遊爺雑記帳

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激化する米中冷戦の時代考証 「日米欧連携メカニズム」の構築を急げ

2020-01-11 01:23:55 | 中国 全般
 「新冷戦時代」の幕開けの中で迎える 2020年時代=令和の時代。
 グローバルな紛争や問題の主要な原因は、共産主義あるいは強権主義で軍事力を重視する、「異質な大国」の中国とロシアであると、元・陸上自衛隊幹部学校長の樋口譲次氏。
 わけても、21世紀における安全保障の最大の課題は中国の覇権的拡大だと。
 アメリカファーストのトランプ路線と、欧州との溝は、中露の思うつぼ。
 欧米は、現行の国際秩序の創造者であり、自ら作った国際秩序を維持する重大な使命があり、いたずらに争っている場合ではないと、樋口氏。
 
激化する米中冷戦の時代考証 多極化する世界の中で「日米欧連携メカニズム」の構築を急げ | JBpress(Japan Business Press) 2020.1.9(木) 樋口 譲次

<前略>
■冷戦の主戦場はインド太平洋へ
グローバルな紛争や問題の主因は「異質な大国」の中国とロシア


 
グローバルな紛争や問題の主要な原因は、共産主義あるいは強権主義で軍事力を重視する、日米欧とは「異質な大国」の中国とロシアであることは、言うまでもない。

 
中国は、「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」を実現するため、その目標に奉仕するべく「富強大国の建設」を目指している
 その中国は、いわゆる
「接近阻止・領域拒否(A2 / AD)」戦略に沿って、米国のプレゼンスを西太平洋から排除し、同地域に中国の地域覇権を確立しようとしている。

 
東シナ海・南シナ海で「グレーゾーンの戦い」を仕かけつつ、米軍が来援する前に第1列島線の国々に対して「Short, Sharp War」を発動し、既成事実化を図るのがその戦法だ。

 また、同戦略に呼応して、
「一帯一路」構想を旗印に、陸路海路の双方から経済圏・勢力圏を西方へ伸長しており、欧米主導の現行国際秩序を覆して中華的秩序に置き換え、世界的な覇権獲得の野望に向かって突き進んでいる。

 
ロシアは、2014年2月に、いわゆる「ハイブリッド戦」を展開し、クリミア半島を併合するとともに、ウクライナ東部への軍事介入を続け、中国と同様に「力を背景とした一方的な現状変更」を試みたことから、欧州にロシア脅威論を復活させた。

 また、その延長線上で、2015年9月以降、
シリアへの軍事介入を行い、中東での影響力の拡大を図っていることから、欧米など関係国の警戒感を強めている。

21世紀における安全保障の最大の課題は中国の覇権的拡大

 ロシアは、これまで「強い国家」や「影響力ある大国」を掲げ、ロシアの復活を追求しているが、冷戦後、「斜陽国家」といわれるまでに国力を弱体化している。
 2018年の名目GDP(国内総生産)は、韓国(世界第10位)より低い世界第12位で、概ね日本の3分の1に過ぎない。

 したがって
ロシアは、「大国の役割を果たすための必要条件がないにもかかわらず、その役割を果たそうとする場合、その戦略は失敗に帰する」「国力を無視した戦略は、失敗に帰する」といった基本原則を無視することはできないと考えられる。
 つまり、ロシアは、
欧州と極東での二正面作戦を行う余力はない

 対外政策は、欧州正面を焦点に、国境沿いに緩衝地帯を確保し、何とかして以前の勢力圏を回復するなど、基本的に「戦略的守勢」の中でアグレッシブ(強がり)な行動をとっていると見るのが妥当であろう。

 一方、
中国はGDP世界第2位の経済発展を背景に「世界一流の軍隊」の建設を目標に軍事力の増強を続け、米国に「追いつき、追い越せ」と国力の強化に注力している。
 それに伴って、インド太平洋地域並びに世界におけるパワーバランスを急激に変化させ、対外政策は一段と「戦略的攻勢」の姿勢を強めており、
国際社会に深刻な懸念を抱かせるようになっている

 これに対し、
ドナルド・トランプ政権が2017年12月に発表した「国家安全保障戦略」(NSS)で明示し、マイク・ペンス副大統領が2018年10月にハドソン研究所で「第2次冷戦」宣言といわれる歴史的演説を行ったように、米国が中国に対して、断固たる行動を取ろうとしているのは疑う余地がない。

 21世紀においては、既存の超大国と新興大国との興亡、特に、
米国と中国との間の角逐の行方が国際社会、とりわけインド太平洋地域の将来を占う最大のカギとなっている。

 
「中華民族の偉大な復興」を掲げる中国「偉大なアメリカの復活」を掲げる米国は、イデオロギー、貿易やテクノロジー、外交、安全保障・軍事などあらゆる分野で根本的な違いがある

 
マイク・ポンペオ国務長官が2019年10月のハドソン研究所主催の夕食会で強調したように、「われわれ(米中)の2つのシステムの基本的な違いと、こうしたシステムの違いが米国の国家安全保障にもたらす影響を無視することは、もはや現実的ではない」(括弧は筆者)のである。

