鳥正(その2終わり)
有る年に、妻と妻の母、義母を伴って出掛けたことが有ったが、やはり同じ店に入った。
お昼時は随分の繁盛で、中には鶏肉料理で昼からビールと言う果報者も何人か見えて羨ましい気持ちにさせる。
そんなご機嫌な年配のお客が義母に語りかけた。
「お婆ちゃん、それみんな食べられるの?」と。義母の注文は「空揚げ定食」で有り、
大きな丼にたっぷりのご飯が盛られていた。
若い頃から力仕事に励んできた義母は中々の健啖家でも有ったのだ。
義母は綺麗に平らげて「御馳走様」と小さく言うと、となりのお客は目を丸くしてたっけ。
その店も年に一度の客の私たちを覚えて下さっている、愛想の良い女性が居た。
でも、となりのお客がそっと言うには「家族なのに仲が悪くて出てしまった、それから味が少し落ちた」と言うことだった。
鶏モツを使った、やや濃い目で美味しい定食をもう一度食べたいし、
出来るならばあのモツでビールを、あの時の年配のお客のように飲んでみたいものだ。
(終わり)