仙谷氏が、当初重罰に科そうと弁護士風を吹かして罪状をあげつらった、主任航海士の「守秘義務違反」容疑は、逮捕保留となりました。
読売で、「検証 尖閣ビデオ事件」という特集記事が16日から連載されています。これによると、「逮捕すべきだ」とする最高検の方針に対し、地検と高検が強く抵抗しなかなか溝が埋まらなかったのだそうです。
検察、警察に異例の総動員での犯人捜しと重罪科料を指揮し、記者から世論の動向へのコメントを求められると、"処分(=公務員守秘義務違反に対する)を求める国民が圧倒的多数と信じている"と回答した仙谷氏。振り回した法律論は否定されましたが、さて、どのように責任をとるのでしょう。
「国策捜査」の末 最高検と現場対立 (11/16 読売朝刊)
東京・霞が関の検察合同庁舎。15日午前から、最高検、東京高検、東京地検の幹部が断続的に協議を続けていた。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、神戸海上保安部所属の巡視艇「うらなみ」主任航海士の海上保安官(43)を逮捕しないという結論が出て、警視庁に伝えられたのは午後4時頃だった。「逮捕しようという声は、下からも上からも出なかった」。最高検幹部は、逮捕見送りは「検察一体」の判断だったと強調した。だが、舞台裏では、逮捕の可否を巡って、激しい議論が繰り広げられてきた。
「今回は最高検と、地検・高検の戦いだよ」。主任航海士が映像の流出を告白した翌日の11日、ある捜査幹部は漏らした。国家の秩序を重視し「逮捕すべきだ」とする最高検の方針に対し、主任航海士に同情的な世論を気にかける地検と高検が強く抵抗していた。ある地検幹部は「中国人船長が釈放されているのに、主任航海士を逮捕したらバランスが取れない。世論が必ず反発する」と話した。
捜査が進み、海上保安庁で映像がずさんに管理されていた実態が明らかになるにつれ、国家公務員法の守秘義務の対象となる「秘密」にあたるのかを疑問視する声も多く出始めた。
当初は逮捕に積極的だった警視庁も、「検察の判断に従う」と姿勢を転換させたが、検察内部では最後まで溝が埋まらなかった。
「検察の内部分裂を避けなければならないと判断した結果だ」。捜査幹部の一人は、そうつぶやいた。
*
政府が一般公開を拒み続けてきた衝突映像の流出翌日の5日。午後の記者会見で、仙谷官房長官が「故意に流出させたなら、明らかに国家公務員法違反。罰則付きの違反だ」と述べるなど、菅政権は当初から映像投稿者の刑事責任を重く見る姿勢を強調していた。その方針が大きく進んだのは7日。日曜日だったこの日の午後、ある警察幹部に突然、連絡が入った。
「そちらで捜査を担当してもらえないか」。官邸サイドからの打診だった。この時点では、まだ海上保安庁が内部調査を進めている途中だっただけに、この幹部は「急に話が動き出したな」と驚いた。別の幹部は「政権が早くやりたいのだろう」と漏らした。
政府の焦りをくみ取ったかのように、翌8日午前には、海上保安庁が国家公務員法(守秘義務)違反などの容疑で、警視庁と東京地検に刑事告発。最高検も同日、異例の捜査開始宣言を行った。政府がひた隠しにしてきた映像がネット上に流出するという失態に、海保、警察、検察の三つの捜査機関がすべて動き、流出事件は、時の政権の意向に沿う「国策捜査」の様相を強く帯びていった。
「しかるべき処分をしてもらいたいという国民が、圧倒的多数だと私は信じている」。仙谷官房長官は10日の記者会見で、流出行為の違法性を改めて訴え、投稿者擁護論をけん制した。「(映像の投稿を)称賛する日本人が多いと私は思わない」
*
問題の映像は、「秘密」の度合いが高くないーー。政治の強い意思のもとで進められたかに見えた捜査は、逮捕回避という方向性が定まった。曽根講翻・慶応大教授(政治学)は「政府は当初、厳しい刑事責任を想定していたかもしれないが、映像があのように簡単に見られるものだとは思っていなかったのだろう。主任航海士は逮捕されなかったが、不十分な情報管理や、中国人船長の釈放を巡る対応について、政府の責任は残ったままだ」と指摘する。
「捜査は必要だったと思うが、そもそも普通に公開すれば良かったものを、これだけの大事件にしてしまったこと自体が問題だ」
