毎日がしあわせ日和

ほんとうの自分に戻れば戻るほど 毎日がしあわせ日和

対立の向こうの幸せ ・ 映画 「ショコラ」

2015年02月22日 21時40分07秒 | 大好きな本・映画・ほか


唐辛子入りココアから思い出した、大好きな映画 「ショコラ」 。

ラッセ・ハルストレム監督、日本公開は2001年、出演は、ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、アルフレッド・モリーナ、レナ・オリン、キャリー=アン・モス 他。




伝統と規律を重んじる フランスのとある小さな村に、謎めいた母娘がやってくる。

断食期のその村で、母親ヴィアンヌは 老女家主アルマンドから借りた店舗で、チョコレート店を開く。

村人たちの好奇の目が集まる中、持ち前の暖かさと それぞれにぴたりと合うチョコレートを当てる不思議な才能で、少しずつ友人を増やしていくヴィアンヌだが、信仰の名の下 伝統を守り 村人たちを統率する 敬虔な村長のレノとは、その奔放な性格や 価値観の違いにより 真っ向から対立。

そんなところにある日 川下りのジプシーの一団がやってきて。。。。




今回も盛大にネタバレしておりますので、ご注意くださいね。












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前にこれを見たときは、ヴィアンヌに感情移入してて、レノ伯爵に好感を持てずにいたんだったなぁ。

あの頃は、自分がバリバリ二元対立の人だったね (^^ゞ

今回久しぶりに見直して、新しい角度から物語を眺めている自分に氣がつきました。




レノ伯爵は、自分が良かれと思ったことにまっすぐな人なんですね。

規律に従うことを厳格に求めるのも、それが村にとって一番いいことだと信じているから。

だから、まずかったと思えば ごまかしなしで 誠実にあやまる。

酒場の亭主・セルジュが暴力夫だったことが発覚したときも、おしまいのほうで 自身がヴィアンヌの店でやらかしてしまったことに氣づいたときも。




対照的に描かれているのが、女家主のアルマンド。

おそらく彼女は、この村の厳しいしきたりに反発を覚えるほどに 氣も生命力も強かったんじゃないかな。

例のチリペッパー入りホットチョコのあとにちらっと出てくる 娘時代の思い出話から、若い頃の彼女の奔放な様子が窺えます。




一見正反対のこの二人ですが、実はどちらも しきたりや戒律という 形のないものに翻弄されてきたという共通点があります。

レノ伯爵は、おそらく子どもの頃から 偉大なご先祖様を讃える話をたっぷり聞かされ、やはり厳格だったであろう親のもとで よき模範たれと常に言われながら育ってきたのでしょう。

氣づいてはいなかったかもしれないけれど、彼が重んじてきた規範は、外付けの借り物だった。

だから、時として 本心との間に深刻な葛藤が生まれるわけで、それが 浮氣して出奔してしまった奥さんの服をはさみでジョキジョキやるシーンや、終盤で 「道が見えない」 と嘆き苦しんだ後の 危なっかしい決断に表れています。




アルマンドは、まわりの大人たちの厳しさに反発し、反抗的に ダメだと言われたことを片っ端からやって、自由を勝ち取ったつもりでいたのかもしれません。

でも、それはやはり本心からの望みの実現とは違っていて、結果 実の娘とはうまくいかなくなり、孫とも合わせてもらえず からだも悪くして、自分のことを 「へそ曲がりの婆さん」 と自嘲するまでになってしまいます。

両者とも、立場は真逆でも、精一杯やってきたのに どうして結果がついてこないんだ、と苦々しく思うところは同じなわけです。




物語のもうひとつの対立要素、アルマンドと娘のカロリーヌ。

想像するに、カロリーヌは子どもの頃から、母親のことで いろいろと肩身の狭い思いをしてきたのでしょう。

ヴィアンヌとアヌーク親子とちょっと似ていますが、自己肯定しているヴィアンヌは わが子にもたっぷり愛情を注げる人だけれど、自分を受け入れられないままきてしまったアルマンドとの親子関係は もう少し複雑で 辛いものだったのかもしれません。

それでも自分なりの道を見つけて 誠実に生きているカロリーヌですが、アルマンドへの反感や 息子のリュックへの過干渉などから やはり子ども時代の苦悩の影響が見え隠れします。




そんな村に新しい風を吹き込むヴィアンヌが 村人たちを徐々に感化していくのですが、だからといって 彼女自身 神のごとく万能というわけでもなく、孤立状態になったり わが子に反発されたりすれば、怒りも落ち込みもする。

そんなヴィアンヌが 村人たちに大きな影響をあたえることができたのは、懐の深さや 自由でおおらかな心、暖かいまなざしと思いやり、そして 「心のカギを開ける」 とされる チョコレートの魔力でしょうか。

本質的に心地いいものに出会うと、めいめいの心の奥に押し込められていた本質的部分が共鳴して、表に出てくるのかもしれません。

だから、ジョゼフィーヌのように 弱者として苦しんできた者ほど 早くからヴィアンヌに心を開いて、ほんとうの自分に立ち返ってゆく。




この物語は、勝ち負けで 対立の決着がつくのではなく、みなが本質に立ち返ることで それぞれの束縛から解放されるお話なんですね。

「精神の目覚め」 「古い因習からの解放」 による大団円。

ハリポタのときとは対照的に、どちらか一方に軍配が上がるのではなく、対立そのものが消えてゆく、ほんもののハッピーエンド。

この村にだって これからもいろいろとあるだろうけれど、この人たちならきっと乗り越えて 「いつまでも幸せに暮らしましたとさ」 でやっていける、と思わせてくれるエンディングです (*^ー^*)




ヴィアンヌとルーの恋物語もめでたく成就、「ワンス アポンナ タイム (昔々) ~」 で始まったお話が、心地よい余韻を残し 深い満足感と共に終わりを迎える、極上のおとぎ話、「ショコラ」 。

何度見ても 満ち足りた氣分にさせてくれる、大好きな映画です