夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「悲恋抄」ー2-

2021-05-26 21:00:43 | 自作の小説

「涼音 頼れるのはお前だけ 信じられるのはお前だけ

義松を頼みます 心真っ直ぐな人に育つよう」

 

藩の正室 病弱なお梨世(りよ)の方からの言葉を心に刻み 涼音はお世継ぎの義松 若君に仕え続けていた

 

お梨世の方が案じていたのは 家老 大木田将監のこと

その野心

女好き お金大好き

主君の寵愛深いお梨世の方にまで好色の手を伸ばそうとしたことも

戯言(ざれごと)と誤魔化そうとしたが

主君には遊興を勧めようとしどうにも信用ならない不遜な輩(やから)

 

殿様だって目に余るものを感じ その悪事の証拠を掴むべく手を打ってはいたが

 

大木田はことあるごとに若君に涼音への不信を植え付けようとしていた

正室お梨世の方の信任あつく 武芸にも優れ「巴御前」とも渾名される涼音が邪魔で仕方ないのだ

とうとうでっちあげの罪を被せ

涼音を手討ちにすべしと 若君に強く言う

「情に流されてはなりません これは悪い女なのです 正しく行うが上に立つ者のー」

 

義松はまだ元服前の年齢

常日頃可愛がってくれている涼音を殺すことなど 死を命じることなどできない

 

ーお許し下さい 御方様 わたしはこれまででございますー

涼音は懐剣で喉を突いて死んだ

 

主命により大木田一味に潜入していた若侍 真之介もまた斬殺された

真之介と涼音は恋仲であり いずれ夫婦となる約束をしていた

 

 

大木田将監ー

うるさい鼠二匹片付けてご満悦

 

しかしこの頃から怪異が始まる

 

夜半その寝所近くで足音がする

びしゃん びしゃん 濡れたような

 

廊下には朱色の 血に染まったような足跡が残り

 

毎夜 少しずつ将監の部屋へ近づいてくる

ある夜

「ごめん・・・」という声を将監は聞いたかどうか

脅える将監の前に嬲り殺され血塗れの真之介の姿

 

振り返れば 背後にはこちらも喉から血を吹いている涼音の姿

 

「ゆるせ ゆるせ・・・・・」

 

将監は腰を抜かし尻で後退さる

後ろ手に這い逃げる

じわじわと真之介と涼音が近付く

将監は庭に転げ落ち なおも後退さって逃げる

そしてー

 

井戸へと落ちた

 

真之介と涼音の姿をしたものは うっすらと微笑み 顔を見合わせると 静かに消えた

 

 


「悲恋抄」ー1-

2021-05-26 16:43:21 | 自作の小説

ー亜矢希(あやき)ー

いつかはこんな日が来ると分かっていた

何か約束したわけではない

ずっと一緒に居ただけ

年上の女は 捨てられかけてる女は こう言うしかなかったわ

「子供ができたんなら 責任取らなきゃ」

 

「俺は・・・」

言い淀むあの人に あんなことまで言ってしまった

「親無しの子にしたくないんでしょ あなた それは絶対 嫌な筈よ」

相手は売り出し中の女性記者 あたしなどより随分若い

実家も資産家

 

子供が産めるか産めないかのトシのただのくたびれた女より どちらが良いかは考えるまでもない

迷う価値すらありはしない

孤児で親を知らずに育ったあの人

人一倍 あったかな家庭に憧れているはず

自分の家族が欲しかったはず

あたしとの暮らしでは子供を・・・持てなかったのだから

 

ままごとのような そんな生活はもうお仕舞

 

ううん 本当は苦しい

この喉をかきむしり いっそこの手で心臓をえぐり出し 握り潰して死にたい

なのに体に力が入らない もう

あなたは あたしの全てだった

 

 

「別れたですって!」

昔からの友人でカクテルバー「夢」のオーナー勝子が眉をしかめる

「現在(いま)のアイツがあるのは あんたのおかげじゃない

アイツの才能に惚れこんで 自分の夢は投げ捨てた」

 

あたしの代わりに怒ってくれているようだった

勝子はずっとそう 気を揉んで案じてくれる

 

「あの人が あの人の作品が あたしの夢になったのよ

記者が取材にくるほど あの人は成功し あたしの夢をかなえてくれた」

 

「ずっと苦労してきたんじゃない その苦労が実を結んでーこれからーなのに

何 潔く身を引いてんのよ じれったい

いい?! わたしはね亜矢希の描く絵好きだったのよ 優しくてあったかくてー」

 

「ありがと そう言ってくれるのは勝子だけよ」

 

「まったくー無理に 無理に笑わなくていいのよ

ここでっくらい泣きなさい」

 

 

ー塔崎 凉吾(とうざき りょうご)ー

ふらふらと投げ出された体に手を伸ばした

気の迷い

 

その結果がこれだ

「子供ができたの 責任取ってくれるわよね

パートナーがいるって 何よ

籍にも入ってないじゃない

もしも堕胎(おろ)せなんて言うなら 私の両親だって黙ってないわよ

ケチな画家ひとり捻りつぶすくらい

ねえ 私 美人でしょ

これでも引く手あまたなの

あなたはイケメンだし きっと似合いの夫婦になれるわよ」

 

取材の時の感じ良さなど消え失せていた

いいやお前は俺の何も刺激しない

 

誰より 何より俺を思ってくれたのは

絵の描き方から教えてくれたのは

まだ美大生だった亜矢希

絵具代が大変なのーとバイトしていた

俺の身の上を知ると

「その年で一人暮らしは大変でしょ」と 弁当を作ってくれるようになり

俺が描いた絵を褒めてくれた

一緒に作品を創ってきたんだ

お前が居たから お前が喜んでくれるから 描いて 描き続けてこれたんだ

 

俺をひきとめなかった 泣いて縋りつかれるより辛い

俺はお前には必要ない男だったのか

 

 

ー勝子ー

亜矢希と別れた塔崎凉吾は描けなくなった

当然だ

ずっと二人を見て来たわたしには分かる

画家 塔崎とは 凉吾と亜矢希 二人で一人の画家だったのだ

 

亜矢希はここに寄った帰り 自動車事故で死んだ

女性記者の妊娠は嘘

いい男をつかまえがたい為のー

 

女の嘘に踊らされた凉吾は

彼も死んだ 描き疲れたかのように

 

最後に描き上げた肖像画の前で死んでいた

肖像画の亜矢希は微笑んでいて

凉吾は もう一度 幸福そうな亜矢希に会いたかったのだろうか

 

なんて馬鹿な二人

長年の友を喪ったわたしは ただ泣くしかない

あんた達 もっと我儘に生きれば良かったのに

本当にお馬鹿さん


花を眺めて

2021-05-26 16:27:38 | 子供のこと身辺雑記

春咲きの薔薇はそろそろ終わりに近づきました

一番最後に咲くバラ

忘れた頃に咲きだすコです

 

四季咲きのものは夏に咲く品種もありますけれど

四月から五月が綺麗だなと思います

 

紫陽花も咲き始めの頃から少しずつ色が変わっていきます

 

 

 

 

 

 

これは↑ポップコーンという品種の紫陽花です

花弁が丸まった形で特徴があるので これだけは品種がわかりやすい^^;です

 

 

鉢の大きさを変えながら植え替えるうちに品種名が分からなくなってくるというー

品種名を書いた札すら行方不明になってしまって^^;

 

 

柘榴の花もそろそろ開きそうです