ロケ隊の賄い食(その1)
有る年の暮れ、知り合いの蕎麦作り集団「イチカラ畑」のリーダーから思いもしない相談を受けた。
なんと、映画のロケが根小屋の大平山を中心として有り、そのロケ隊の賄い食を依頼されたが、
仲間にならないかと言うのがその相談。
映画の題名は後日知る事となったが役所広司、中谷美紀が共演する「渇き」と言う映画だった。
ロケ隊の人数は70人とも80人とも言う。
その大勢のスタッフの食事を「イチカラ畑」と私たち夫婦で引き受けようと言う事であり、
映画のロケと言う事に対する好奇心も有り、熟慮する事も無く引き受けてしまった。
「イチカラ畑」は、新車のキッチンカーも持っている。
そのキッチンカーで蕎麦を茹でる程度の事は出来るが、狭い車内で沢山の食事を作ることなど不可能。
考えて、一日目は餅を搗いて蕎麦と一緒に供することにした。
年末でも、夫婦二人の家で餅搗きは中止しようかと言っていたのに、急遽古い臼を引っ張り出し、
餅を搗く事になってしまった。
キナ粉と大量の大根おろしを作り、搗き立ての餅をちぎっては投げ入れる。
こうして、一日目の賄い食「蕎麦と餅」のセットは出来上がった。
(続く)