ある民主党の衆院議員は、沈んだ声で語った。
東京・霞が関の検察合同庁舎。15日午前から、最高検、東京高検、東京地検の幹部が断続的に協議を続けていた。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、神戸海上保安部所属の巡視艇「うらなみ」主任航海士の海上保安官(43)を逮捕しないという結論が出て、警視庁に伝えられたのは午後4時頃だった。「逮捕しようという声は、下からも上からも出なかった」。最高検幹部は、逮捕見送りは「検察一体」の判断だったと強調した。だが、舞台裏では、逮捕の可否を巡って、激しい議論が繰り広げられてきた。
「今回は最高検と、地検・高検の戦いだよ」。主任航海士が映像の流出を告白した翌日の11日、ある捜査幹部は漏らした。国家の秩序を重視し「逮捕すべきだ」とする最高検の方針に対し、主任航海士に同情的な世論を気にかける地検と高検が強く抵抗していた。ある地検幹部は「中国人船長が釈放されているのに、主任航海士を逮捕したらバランスが取れない。世論が必ず反発する」と話した。
捜査が進み、海上保安庁で映像がずさんに管理されていた実態が明らかになるにつれ、国家公務員法の守秘義務の対象となる「秘密」にあたるのかを疑問視する声も多く出始めた。
当初は逮捕に積極的だった警視庁も、「検察の判断に従う」と姿勢を転換させたが、検察内部では最後まで溝が埋まらなかった。
「検察の内部分裂を避けなければならないと判断した結果だ」。捜査幹部の一人は、そうつぶやいた。
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政府が一般公開を拒み続けてきた衝突映像の流出翌日の5日。午後の記者会見で、仙谷官房長官が「故意に流出させたなら、明らかに国家公務員法違反。罰則付きの違反だ」と述べるなど、菅政権は当初から映像投稿者の刑事責任を重く見る姿勢を強調していた。その方針が大きく進んだのは7日。日曜日だったこの日の午後、ある警察幹部に突然、連絡が入った。
「そちらで捜査を担当してもらえないか」。官邸サイドからの打診だった。この時点では、まだ海上保安庁が内部調査を進めている途中だっただけに、この幹部は「急に話が動き出したな」と驚いた。別の幹部は「政権が早くやりたいのだろう」と漏らした。
政府の焦りをくみ取ったかのように、翌8日午前には、海上保安庁が国家公務員法(守秘義務)違反などの容疑で、警視庁と東京地検に刑事告発。最高検も同日、異例の捜査開始宣言を行った。政府がひた隠しにしてきた映像がネット上に流出するという失態に、海保、警察、検察の三つの捜査機関がすべて動き、流出事件は、時の政権の意向に沿う「国策捜査」の様相を強く帯びていった。
「しかるべき処分をしてもらいたいという国民が、圧倒的多数だと私は信じている」。仙谷官房長官は10日の記者会見で、流出行為の違法性を改めて訴え、投稿者擁護論をけん制した。「(映像の投稿を)称賛する日本人が多いと私は思わない」
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問題の映像は、「秘密」の度合いが高くないーー。政治の強い意思のもとで進められたかに見えた捜査は、逮捕回避という方向性が定まった。曽根講翻・慶応大教授(政治学)は「政府は当初、厳しい刑事責任を想定していたかもしれないが、映像があのように簡単に見られるものだとは思っていなかったのだろう。主任航海士は逮捕されなかったが、不十分な情報管理や、中国人船長の釈放を巡る対応について、政府の責任は残ったままだ」と指摘する。
「捜査は必要だったと思うが、そもそも普通に公開すれば良かったものを、これだけの大事件にしてしまったこと自体が問題だ」
ある民主党の衆院議員は、沈んだ声で語った。
海上で日常的に生じている領海やEEZ侵犯に接している海上保安官のご苦労が、広く国民に認識されましたが、身の危険を振り返らず国防の任にまい進される姿は、かねてもっと報道されるべきと言ってきましたが、今回の主任航海士が言っておられる「一人でも多くの国民に知っていただきたい」ということが、その危険な仕事の励みにもなっているはずです。
