監督 ルキノ・ヴィスコンティ
イタリア貴族の末裔のジュゼッペ・ラントゥーザ氏の書いた小説を 同じくイタリア貴族の血が流れるルキノ・ヴィスコンティ氏が映画にした
しかも映画の中の豪華な舞踏会場面には本物の貴族が出演しているという
完全版3時間7分ほどの作品を観ました
あまりに長いのでカットされた作品もあります
壮麗な館の中 サリーナ公爵ファブリッツィオ(バート・ランカスター)は届いた報せに不機嫌になります
ガリバルディ率いる赤シャツ隊
革命を怖れ逃げ出した貴族がいます
公爵は逃げるどころか 館の庭で兵士の死体が見つかるほど騒然としている外へ平気で出かけていくのです
後日 聖職者に結婚の誓いを破っている行為を咎められますが
「わたしは精力的な男だ」と逆に聖女ぶる妻への不満を言います
7人も子供を産んだのに 公爵は妻のへそすら見たことがない
公爵の情熱を受け止めてくれる女が必要なのだということでしょう
公爵には目をかけているハンサムな甥のタンクレディ(アラン・ドロン)がいます
彼は貴族でありながら ガリバルディ(ジュリアーノ・ジェンマ)率いる革命軍に参加すると
話を聞いて公爵は複雑な表情をしますが 彼に軍資金を持たせてやります
公爵の娘でタンクレディを慕っているコンスタンツェは心配で引き留めますけれど
馬車をかってタンクレディは行ってしまいます
やがて公爵一家は通行許可を取り別荘へ向かいますが 途中の道路が封鎖されており
大尉に昇進しているタンクレディが自分の権限でその封鎖を突破 無事に別荘へ
市長ゼダーラの歓迎も受けます
ゼダーラには美しい娘のアンジェリカ(クラウディア・カルデナーレ)がおりました
タンクレディは野性的な美しさをたたえたこの娘にすっかり魅了されます
聖職者から娘のコンスタンツェのタンクレディへの想いを聞かされた時に 公爵はこう答えています
つつましやかな娘の美点は認めつつ 野心家のタンクレディを妻として支えることはできないーと
タンクレディからアンジェリカと婚姻したい意志を知らされた時に 公爵は二人はいい組み合わせだと考えています
成りあがりの父親でも金がある
タンクレディには金が必要だ
公爵はよく人間を見ているし 心の中では貴族の伝統も大切にしながら 時流を見る目も持っています
1860年10月国民投票が行われ シチリアの民は統一され分かちがたいイタリアを望むとの結果が出ました
統一イタリア万歳
ここでイタリア統一の言葉に かつてルネサンス期にイタリア統一を目指し野望半ばで戦場で死んだチェザーレ・ボルジアのことを思い出しました
公爵は言います「風なくば 空気は腐った沼だ」
公爵は賛成票を入れました
公爵が狩りに伴ったドンチッチョは言うのです
自分は反対に入れた 反対票はもみ消されたのだと
自分は正直者
受けた恩義は忘れない
カラブリアの公爵夫人でスペインのイザベッラ王妃のお力添えで勉強し いまは教会のオルガン奏者を務めさせていただく
閣下の御厚情を賜っております
生活が苦しい折り 宮廷にお縋りしたら常に救いのお金が届けられた
もし今 あの気高い王様や王妃様が天からご覧になったら」
公爵は言います
「民衆はガリバルディの勝利に歓喜した
国民投票は無秩序に対する唯一の方策だ
我々にも害は少ない
革命の時は過ぎ去った 今日この街で生まれたイタリアに栄光あれ」
そして公爵がタンクレディとアンジェリクの結婚を認めるつもりだと知りドン・チッチョは言います
「ファルコリーネ家は終わる サリーナ家も終わる」
公爵「この結婚は終わりではなく すべての始まりだ」
ガリバルディが落ち目になる前にさっさとイタリア国王陛下の正規軍へと友人の伯爵と共に鞍替えしたタンクレディ
全く驚くべき変わり身の早さです
勝ち馬に乗るのがうまいというか
かつてはお嬢様であったコンスタンツェと舞踏会で肩を並べるなんて考えられなかったアンジェリク
その新鮮な美しさでタンクレディを魅了
コンスタンツェがタンクレディを慕っていると知りながら
ゆえに内心得意だし みせつけるような言動も
この育ちの悪さ 呆れるほど下品な笑い声
コンスタンツェは端正な整った正統派の美貌です
対してアンジェリクは性的魅力が
何処か軽薄さもあるタンクレディと合うのかもしれません
とは言えタンクレディは彼なりに公爵を大切にしています
ある貴族の開いた豪勢な舞踏会
疲れた公爵の目を捉えたのは 死の礼賛という絵でした
タンクレディに「死のことはよく考える 恐ろしくはない」と
心配そうな表情になるタンクレディ
