。
(曽野綾子さんがそうおっしゃってますし、あのダイアナ妃だって
拒食と過食、自殺未遂と結婚の躓きから自らを再生させたものは
「地雷撲滅キャンペーン」だったりしますし。
彼女は「他人を癒しているつもりだったけど、実は自分が癒されていた」と
発言しています)
本質的に「自分だけの為(家族も含めて)に生きるだけでは
幸せにはなれないし、「自分さがし」ばかりしても結局のところ
答えは見つからないというのが現実ですよね
この2人の
「あまりにも親の理想通りに生きてしまったが為に
今になって反抗期が来たような」生き様というのは、
同世代には共感を得られても、「皇室」的に見てどうなのか・・・・
また、「新しい公務」の模索と言いながらも、まだ実現されている
様子はなく・・・
「夫は外でお仕事、妻は家で子育て。時々夫の仕事場に顔を見せる妻」
が理想というなら
それでもいいですけど。
(何でもあり、個人主義の日本ですから)
この本は「皇室」のみならず、
(天皇夫妻・皇太子夫妻)同世代の親子間に横たわる
微妙な「壁」とか「溝」を浮き彫りにしています。
また、「親」から「子」に継承されていく「思想」や「生き方」
というものが「結婚」にさいし、どのような影響を与えるかも
示唆してくれます。
そういう意味では、皇室に関心のない人でも読める、面白い
本です