 このように、米中間の摩擦や衝突は避けられず、そのうえ両国間の戦略・政策調整は行き詰っており、対立は構造的であるため、その長期化から逃れられない情勢である。

 つまり、
中国の覇権的拡大は、インド太平洋地域を中心に、21世紀における国際安全保障の最大の課題と見なされるようになっている。

 日米欧にとっての冷戦の主戦場は、かつてのソ連を主敵とした欧州正面ではなく、今は中国を主敵とするインド太平洋正面に完全に移っているのである。

■米国と欧州の食い違いは重大
 
インド太平洋正面では、中国を睨んで、日米印豪が「自由で開かれたインド太平洋戦略」のもとに足並みを揃えつつある一方、中露は、対米戦略で結束を強めつつあり、対立の構図は明確だ。

 
問題は、欧州正面で、トランプ政権になって、欧米間の不協和音が目立つようになった。
 特に、両者には相互不信と直面する情勢に対するパーセプション・ギャップがあり、亀裂が深まりかねない恐れがある。
 まず、
トランプ大統領および同政権は、NATO(北大西洋条約機構)が防衛についてハト派過ぎて、国防費GDP2%の合意目標の達成を拒否している加盟国があるため、NATOが全体として弱体化していると懸念している。
 また、経済については、EUがリベラルで、経済統制が行き過ぎており、国家統制主義的な経済政策は欧州の活力と成長を損ねているという指摘である。社会問題についても、あまりに進歩的だとの懸念だ。

 一方
、欧州は、「アメリカ最優先」の「一国主義」を打ち出したトランプ大統領の下での米欧同盟に不安を隠さない
 イラン核合意や地球温暖化対策「パリ協定」からの離脱をはじめ、すでに前言を撤回しているが、NATOは「時代遅れ」との発言や同盟国と協議なしのシリア北部からの部隊撤退などに見られるように、
トランプ大統領は同盟あるいは多国間主義を軽視していると感じている

 特に、
中国の覇権的拡大に伴い、「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序」が圧力にさらされているという最大の問題については、地政学的環境の違いが露呈している。

 米国の国家安全保障戦略は、中国とロシアを「現状変更勢力」「ライバル強国」と位置づけてはいるが、主敵はあくまで中国であり、このままではユーラシア大陸の東西に二分されかねない米国の安全保障努力を、つとめてインド太平洋正面に集中させたい考えだ。

 一方、
欧州では、むしろロシアの脅威が高まっているとして、域内や周辺の安全保障を独自で担う「戦略的自立性」を強化し、「一国主義」の米国と一線を画したい思惑が見え隠れする。

 しかし、
欧州の独自路線は、中露の思うつぼとなる危険性がある。これらの食い違いは、米中冷戦が進行する中で重大な問題である。

 では、
それを乗り越えるにはどうすればいいのか?!

 現在の国際秩序は、欧米的価値観、すなわち自由、民主主義、人権、法の支配の普遍化とウエストファリア体制(条約:1648年)を基礎としてもたらされたものである。
 
欧米は、現行の国際秩序の創造者であり、自ら作った国際秩序を維持する重大な使命があり、いたずらに争っている場合ではない
 その認識を新たにし、「現行国際秩序の維持」を共通の戦略目標として結束を強めなければならず、またそうするのが道理であろう。

 それが、様々な食い違いの中で
欧米が協調姿勢を取り戻し、また「激動と混迷」の時代に、壊れかかった「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序」を再建する途となるはずである。

■「日米欧連携メカニズム」の構築を急げ
 国際関係は、各国の思惑や利害関係が複雑に絡み合いながら、離合集散や対立協調を繰り返している。

 わが国では、
日米同盟があるから日本有事に米国は自動的に助けに来てくれると信じている人が多い
 もし
そう望むなら、そうなるように特段の努力を払わなければならない
 米国はインド太平洋地域ばかりでなく、欧州、中東そして世界中に重大な戦略的関心と国益を有しており、近視眼的かつ一方的な対米願望は、時に失望に取って代わられることになるからだ。

 それは、欧州との関係でも同じである。

 東西冷戦は、欧州が主戦場であったが、日本も自らの対ソ防衛とともに対ソ牽制で欧州防衛に寄与した。今回はインド太平洋が主戦場であり、欧州が協力する番である。

 
欧州は、米国が対中抑止に最大限注力できるよう、対露防衛や中東の安定化などの周辺の安全保障を引き受けるとともに、対中牽制に力を振り向けてもらわなければならない
 中でも、英国とフランスは、インド太平洋に直接戦略的利害を有している。

 進みつつある両国との協力関係を足がかりに、欧州(NATO/EU)をインド太平洋に引き付ける戦略的枠組みが必要であり、そのための
「日米欧連携メカニズム」の構築は急務である。

 NATOは、昨年12月に英国で開かれた首脳会議で、初めて中国の脅威に対する共同対処の必要性で一致したばかりだ。

 
「日米欧連携メカニズム」構築の狙いは、欧州からインド太平洋までをグローバルに俯瞰しつつ、まず中国の脅威に対する認識を共有し、欧州の関心をインド太平洋に引き込み、そして、それぞれの立場で対中戦略を一致させることにある。