アンジェリクは言います
「こちらにおいでと知って休憩にきたんです でもお願いがあって」
公爵「言ってごらん」
アンジェリク「マズルカを一緒に踊っていただけないかと 踊りの名手と伺いました」
公爵は ワルツでよければーと答えます
アンジェリクはタンクレディに「おじ様はお優しいわ あなたとは違うわ」
答えてタンクレディ「こんなにも粋で魅力的なおじ様には嫉妬するさ」
丁度ワルツが演奏されて 踊り出す公爵とアンジェリク
「皆さん親切で私はとても幸せです タンクレディは天使よ おじ様もです
すべておじ様のおかげです
彼だって(公爵に結婚を)反対されていたらー」
公爵「それでも(タンクレディは)結婚していたよ すべて君の力だ」
アンジェリク「いいえ 違います」
公爵「そうだよアンジェリク タンクレディは君の美しさにあらがえない 」
アンジェリク「ダンスの名人だと伺いましたがー」
公爵「また失望させて すまない」
アンジェリク「名人どころか あなたは魅惑の踊り手ですわ 私たち注目の的です」
二人の踊りを眺めていたタンクレデイ
「おじ様の威厳に圧倒されて拍手が足りなかったですが大喝采ものでしたよ」
このところ舞踊会が多い事をこぼすコンスタンツェに アンジェリクは自分は楽しくてたまらないーと
タンクレディとの仲をみせつけるような場面を 鈍感力発揮のタンクレディ
帰ることになり公爵の姿を捜すタンクレディ「サリーナ公爵を見なかったか」
見つけた公爵は家族の為の馬車の手配を頼み 自分は歩いて帰る 外の空気を吸いたいと話します
そして公爵の姿を見失うタンクレディ
夜の街に跪く公爵「星よ 誠実なる星よ
いつ 束の間でない時をもたらす
全てを離れ お前の永遠の確かな地にー」
馬車の中の三人 タンクレディとアンジェリク そしてアンジェリクの父親
脱走兵が射殺ー処刑されているのか銃撃の音が聞こえてきます
アンジェリクの父親「シチリアにはこれが必要だ やっと安心ー」
寂しい路地を独り消えていく公爵の後ろ姿
誰もいなくなり
FINE
新しい国となった政権から 公爵は政治への参加を求められて 自身は断り代わりにアンジェリカの父親を推挙しています
旧体制側の人間であった自分は新しい国へはふさわしくない
時代の流れに乗れる人間のほうがふさわしいと
時代の変化を必要なものと認めつつ 古き良き時代への愛も深くあるのでしょう
それが滅び消え去る運命であるとしても 甘んじてうけいれて
貴族の体面 公爵としての誇り
家族への愛情
何を譲り 何を護り抜くべきか
名優バート・ランカスターの演技をじっくりとご覧になっていただきたいです
そのたたずまい
そしてできれば出演されている他の映画もご覧になってください
同じ人間か!と驚くはずです
演じる役柄で こんなにも違う人物になれるのかと
ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品は、ベニスに死すとか聞いたことあります。
ファンにとってはすこぶるいい作品みたいですが、ちょっと毛色が違うと言うか、私には取っつきにくい映画で、観たことがないです。
映画自体は、夢見さんが言っている俳優以外にも、C・Cとか出てて、そうそうたるメンバーなんですけどね。
余談ですが、ちょっとWIKIを見ると、アラン・ドロンの怪傑ゾロに出てるオッタビア・ピッコロも出ててびっくりしました。
「ベニスに死す」ビョルン・アンドルセンだったかな 美少年ありきーの映画でもあったような
オッタビア・ピッコロさん この映画の時には十代 少女と言っていい年齢ですね
宝塚歌劇団宙組のショー「シトラスの風」の中にこの山猫の舞踏会の場面に影響受けたような場面があります
そう思って観れば 女性のドレスのデザインなど ああーそうだねーとなるような
豪勢な貴族の館など眺めるだけでも すっごいなあーなんて思いました
もう考え方が我々?とちがうんですよ笑
この映画もそうですし、ルードヴィヒや家族の肖像を観ると、あぁアートに触れている!!という感慨に浸ることが出来ます。
それでも公爵という人間の深く高い教養があるからこその多面性 一筋縄ではいかない存在を体現してみせたバート・ランカスターという俳優の凄さに痺れます
ルキノ・ビスコンティ
よくぞ描いてくれたなと
そして創らずにはいられなかった映画たちなのかなーとも
その血が 魂の中にあるもが「描け」と訴えてきたのかしらとも
映画を観ていると不確かだった知識がつながる時あります
スペイン イタリア シチリア