これまでも公開されてきたし、今回の悪質な(船員の態度からは故意での)衝突は、第二列島線進出の、艦隊の示威行為にも遭遇していた海保の方々(11管区のみならず)には、この事態は想定されていたことで、その発生をいち早く国民に知らせようと思われて当然のことでした。これまで通りビデオは公開するつもりで保管されていて当然でしたが、突然仙谷氏主導で裁判資料として秘密になった。管夫人の話では、カンカラ菅も夫人との家庭内議論では、公開がよいと言っていたのが、仙谷氏に法律を振り回されて進言に従ったのだとか...。
せっかく逮捕した漁船と乗組員(最も危険な、停船拿捕や船長逮捕のビデオは未公開)は、粛々と国内法で処分と閣僚が公言し、検察はその方向で進めようとしていました。ところが、船員と証拠品の船は早々に帰してしまい、挙句の果てに突然の船長釈放。そして、釈放の責任は沖縄地検に丸投げして、政府は自らの政治責任を放棄。
沖縄地検の発表での、外交上の政治判断とのコメントが、政府へのあてこすりというかささやかな抵抗であることは、多くの諸兄が汲み取っておられるところです。
政府の一貫性を欠く、手のひら返しの方針は、鳩もそうであった様に、基本の勉強・認識不足によるところが大きいと言えますが、最前線で行動している現場では、士気の低下や政府への信頼は大きく低下することは明らかですね。検察の不祥事があったとはいえ、政府の言いなりに振り回される高検も含め、現場に近い地検、高検が反発しても不思議ではありません。
主任航海士の行為は、クーデターにも相当すると騒いだ政治家もいましたが、クーデターを起こされても思い当る節があるから、このような発言が飛び出すのでしょう。
海保、警察、検察に総動員をかけ、重罪処分を狙った仙谷氏に、警察、検察が逮捕しないとした答えは、政府の方針に行政機関が反対の答えを出したのですから、クーデターと言える結論ではあります。しかしそれは、政府が誤った判断や行動を積み重ねているからそう見えるだけで、仙谷氏の振り回す法ではなく、大局を見た正しい法の運用がなされただけの話なのです。
地検、警察の現場と事実に立脚した踏ん張りに「あっぱれ」を送ります。
余談ですが、主任航海士が船から降りて捜査員と歩いているときは、胸をはって広い歩幅でスタスタと歩いていましたが、在宅聴取に切り替え庁舎を出てきたときは、足を引きずって辛らそうに歩いていました。この大きな差には、何があったのでしょう?ネットで探しても、触れられている記述が見当たらない...。
もう一つ余談です。韓国、北朝鮮、中国、ロシアの海や空の、民間や軍を問わぬ侵犯は日常生じていて、民主党政権の失政もありますます増加が懸念されます。この時、素早い情報共有で、前線の任務にあたる方々が状況を知り、次の発生に備えることはとても重要です。
リアルでワールドワイドな情報共有と、セキュリィティは背反する部分があります。この事件でISMS(政府や軍は米国とも準拠する専門のものがある)の見直しがされる時に、このバランスが偏らないことを願っています。
↓よろしかったら、お願いします。
> 当事者である個人がアクセスしようにも、「個人情報だから教えられません」という倒錯が起きている。
「個人情報保護法」を間違った盾に使うケースが多いですね。お役所で特に目立つように感じます。
民間企業での実際の運用は、各省庁からガイドラインが出ていて、業界によって運用レベルや独自の規定があったりするようですね。当然放送、通信業界は高い(?)レベルが要求されているようですね。私は、経産省のガイドライン対象業界でしたので、通信業界のものは垣間見た程度しかしりませんし、官公庁用は全く知りませんが、自分の情報に対しては、開示や、訂正、削除の要求が出来ますね。(例外規定はある)
・(開示)第二十五条 (実費請求あり)
・(訂正等)第二十六条
・(利用停止等)第二十七条
余談ですが、うるさい電話での売り込みには、入手経路(合法的な名簿と回答)を確認して、情報を削除してほしいので、情報管理責任者を紹介しろというと、ほとんどが止まりますね。
主題の情報提供は、「(利用目的による制限)第十六条 の 3の 1 法令に基づく場合」ですね。ご説のように、法令に基づいている証が必要ですが、 それが「裁判所の令状」だったのですね。
検察も、きちんと法を守っていただかねばなりませんね。