 平成25(2013)年12月、わが国として初めて策定された「国家安全保障戦略」は、日本がとるべき外交上のアプローチとして、日米同盟の強化、パートナーとの信頼・協力関係の強化などにより地域の安全保障環境を改善し、脅威発生を予防・削減すること、並びにグローバルな安全保障環境を改善し、平和で安定し、繁栄する国際社会を構築すること、を戦略目標に上げている。

 その意味からも、
わが国は、インド太平洋への欧州の関心を高め、それが具体的な共同行動に結びつくよう、「日米欧連携メカニズム」の構築に向け率先して働きかけを強めなければならない

 ロシアの2018年の名目GDPは、韓国(世界第10位)より低い世界第12位で、概ね日本の3分の1。「斜陽国家」といわれるまでに国力が弱体化しているのが実態。
 したがってロシアは、「大国の役割を果たすための必要条件がないにもかかわらず、その役割を果たそうとする場合、その戦略は失敗に帰する」「国力を無視した戦略は、失敗に帰する」といった基本原則を無視することはできないと樋口氏。
 ロシアは、欧州と極東での二正面作戦を行う余力はないと。
 
 ただ、プーチン大統領の卓越したマジック外交戦略で、いまだに国際紛争の一翼を担い、欧州諸国にとっては脅威となっています。
 日本も終戦のドサクサで、北方領土を不法占拠されたままであり、安倍政権が交渉を引き継いだ四島返還は、むしろ逆行し、今やゼロ島返還に至ってしまっています。

 しかし、その国力が低下したロシアに代わって米国に覇権争いを挑んでいるのが、習近平の中国であることは、諸兄がご承知の通りです。
 
 南シナ海で人工島を造営し軍事基地を建設、領土・領海化し太平洋二分論をふっかれられるまでに放置したオバマ大統領に代わって登場したトランブ政権。
 マイク・ペンス副大統領が2018年10月にハドソン研究所で「第2次冷戦」宣言といわれる歴史的演説を行い、習近平の覇権拡大を認識、対抗宣言をしたのでした。
 「中華民族の偉大な復興」を掲げる中国と「偉大なアメリカの復活」を掲げる米国との「新冷戦時代」の幕開けでした。

 米国の国家安全保障戦略は、中国とロシアを「現状変更勢力」「ライバル強国」と位置づけてはいるが、主敵はあくまで中国の認識。
 一方、欧州では、むしろロシアの脅威が高まっているとしていて、米国と一線を画す欧州の独自路線は、中露の思うつぼとなる危険性があると樋口氏。

 中国の覇権的拡大は、インド太平洋地域を中心に、21世紀における国際安全保障の最大の課題と見なされるようになっている今日、日米豪印が中心となり、日米欧にとっての冷戦の主戦場は、かつてのソ連を主敵とした欧州正面ではなく、今は中国を主敵とするインド太平洋正面に完全に移っている認識で「自由で開かれたインド太平洋構想」の構築にシフトしています。

 反米路線のロシアは、本来は国境線からの侵略の脅威を抱える中国に対し、天然ガスの売り込みの弱みもあり、歩調を合わせていますね。(プーチン氏は、同盟関係にはないと煙幕)

 米国、欧州、中国、ロシアの絡み合いの構図を乗り越えるにはどうすればよいのか。
 「現行国際秩序の維持」を共通の戦略目標として結束を強めなければならず、またそうするのが道理であろうと樋口氏。
 様々な食い違いの中で欧米が協調姿勢を取り戻し、また「激動と混迷」の時代に、壊れかかった「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序」を再建することだと。

 憲法の制約を盾に、米国の核の傘の下で、米国におんぶにだっこ状態の日本が登場出来る局面は、残念ながら少ない。
 
 日米同盟があるから日本有事に米国は自動的に助けに来てくれると信じている人が多い。もしそう望むなら、そうなるように特段の努力を払わなければならないと、樋口氏。
 米国第一のトランプ大統領を、平成・令和の黒船と捉え、日本が普通の国に脱皮する時が来ているのですね。

 「新冷戦時代」突入の今日、欧州は、米国が対中抑止に最大限注力できるよう、対露防衛や中東の安定化などの周辺の安全保障を引き受けるとともに、対中牽制に力を振り向けてもらわなければならない。 中でも、英国とフランスは、インド太平洋に直接戦略的利害を有していると樋口氏。
 欧州(NATO/EU)をインド太平洋に引き付ける戦略的枠組みが必要であり、そのための「日米欧連携メカニズム」の構築は急務であると。
 「日米欧連携メカニズム」構築の狙いは、欧州からインド太平洋までをグローバルに俯瞰しつつ、まず中国の脅威に対する認識を共有し、欧州の関心をインド太平洋に引き込み、そして、それぞれの立場で対中戦略を一致させることにあるとも。
 
 「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、安部首相が提言し、トランプ大統領も推進しようとしている構想ですね。
 これを基盤に、「日米欧連携メカニズム」の構築に発展させていくことが、日本の果たすべき役割となりますね。



 # 冒頭の画像は、万里の長城




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